Vol.1 No.2 2008
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研究論文:エアロゾルデポジション法(明渡ほか)−136 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)せられる可能性を秘めている。図10は様々な大きさに対応したAD装置の試作例である。現状で最も大きいサイズは、50 cm角の成膜面積に対応できる装置があり、最も小さいサイズでは、デスクトップサイズのものまで試作されている。また、このような小型AD装置は、宇宙ステーションなどに搭載することを目的に無重力航空機実験などでの成膜実績がある。注目すべきは、AD法の成膜には高真空が要求されないことと、成膜装置のダウンスケールによって、成膜チャンバーの排気、真空リーク時間が著しく低減されることが挙げられる。今回上述のメタルベース光スキャナー製造用に試作したAD装置(図9)では、サンプルサイズとしては1デバイスが2 cm角内に収まることを想定し、チャンバーサイズを決定した。また、実際の生産システムでは、図11に示すように前後の工程との間に、サンプルの自動搬送、自動アライメント機構を必要とすることから、チャンバー蓋部にサンプルホルダーを持つ機構とし、サンプルの出し入れのタクトタイムの短縮と位置決めを容易にしている。ホルダー付のチャンバー蓋部は、圧縮空気駆動のシリンダーにより上下させる。これらの機構により搬送アームがサンプルを設置し、退避後0.2秒未満の時間で蓋を閉じて真空引きになる。真空引きについては、AD法に必要な真空度は(成膜時)100 Pa程度を見込めれば良いことから、低真空領域での高速排気がポイントとなる。全体のチャンバー部容積(ゲートバルブまで)を先のサンプルサイズに合わせて、約75 ㎤ときわめて小さく設計することで、図12に示すように排気量15~20 ㎥/min程度の卓上型ロータリーポンプ1台で2 Pa程度までの真空到達時間が約3秒で成膜が可能になる。リーク時間についても約0.1 Paから0.7秒で大気圧に到達する。また、膜形成速度についてはエアロゾル化室の性能にも依存し、現在必ずしも十分ではないが、この条件下で1 µm/sec前後の成膜レートが得られている。以上の設計により、3ミクロン厚、5 mm角のPZT厚膜の成膜では、図11に示すように装置への基板挿入→真空排気→成膜→真空リーク→基板取り出しまでの一連の工程時間が約10秒と驚異的に短縮させることができた。これは、真空プロセスはバッチプロセスで扱うという従来の常識を大きく覆すもので、オンデマンド性を具現化する重要なポイントになる。また、スキャナー本体構造の形成を行うパンチによる打ち抜き加工工程では、ミラーとねじれ梁の部位、スキャナーフレーム全体形状、位置決め穴などを4つの順送分割型にし、4台のマイクロプレス機構で順次ステンレスフープ材を打ち抜き、形状形成するような構成になっている。このことにより部分的な金型の変更、組み合わせの選択により、共振周波数の違いや、ミラーサイズの違いなど、多種類の製造に比較的安価に対応できる構成になっている。このほか、小型の熱処理装置、配線用のインクジェット装置などの工程ユニットも試作し、トータルで素材からデバイスまでの製造ができるシステムを構築した。現状では、実用的な・高速成膜が可能:実際の成膜時間を削減 ~6 s・常温衝撃固化現象:サンプル過熱などが不要 ~0 s・必要な場所だけ成膜:チャンバーサイズが小さくなる →真空引き/リーク時間が短縮 ~各2 s →サンプル取出(大気へ)時間も高速化 ~1.5 sTotal time(サンプル投入から取り出し可能までの時間)~10 sスパッタ式成膜装置高真空必要(10-5~10 -6Pa)TMP利用低い成膜速度(20 nm/min以下)長いタクトタイム(3~5時間)高い基板温度(550~600 ℃)チャンバー容積: ~1/2000低真空:ロータリーポンプ1台-1012345678経過時間 (sec)真空度 (Pa)1000010001001010.1-0.50.51.52.5経過時間 (sec)真空度 (Pa)10000100000010001001010.1(排気時間)(リーク時間)図11 小型化によるタクトタイムの向上図12 小型AD装置の成膜可能真空度到達速度とリーク時間(55)−

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