Vol.1 No.2 2008
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研究論文:エアロゾルデポジション法(明渡ほか)−133 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)いう材質に頼らなくとも実現できるため、材質をイットリアなどに切り替え、プラズマ耐食性を向上できるなどの新たな機能面の改良がはかれた。この静電チャックの製造をAD法導入による消費エネルギー削減の観点から検証すると、図4に示すように製造工程トータルで約80 %ものエネルギー消費量の削減が可能なことがわかった。また、製造工程時間も1/10以下に抑えられている。このエネルギー削減について分析すると、非常に興味深いのは、単純に従来の工法でメインとなる焼成工程でのエネルギー消費が1000 ℃以上の高温から一気に室温になったという点だけでなく、製品製造の全工程数が減り、特に静電チャックの製品性能を決める吸着面の平坦性を出すための研磨工程でのエネルギー消費が大幅に減ったことが、全体のエネルギー消費の低減に大きく貢献している点である。従来の窯業プロセスでセラミック薄板をつくると、焼成時の収縮や反りがどうしても大きくなり、これを平坦化する工程でのエネルギー消費が意外にも大きいのである。AD法によるセラミックスコーティングを用いると、膜厚を薄くしても緻密なため十分な耐圧があり、また、薄い膜厚のため吸着面の反りは大幅に低減される。製造工程のエネルギー削減は量産設計の考え方とも深く関与しており、これらをトータルに考慮し、AD法の省エネプロセス技術としての有効性を検証すべきと考える。以上の事例は、静電チャックという特殊な部品であるが、その他の窯業製品においても、おおよそセラミックスに求める機能が耐食性や絶縁性、硬度などその表面だけが重要な用途では、AD法によるセラミックコーティングに置き換えることにより同様のエネルギー削減の効果が期待できる。このほか、最近では、AD法で成膜されたイットリア膜を耐食プラズマコーティングとして半導体製造装置のチャンバー内壁や要素部品に適用することにより耐久性を向上させる用途展開が事業化されつつある。これまで材料ごとに装置が必要であったCVD工程を1台の装置でまかなえるようにしようとする検討も始まっている。半導体製造工場の規模や設備コスト、エネルギー消費を生産量に合わせて最適化できる可能性も考えられる。4 MEMS光スキャナーへの適用における低コスト・省エネ化の可能性4.1 Si-MEMSスキャナーへの適用と工程の単純化「必要なところに必要なだけ」あるいは「多品種変量」という要求にこたえる考え方として、プロセスや製造システムのオンデマンド化の検討をおこなった。AD法はノズルからの噴射加工ということもあり、インクジェット技術のようなオンデマンドプロセスとしての可能性も持ち合わせている。具体的な事例として、図5に示すような圧電駆動型の構 成焼成法(従来製法)AD法AD法の特 長工 程粉体調合粉体調合基板作製焼 成成 膜ドット成膜めっき研 削研 磨研 磨検 査検 査表面加工ジャケット接着グリーンシート作製印 刷積 層生加工1000 ℃以上炉入れ炉出し1~2週間投入エネルギー:7500 kWh投入エネルギー:1300 kWh粉体調合~生加工焼 成2250 kWh750 kWh表面加工~接着750 kWh研 削3750 kWh700 kWh 300 kWh研 磨成 膜粉体調合300 kWh常温成膜・基板加熱無し・粒子加熱無し● アルミナ100 %でウェハへの 重金属汚染がない。● 薄いセラミック膜であるため、 熱伝導性に優れる。● 従来の焼成プロセスに対してAD成膜プロセスは、 投入エネルギーで82 %の削減効果(7500 kWh →1300 kWh) 時間で96 %の削減効果(288時間 →10時間)アルミナ・チタニア・クロミア内部電極静電チャックチャック部アルミナ100 %AD膜冷却プレートインジウムボンド冷却プレート冷却ジャケット(アルミ合金)冷却ジャケット(アルミ合金)冷却プレート図4 静電チャックの構造とAD法導入による製造工程のエネルギー消費比較(52)−
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