Vol.1 No.3 2008
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研究論文−176 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)1 研究の背景 都市大気環境規制の強化に伴い、自動車排出ガス(特に、ディーゼル車からのNOxやPM等)の更なる低減が求められており、エンジン側、排出ガス処理側、燃料側から種々の取り組みが行われている。前二者が主として自動車業界で、後者が石油業界で対応されている。排出ガス処理装置には酸化触媒、DeNOx触媒、ディーゼルパティキレートフィルター(DPF)等が含まれるが、触媒材料として用いられる貴金属や塩基性酸化物等が硫黄被毒を受け易く、引いては触媒の燃焼再生頻度増加に伴う燃費悪化に繋がりやすいため、革新的排出ガス処理触媒の開発加速には軽油の低硫黄化が不可欠とされてきた。このため、我が国では硫黄分を10 ppm以下に低減したサルファーフリー軽油の供給が2005年から限定的に開始され、2007年からの全国供給に至っている。しかし、これまでの軽油のサルファーフリー化(硫黄分<10 ppm)は、精油所内設備の部分改造や高性能脱硫触媒の利用に加え、処理原料の変更(難脱硫性硫黄化合物や窒素含有量の高い高沸点留分のカットや脱硫反応に対し吸着阻害効果の大きい芳香族分を多く含む流動接触分解軽油(LCO)等の混合量低減等)、脱硫反応操作条件の変更(単位触媒重量あたりの油処理量の低減等)、脱硫処理プロセス変更等により総合的に実施されている。このため、サルファーフリー軽油の製造コスト低減等の面から、原料制約や処理量低下に繋がる原料調整やプロセス変更等を最小限に抑え、脱硫触媒の交換のみで対応可能な高性能かつ長寿命の脱硫触媒に対する期待は大きい。 軽油のサルファーフリー化は世界的な潮流である(図1)。このため、製油所内の現行設備の改造や運転条件等の変更を行うことなく、脱硫触媒の交換のみで軽油のサルファーフリー化を達成できる高性能脱硫触媒へのニーズは、海外の製油所でも急速に高まっている。我が国の軽油基材は欧米に比べて重質であり、また、難脱硫性硫黄化合物含有量も多いため、我が国で対応可能な脱硫触媒が開発されれば、その脱硫触媒技術は世界に通用する可能性も秘めている。 我々は輸送用燃料のクリーン化に対する社会ニーズに対応すべく、「軽油のサルファーフリー化用脱硫触媒」の製品化に向けた研究開発を行った。2 研究目標とアウトカム 軽油は、原油を蒸留して得られる軽油留分を主基材とし、含有する有機硫黄化合物中の硫黄(硫黄量:1~1.5 wt%)を脱硫触媒の存在下で水素と反応させ、硫化水素に変えて除去する水素化脱硫法により製造されている(図2)。 軽油の硫黄分規制に伴い、水素化脱硫触媒の性能は徐々に向上しており、この10年間の脱硫活性向上は著しい。研究論文輸送用燃料のクリーン化、特に硫黄分の大幅低減は自動車排出ガスの低減に有効であり、また、新規高性能排出ガス処理装置の開発支援に繋がる。我々は、軽油のサルファーフリー化(硫黄分<10ppm)用脱硫触媒の開発を行い、触媒調製法の切り口から新規展開を図り、次いで触媒メーカーとの共同研究を通して新規脱硫触媒の製品化に成功した。輸送用クリーン燃料の製造触媒の研究と開発― 触媒の基盤研究から製品化に向けた触媒共同開発へ ―葭村 雄二*、鳥羽 誠産業技術総合研究所 新燃料自動車技術研究センター 〒305-8565 つくば市東1-1-1 つくば中央第5 産総研つくばセンター *E-mail:(7)−図1 軽油中の硫黄分規制の動向19982000200220042006200820100.060.050.040.030.020.010硫黄分規制値(%)500 ppm50 ppm10 ppm15 ppm(米国)米国EU日本日本(実勢値)
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