Vol.1 No.2 2008
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研究論文:エアロゾルデポジション法(明渡ほか)−132 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)4.広範囲の膜厚が得られる。(0.5 µm~1 mm)5.直接描画、マスク法、リフトオフ法などにより微細パター ンが膜のエッチング加工無しで得られる。6.低真空(数100 Pa程度~大気圧)で成膜可能。AD法で常温衝撃固化された膜は、衝突による基板温度の上昇も一切観察されず、マクロ的には室温でセラミックス材料を固化できている。焼成工程を経ていないので一種のバインダーレス超高密度セラミックグリーンとも言える。3 既存薄膜技術との比較と省エネルギー効果3.1 従来の薄膜技術との原理的相違低温で緻密性や結晶性の良いセラミックス膜が精度良く低コストで高速形成できれば、冒頭に上げたデバイス量産上の問題は解決する。AD法は熱非平衡なプロセスで、溶射技術などと異なり原料微粒子をほぼ固体状態のまま常温で結合・薄膜化する。従来の薄膜法と比較した場合、粒子単位のビルドアップ加工であるため成膜速度は非常に速く、原料微粒子の結晶構造が成膜体でも、ほぼ維持される。このため、基板材料を選ばず、複雑組成の複合酸化物などの薄膜化が容易であることなどの大きな特徴がある。従って、他の成膜技術に比較して大幅なプロセス温度の低減が期待でき、本質的に異種セラミックス材料、金属材料、ポリマー材料との複合・集積化やナノ組織複合材料の開発に向くと考えられる。プロセスの省エネ化という観点では、通常、数100 Pa以上の低真空環境下で成膜可能で、対象材料や使用目的によっては大気中でも成膜可能なことが最も大きな特徴である。一般に、従来の薄膜技術では、原材料を原子・分子レベルにいったん分解し、これを基板上で結晶成長させる。このため欠陥の無い高純度な結晶組織ひいては高性能な膜特性を得るには、基板到達前の状態で不純物原子などとの吸着、結合を抑制するために周囲環境を超高真空にする必要がある。これに対しAD法では、図3に示すように、原材料はすでに結晶化した粉末で、基板への材料供給速度が速いだけでなく、基板到達前は原材料である微粒子表面は不活性で、基板衝突して初めて活性化粒子間結合が生じる。このため、高真空環境でなくとも、成膜過程で過剰な不純物を膜内に取り込むことがかなり抑えられる。厳密には、原料粉末表面には不純物吸着が残存するため、超高純度な結晶を得るには、表面を事前にクリーニングする必要性があると考えられるが、このような処理が無くとも、多くの電子セラミックス材料に対して、既存の真空薄膜技術と同等かそれ以上の膜特性が得られることが、NEDOナノテクノロジープログラム/ナノレベル電子セラミックス材料低温成形・集積化技術プロジェクト(FY2002~FY2006)[4]の中で実証されている。この様に、高機能な材料に対し、ロータリーポンプでの排気程度の低真空プロセスで成膜できる点は、工業的側面では画期的と考えられ、原理的に従来の真空薄膜プロセスと比較すると、製造設備導入コストやエネルギー消費量の削減、環境負荷の大幅な低減につながると考えられる。3.2 静電チャック製造工程におけるAD法導入の省エネルギー効果実際に、AD法を導入することで、製品製造全工程での消費エネルギーがどの程度削減され、製品機能がどの程度改善されるかを、民間企業との共同研究を通してNEDOエネルギー有効利用基盤技術研究開発プロジェクト(省エネ先導研究:FY2001~FY2003)[5]の中で検討した。対象としたのは静電チャックである。これは現在、半導体製造においてウエハを吸着ハンドリングする装置として多用されており、フラットパネルなど大型部材を保持できる高い吸着力の製品が求められている。静電チャックは、図4に示すように放熱と電極をかねた金属ジャケットに静電気力を発生するためのセラミック薄板が絶縁層として貼り付けられた構造になっている。このセラミック薄板の厚さが薄いほど印加電圧あたりの吸着力が増す。また、放熱性の観点から、一般に熱伝導性の良い窒化アルミ系材料が用いられている。プロジェクトでは、この窒化アルミの薄板をAD法による金属ジャケットへのセラミックコーティングに置き換え、性能向上と全製造工程でのエネルギー消費削減効果を検討した。性能面では、絶縁層厚みをコーティングに置き換えることで1/10以下に薄くでき、このことで印加電圧あたりの吸着力を約20倍まで向上でき、さらに金属ジャケットへの熱伝導や吸着応答速度を大幅に上げることができた。また、付加的機能として熱伝導向上を窒化アルミと(従来薄膜法)(AD法・プロセス過程)原料原子・分子(高活性)・低真空プロセス・高速、低温成膜・基板を選ばない(結晶化)・基板:結晶性・加熱必要表面欠陥成膜(粒子衝突、粒子破砕、欠陥導入)AD膜:20 nm以下の多結晶体粒成長、欠陥回復粒界欠陥高真空熱処理(200~900 ℃:材料、目的に依存)原料粒子:100nm以上(低活性)(仮焼粉の使用、前処理による変化)内部欠陥・歪み(構造欠陥、不完全構造 etc)コンタミが入りやすい図3 AD法と従来薄膜法のプロセス過程の違い(51)−
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