Vol.1 No.2 2008
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研究論文:シームレスな20万分の1日本地質図の作成とウェブ配信(脇田ほか)−85 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)新かつ最適な凡例を統一凡例として選択・決定した。統一凡例は、二段階の研究過程を経て決定した。全国規模でシームレス化を行うためには、日本全域に渡って分布するすべての地層や岩石について、最新の研究モデルに基づいて、全国統一凡例を構築する必要がある。個々の地質図で採用された凡例は、その地域の地質情報を表示し、説明するためだけに作成されるため、独自の区分がなされていたり、地域に固有の名称が与えられることがある。全国統一凡例では地域固有の区分を排除し、岩石の種類と地質年代の2つの要素で区分することにした。そのような区分は、1992年に作成した100万分の1日本地質図第3版[10]で初めて採用された凡例システムである。統一凡例の第一段階では、この100万分の1日本地質図第3版の凡例を踏襲して区分することにした。この統一凡例は、シームレス地質図の作成を開始した2004年度においても、最も精度の高い地質モデルに基づいた全国規模の地質凡例であった。この区分を統一凡例の最初の規範(基本版)とし、この基本版統一凡例に基づいたシームレス地質図をこれまでウェブ上で公開してきた。100万分の1縮尺の地質図の凡例は最新の地質モデルに基づいており、全国統一凡例の基礎として非常に優れているが、100万分の1縮尺の地質図と20万分の1縮尺の地質図は情報量と精度が異なるため、この凡例では20万分の1縮尺に盛り込まれた地質情報を十分詳細に表示できない。そこでこの問題を解決するために、さらに地質区分を細分化した詳細版統一凡例を作成することとした(図4)。詳細版の統一凡例は、基本版凡例をベースに、20万分の1縮尺で全国規模に区分できる岩石・地層区分を堆積岩・付加体・火山岩・深成岩・変成岩と5種類の研究対象別に検討した。変成岩の区分については、(1)変成条件による区分、(2)変成岩年代による区分、(3)原岩岩相による区分という3つの区分にした[11]。付加体については、構造ユニットごとの岩石の種類の細分、堆積岩については、層序の広域対比に基づいた地質年代の細分を中心に統一凡例を再検討した。火山岩や深成岩では地質年代以外に化学組成による区分をより詳細に実施し、詳細な統一凡例を作成した。また、人口密集地である平野地域では、完新世の堆積物の区分を成因に基づいて砂丘堆積物、湿地堆積物、扇状地堆積物、自然堤防堆積物、湖成堆積物、人工改変地堆積物として細分化した。このような専門分野ごとの検討結果は、20万分の1縮尺の地質図としては最新の地質モデルにもとづく理想的なものではあるが、様々な年代に作成された20万分の1地質図のすべてに適用できるわけではない。すべての20万分の1地質図の凡例をリスト化し、これらの理想的な凡例を対応させて調整した結果、現状の地質図に適用できる詳細版の凡例として384の地質区分を採用するのが最適であるとの結論を得た。この結果、100万分の1縮尺の地質図の凡例をベースにした第一段階の基本版統一凡例の凡例数194に比較して凡例数は倍増した。このような凡例の詳細化によってシームレス地質図は、より詳しい地質図として生まれ変わった。四国地方の例を図5に示す。3.3 統一凡例の適用とデータ置換次に統一凡例をそれぞれの地質図に適用し、凡例の置換と数値化されたディジタル地質図の属性データの再構築を行った。その際に我々は地理情報システム(GIS)用語6を援用することにした。紙に多色刷で印刷されている地質図を数値化し、塗り分けられたそれぞれの区画に本来の凡例を付与し、統一凡例との対応表に基づいて置換を行った。数値化した地質図データにベクタ形式用語7を採用することにより、個々の区画のデータを個別に演算するとともに、機械的な一括置換が可能となり、地質境界位置の精度・確度を維持しながら、データ編集の迅速化・コスト削減を実現することができた。 オリジナルの地質図は作成年代によって異なる様々な地質モデルに基づいて作成されており、最新の地質モデルに基づいた統一凡例との対応をつけることは容易ではない。また地質図は火山岩や堆積岩など岩石や地層の種類ごとに専門家が担当して作成しているほか、九州北部、東北南部など、研究者ごとに地域が限定されている。このため、統一凡例をディジタル地質図に当てはめる際には、九州北部の火山岩ならばA研究者、東北南部の堆積岩ならばB研究者と、その地域や専門で最も詳しい研究者が担当した。それぞれの専門家は、古い地質モデルで作成された地質図の凡例が最新の統一凡例のうちどれに該当するかについて、近隣の比較的新しい地質図やより広域の地質図から地層対比を検討したり、化石や年代測定などの最新情報から形成年代を判断することによって、対応関係を決定した。この場合、それぞれの岩石の種類ごとに広域の対比表や柱状図を作成することができる場合には、それらを使ってより精度の高い対比を行った。比較的新しい20万分の1地質図では基本凡例版に対応する地質年代が示されている場合があり、その場合はそれらを使って対比がより容易になった。3.4 地質境界線の連続化と地質図編集統一凡例への置換の次に行う手続きは地質境界や断層線の位置変更と連続化である。これによって研究精度や解釈の差異を調整する。すなわち隣接する地質図のうち、より新しい地質図を基準に新しい地質図に合致するように古いデータを改変し、最新の地質情報や地形情報などを考慮(4)−
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