Vol.1 No.2 2008
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インタビュー:トヨタ自動車グループにおける基礎研究から製品化への流れについて−147 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)ないか、というふうに常に成果を活かすことを考えることができる人ですね。製品開発、先行開発側の人たちには、そういう目利きをして、引っ張り込む能力が必要ですね。研究者からそういうのを引き出すといったコーディネートする側の人がキーマンになっているといいなと思うんです。「これ、使えるじゃないか」と一言かけて、「あ、そうですね。それではやってみましょう」と、そういう連携がいいと思うんですね。なかなか研究者側から 「ほら、使えるでしょう」と言っても使う側の条件を満たさないことが普通だから、聞いてもらえないことも多い。「トータルバランスからすると、それは要らないんだよ」とか言われたら、研究者はガッカリですよね。私は、先行開発と製品開発の間に立って、色々な技術を取り込んで問題解決に結びつけようとしてきました。メインモーターが1つのハイブリット車の開発に携わっていたことがあります。メインモーターが2つあれば、1個のモーターで車を走らせ、もう1個でエンジンを起動できるんですが、それができないので、エンジンを起動のために別のスターターシステムをつけたんです。エンジンのストップ&ゴー(アイドリングストップ)の開発をやっていた人がいたのですが、その話を聞いて、自分のシステム上で欠けているところを、この技術を導入して組み合わせることでうまいシステムになるという考えに至って、問題を解決できたということがありました。目利きには幅広い知識を、説明する側にはストーリーを赤松 それが目利きですね。そういう目利きみたいなものがどうやったら身につくのか、目利きの素養はどういうものだとお考えですか。 梅山 いろいろなエリアのことを幅広く知っている人が、専門的な技術を眺めることだと思うんです。社内の研究報告会の中でのこと、研究者はやっていることを飄々と話すんですが、それを聞いていた側が聞いた内容を基に自らのストーリーを組み立てながら、「結局、この領域は将来のトヨタ自動車にとって大切な取り組み領域になるかもしれない。」とみえてくる。これは、1つの目利きだと思うんです。 赤松 目利きには研究経験があったほうがいいとお考えですか。研究経験がなくても目利きとして育つことができると思われますか。梅山 研究者の挙動や人間性、例えば「没頭する」ということを理解するためにも、少し違っている領域でもいいから、目利きの人は研究経験があったほうがいいですね。その一方で、研究者側の工夫も重要ですね。研究の内容を分かってもらうためには、これはどんなことを目的にして、どんなアプローチをして、その結果こんなことがわかったという「ストーリー」にして話すことが必要です。研究者にはわかりやすいストーリーを前提にして、ごく短いプレゼンをやってもらうようにしているのですが、それが研究への理解を生んでいると思います。受ける側が目利きをするためには幅広い知識が必要ですし、説明する側にはストーリーが要ると思います。赤松 分かりました。ただ、ストーリーをつくり間違えてしまうと、全然伝わらないという危険もあると思いますね。たまたま目利きの琴線に触れるようなストーリーがうまく組めているとパッといくけれども、お門違いのストーリーをつくってしまうと、よく見えなくなってしまうという可能性はありますが、その辺はどうですか。梅山 目的が明解で、アプローチの方向ができるだけシンプルなステップとして語られていることが大切と思います。よく見えなくなってしまった時には、説明する側は聞く側の理解が深まるように工夫が必要と思いますが、説明する側と聞く側が根気よく繰り返し時間をかけて話し合うことで溝は埋まっていくと思います。ジャーナル『シンセシオロジー』について赤松 話を変えて、この『シンセシオロジー』というジャーナルなんですが、トヨタの中でどのような人が読者として考えられるでしょうか。どういう方がお読みになったらおもしろいでしょうか。梅山 まず、目利きの人ですね。いろいろなエリアを無作為に知っていないといけない人たちに、まずこれは役に立つだろうと思います。語られているのは、その目的とするところとか、ストーリーですからね。赤松 幹之 氏(66)−

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