Vol.1 No.2 2008
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−143 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)インタビュー:シンセシオロジーへの期待ありますか。レスター こう指摘してよいかややためらわれますが、戦略的なことで貴重かもしれないことは、特定の領域をより強調することではないでしょうか。課題を産総研を越えて広げることですね。1つの方法は、最初のステップとして特定の適用領域、環境、健康やエネルギーに焦点を合わせることです。そしてこれらの領域に読者を引き付け、査読者も引き寄せます。次のステップは、その領域、適用の領域を増やすことかもしれません。このジャーナルの発展に、今考えられている研究のシナリオの方法が使えるかもしれません。ある面、ジャーナル自身も1つの製品、1つの研究かも知れませんからね。小林ありがとうございます。このインタビューは非常に実り多いものでした。そして『シンセシオロジー』の将来を考える上で貴重なものとなりました。このディスカッションに参加していただきましてありがとうございました。レスター どういたしまして。創刊号の発刊おめでとうございます。本インタビューは、2008年3月3日(月)ボストンにおいてMITのレスター教授のオフィスで、英語で行われました。翻訳は、編集委員会の責任で行いました。注1)第1種基礎研究:未知現象の観察,実験,理論計算により分析して、普遍的な理論を構築するための研究をいう。注2)第2種基礎研究:既に確立された複数の知識を統合して特定の目的を実現するとともに、その一般性のある方法論を導き出す研究をいう。注3)製品化研究:第1種基礎研究,第2種基礎研究及び実際の経験から得た成果と知識を利用し,新しい技術の社会での利用を具体化するための研究注4)R.K. Lester and M. J. Piore, "Innovation"; Harvard University Press 2004.(邦訳は「イノベーション-「曖昧さ」との対話による企業革新」依田直也訳、生産性出版 2006年3月発行)略歴リチャード K. レスター1954年生まれ。英国インペリアル大学化学工学科卒業。マサチューセッツ工科大学(MIT)原子核工学博士課程修了。1979年よりMITの教員となる。現在MIT産業生産性センター所長、原子核工学科教授。研究テーマはイノベーション、生産性、産業競争力など。(62)−が言われるようにおそらく学術誌としてピアによる審査を受けていません。『シンセシオロジー』は、そうではなく技術構成の学術誌を目指しています。そうなるには、どのような障害を取り払わないといけないでしょうか。レスター もし企業に所属する執筆者を引き付けようと思っているのであれば、1つの障害は、企業が知的所有権を持つ研究の発表に関するものです。もう1つの課題は査読者です。何人かは目的を理解している実践家の人達でなければなりません。これが鍵になると思います。そして、何人かは目的をよく理解している産総研内の人達です。もしもっと広げたいのであれば、外部の人を引き込むことが必要でしょう。小林 MIT、ハーバード大学やスタンフォード大学の教授の中には実際的な問題の解決法を知り、それをどのように現実的に適用していくかよくご存知の方がいます。レスター 確かにMITでは、文化として実際の問題に関わる研究をする人が多くいます。だから何人かの学者はその知識を持っていると思います。ジャーナルのもう1つの役割レスター 最後に一言申し上げたいと思います。もしこのジャーナルが成功すれば、日本では大事な目標とされているものですが、研究者がより簡単に大学内外へ動けるようになると思います。第2種基礎研究を扱う論文審査をする学術誌があれば、産業界の研究者や産総研の研究者が大学へ、また大学から産業へ移動し易くなるかもしれません。日本ではとても大事な「境界を越えた交流」を推進するかもしれません。循環を良くすることはとても大事な目標です。アメリカでは行き来ができます。産業の人間が第1種基礎研究ジャーナルに投稿できるから、行ったり来たりする機会があるのです。でも日本では、第1種基礎研究ジャーナルに産業界の人が投稿することは日常では少ないですよね。最後に小林今日の結論としては、特に第2種基礎研究と製品化研究における良いジャーナルを作るためには、複数の領域(セクター)間の会話やコミュニケーションが重要ということですね。それはまた査読者や読者の間でも大事だということでした。学術誌であっても、複数の異なる分野の人たちの間で行われる会話を基礎におくことが大切ということですね。最後に、新ジャーナルに対して何かアドバイスは

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