Vol.1 No.2 2008
6/92
研究論文:シームレスな20万分の1日本地質図の作成とウェブ配信(脇田ほか)−84 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)の多くは現在の地質学の知識はあっても、過去の研究経緯までは理解していないのが通常であるので、異なる説明や表現に戸惑い、利用に支障が生じる。この支障を解消するために、我々は最新の研究による地質モデルに基づいて「地質図のシームレス化の手法」を開発し、地質図を再構成した。ただし、我々が最初に着手したのは図1に例示した5万分の1地質図ではなく、全国規模ですでに相当程度整備されている20万分の1地質図である。2.2 シームレス地質図の研究目標とシナリオ地質図は社会で利用されてはじめて価値あるものとなる。本研究では、各地域ごとに個別に行われる地質研究の成果である地質図を全国的に統合した上で効果的に社会に発信して利活用を促進し、社会の安心安全に貢献するという研究目標を設定した。この研究目標を実現するために、次の研究シナリオに従って研究を実施した(図2)。・区画ごとに異なる地質モデルで作成されている地質図を改訂し、最新の地質モデルに基づいた全国一律の基準(統一凡例)で再構成し、境界のない分かりやすい地質図を作成する。・作成された地質図を紙やCD-ROM媒体ではなく、インターネットで配信し、広範な利用を目指す。・地質情報の表現方法を標準化し、地質以外の国内外の様々な地盤情報との相互運用を図れるようにする。3 シームレス地質図の作成過程3.1 概要地質図のシームレス化とは、過去の地質モデルを適用した古い地質図の、新しい地質モデルによる見直しである。この見直しは凡例の統一と地層境界や断層の調整などの手続きによって進められる(図3)。今回の地質図のシームレス化の作業に当たっては、社会への迅速な情報提供を優先し、改めて現地の再調査は実施しないこととした。全国規模でシームレス化を行うことが可能な地質図のうちで最も精度が高いのは20万分の1地質図で、日本国内の約90 %(112枚:2006年度末)が完成している。これらの地質図をベースに再構成して作成された「20万分の1日本シームレス地質図」は、現在最も頻繁に利用されているシームレス地質図の代表例である[8]。このシームレス地質図は、2002年度にプロジェクトが始動し、次のように地域ごとに順次作成し公開してきた。2003年度は北海道地域・東北地域を、2004年度は関東地域を作成し東日本地域が完成した.さらに同年度,北陸地域及び東海・近畿地域も相次いで作成した。2005年度は中国・四国地域,九州地域及び南西諸島地域を作成し、西日本地域が完成した。それに加え、関東地域南部(伊豆小笠原北部)、関東地域南部(伊豆小笠原南部)、北海道地域東部(道東・北方四島)を完成させ、北海道地域を改訂したことで全国版の初版が完成した。このようにして作成されたシームレス地質図は全国統一凡例を用いて描かれた地質図で、2007年5月12日版において、面データ数149,081、線データ数371,528の膨大な情報をもつディジタル地質図となった[9]。3.2 統一凡例の作成地質図をシームレス化する第一歩は、統一凡例の作成である。地質図は凡例に従って地表面を隙間なく塗り分けて描かれている。凡例にはその地質図に表現するすべての地質体や記号などの説明が記述されている。このため、隣接する地質図に共通的に使える統一凡例を最新の地質モデルに基づいて作成することが重要である。ただし、古い地質図の情報量に限界があることから、最新版の地質図の凡例をすべての地域に適用することは不可能である。最新の地質モデルに基づきながら、古い地質図にも適用可能な、最図2 日本シームレス地質図作成のための要素技術とシナリオ印刷地質図調査第1種基礎研究最新地質学モデル構築統一凡例数値化地理情報システムの適用地質区分属性統一地質属性の境界連続化オリジナル地質図シームレス地質図第2種基礎研究図3 シームレス地質図作成プロセス(3)−
元のページ