Vol.1 No.2 2008
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−140 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)インタビュー:シンセシオロジーへの期待礎研究からでもいいのですが)の選択、それら要素間の構成・統合の方法、そして評価と今後の課題を明記しなければならないとしました。これらの要件の中で執筆者のオリジナリティが問われるシナリオと構成法が特に大事だと思っています。これらの要件についてどのように思われますか。レスター これらの要件はここに掲載されている論文と、典型的な学術誌に掲載される論文を区別するものです。典型的な論文は目的を明記していることがあっても、社会との関連から見た適合性や開発から実用化までの方法を明記していることはほとんどありません。またこのような構成要素についてはほかの出版物にも見られるでしょうが、構成・統合に焦点を当てたことは大きな違いと思います。学術誌のほとんどは専門分野に関するもののみなので、構成・統合はツールの1つと考えられていないのです。評価と今後の活動は従来の学術誌と似ていると思います。だから、社会的適合性、シナリオ、構成・統合が特有の条件だと思います。これらの条件を満たすと違うタイプの出版物に実際上なると思います。小林これらの要件が研究者の間で受け入れられると思われますか。レスター これらの要件はそれぞれの研究者によって様々な受け止められ方をするでしょう。社会に関連した仕事への願望を動機としている研究者にはこの要件は歓迎されるでしょうし、研究者によっては、この要件では自分は新たな貢献はできないと思う人もいるでしょう。査読の判断基準-論理性について小林 問題はどのように研究目的、シナリオと社会的適合性を評価するかです。審査は客観的でなければなりません。レスター でも実際の場合、特定な研究目的、シナリオや社会的適合性の質の高いものであるかどうかを判断する客観的な基準はないかもしれないとあなたは言われるのですね。あなたの見解では、これまでの既存の学術誌では、研究目的を述べればそれで十分であり、研究の社会的適合性や目的を用いて、あえて貢献の正当性を主張する必要はない、と言うことですね。そして、もし知識のフロンティアが広がるか先に進めば、良い貢献と判断するのに十分だということですね。しかし、このジャーナルの場合、良い貢献かどうかを判断する基準が主観的になってしまう可能性があるともおっしゃっています。しかし、私はそうとは思いません。私は同じ技術分野の研究者だけが社会的適合性、目的やシナリオが良いか判断ができるとは思いません。実際はその分野の研究者には判断がまったくできないと思います。本当にできるのはその技術を実践する人々です。理論化学者に、ある研究が工業を前進させるのに意義があるかどうか聞くのは、どの工業開発が大事か知らないため、無駄かもしれません。何が良いか否かの客観的基準があると思いますが、それはその分野の研究者が知っているとは限らないので同じ研究領域の同僚は判断できないかもしれません。もしシナリオがきちんとした論理の積み重ねで構成されていれば、論理性は必ずしも分野の深い知識がなくても判断できると思います。小林論理的な流れは大事な要素です。例えば、21世紀にとって大事な環境問題を取上げてみましょう。二酸化炭素排出量を減らすことは優先度が極めて高く、ほとんどの人がこれを大きな目標と認めるでしょう。もしある論文が、例えばこの目標を達成する方法を段階ごとに論理的に説明できれば、そのシナリオは認められると考えられます。レスター それがシナリオの例ですね。つまり、編集委員会が掲げる要件の1つは、執筆者が最終目標の排出量削減に到達するための各段階を示すことが必要ということです。従って、私たちが「存在証明」(existence proof)と呼ぶものが欲しいのですね。目的に到達するのが論理的に可能であることを示したいということですね。査読の判断基準―独自性について小林技術要素間の構成・統合の独自性も重要です。このジャーナルの創刊号には6つの論文が掲載されており、ある目標を実現するための技術統合が個々の執筆者によって、創意性、独自性をもって行われていると思います。もし誰でも思い付く方法であれば、それはあまり独自性があるとは言えません。レスター ポイントは、分かりきったことであるべきでないということですか。もし組み合わせや構成の方法が一目瞭然であれば、それは良い貢献ではないということですか。小林そうです。たとえば西井さんによる論文、「高機能光学素子の低コスト製造へのチャレンジ」の中で、西井さんはガラスモールド法の利用を提案しています。ただし従来の方法だけでは精巧な光学素子を作るのに十分ではあり(59)−
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