Vol.1 No.2 2008
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研究論文:タンパク質のネットワーク解析から創薬へ(家村ほか)−128 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)参考文献T. Natsume, Y. Yamauchi, H. Nakayama, T. Shinkawa, M. Yanagida, N. Takahashi and T. Isobe : A direct nanoflow liquid chromatography-tandem mass spectrometry system for interaction proteomics. Anal Chem, 74(18), 4725-4733 (2002).M. Komatsu, T. Chiba, K. Tatsumi, S. Iemura, I. Tanida, N. Okazaki, T. Ueno, E. Kominami, T. Natsume and K. Tanaka : A novel protein-conjugating system for Ufm1, a ubiquitin-fold modifier. Embo J., 23(9), 1977-1986 (2004).T. Higo, M. Hattori, T. Nakamura, T. Natsume, T. Michikawa and K. Mikoshiba : Subtype-specific and ER lumenal environment-dependent regulation of inositol 1,4,5-trisphosphate receptor type 1 by ERp44. Cell, 120(1), 85-98 (2005).Y. Hirano, K.B. Hendil, H. Yashiroda, S. Iemura, R. Nagane, Y. Hioki, T. Natsume, K. Tanaka and S. Murata : A heterodimeric complex that promotes the assembly of mammalian 20S proteasomes. Nature, 437(7063), 1381-1385 (2005).N. Matsuda, K. Azuma, M. Saijo, S. Iemura, Y. Hioki, T. Natsume. T. Chiba, K. Tanaka and K. Tanaka : DDB2, the xeroderma pigmentosum group E gene product, is directly ubiquitylated by Cullin 4A-based ubiquitin ligase complex. DNA Repair (Amst), 4(5), 537-545 (2005).T. Moriguchi, S. Urushiyama, N. Hisamoto, S. Iemura, S. Uchida, T. Natsume, K. Matsumoto and H. Shibuya : WNK1 regulates phosphorylation of cation-chloride-coupled cotransporters via the STE20-related kinases, [1][2][3][4][5][6] 賭けた。このような徹底的な高感度化を達成することができれば、ハイスループットで大規模な解析が実現できる。タンパク質の実験の最大のボトルネックは、言うまでもなく試料調製である。そこで、「徹底的な高感度化」により解析のスループットを向上させ、限られた人員と時間で、欧米の50〜150人規模のビッグプロジェクトに数人で立ち向かおうと考えた。実際に新たなグラジエント(濃度勾配)方式という要素技術を創出し「想定以上」の高感度化を達成したが、このままでは実際の役には立たなかった。環境からのノイズ等でS/N比はかえって悪くなったからである。あらためて高感度化とはS/N比の向上、すなわちノイズとの戦いであることを思い知らされると同時に、世界的にこのような極小の液体クロマトグラフィ技術の開発が十分に行われない理由も理解された。プロトタイプの開発品は耐久性に劣り、その上発塵パーティクルにより大きなダメージを受けるため、メンテナンスに大変な手間がかかった。すなわち、1つの成功は次の苦難の始まりだった。しかし、故障の多いプロトタイプの完成度を高める開発研究は後回しにし、「壊れたらすぐ直せる」体制を構築した。これはネジ1本から自身の手でデザインした装置であるからできることであった。そして、欠点だらけの装置・システムであっても、それを「使い、データを出す」ことが何より大事であると考え、最優先させた。また、解析の対象は当初、非常に良く研究された既知分子に絞った。未知の分子を研究対象にするのが常道であろうが、これには2つの考えがあった。1つは、自分自身が開発した解析システムが真に高感度でありハイスループットであるのなら、研究し尽くされたと考えられている分野からも必ず新しい発見があるはずである。また、新しい発見があった場合は、周辺情報が多いため考察が行いやすく、そのインパクトも大きい。これが我々の狙いであった。7 おわりに自身が開発したシステムを「高感度」あるいは「ハイスループット」であると謳うのであるなら、当然その結果、高精度なデータが大量に得られる訳である。従って、なるべく質の高い論文を、なるべく早く多く出版することを心がけた。これ以外には、新しく開発した研究手法の優劣を客観的に示す方法はないと考えていた。特に、我々のとった戦略が、地道な改良とノウハウの蓄積そのものであるからなおさらである。方法論の目新しさや、革新性などを謳い論文を出版し、知財等で成果として示すことが困難であった。実際、これまでの開発研究の中で、新規なイノベーションと呼べるものは、単一ポンプでのグラジエント(濃度勾配)方式のみで、その他は全て、他分野(半導体・産業ロボット)の既存の要素技術の導入である。そしてこれらを駆使し、古典的な生化学実験手法を徹底的に最適化しただけである。しかし、幸いにして、この戦略・戦術は功を奏し、毎分100ナノリッター以下という極小の「流れ」が実現した。これが創薬という大河への一滴となることを期待している。謝辞新規グラジエント方式の開発は科学技術振興事業団、タンパク質ネットワーク解析はNEDOの支援を受けました。ここに深謝いたします。注)生命情報工学研究センター創薬分子設計チーム・広川貴次研究チーム長が参画用語説明用語1:8,000CPUの超並列計算機、チェスの名人に勝ったというエピソードが有名キーワードプロテオミクス、質量分析、タンパク質ネットワーク、創薬、タンパク質微量解析(47)−
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