Vol.1 No.2 2008
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研究論文:サービス工学序説(吉川)−121 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)を構成の主題としているわけであるが、その理論的根拠は仮説形成として設定されているのであり、論文全体がアブダクションである。したがって主張はこれから実証されなければならないものである。このことから、実証のための形式をもっているかが主要な問題となるが、本論文はそれが可能なように、本質的に計測不可能と考えられる概念を排除した上で、その中から変数(概念)を採用したのである。査読者が指摘するように、サービスそのものが構成的であることも考慮する必要もあるのですが、それを同時に考えるのは論理的に扱いにくい問題で、この点については著者の論文:一般設計学序説(精密機械、1979)を参照してください。議論2 用語について質問(赤松 幹之)本論文はサービスを定式化することが主眼ですので、用語や変数についての定義をできるだけ明確にすることが重要だと思います。その観点で見た時に、用語の不統一や意味が不明確なところがありますので、ご検討ください。例えば、類似のことを示していると思われる潜在能力と潜在機能が使われています。回答(吉川 弘之)潜在機能は潜在能力の一表現ですので、2.5節の(1)は、「人の行動や物の使用が潜在能力を顕在化するのであったが、ここでは能力が作動することを機能発現と考えるので、潜在能力は潜在機能と言い換えられる。すると、行動や使用によって、機能が“ゆっくり”顕れると考えることができる。」としました。この他の用語は統一しました。議論3 レセプターの潜在機能について質問(赤松 幹之)2. 5節(2)4行目に「レセプターがすでに持っていた潜在機能Lrからfr’を自らに対して発現させて、効果を生み出す。これがサービス効果eである。」という記述があります。しかしながら、その下に記載されている式では、陽にはそれが表現されていません。レセプターの潜在機能がサービス効果に影響するというのは、サービスの観点での重要なポイントですので、これが表現できるような定式化の工夫が必要だと思います。回答(吉川 弘之)ご指摘の点は、サービスにおける重要な課題ですので、具体的に、少し丁寧に説明します。レストランを例にとると、 fd :料理(食べ物)の提供速度 fr :料理(食べ物)の摂取速度 Lr :食べられる容量(空腹量) fr’:おいしいと感じた料理(食べ物)を食べる速度(レセプター にとって意味のあるサービス) Fr :食べた量 Fr’:食べた料理のうち、おいしかったものの量、≦Frということでしょう。ですから、 Lr0 = Lr1 + Fr1’とは、初期空腹量はおいしかった料理だけで満たされてゆく、と考えていることになります。それでは不味かったものでお腹が一杯になることはないのか、という基本的な疑問が出てきますが、ここではないとしています。この場合、満足、すなわち空腹量がゼロになるためには、シェフ(ドナー)が Ld0>Lr0 の準備をしなければならないなどの問題が生じます。それから、査読者の指摘のように、Lrと fr’の関係は重要で、この場合は空腹感によっておいしさが違うという食事心理の基本問題です。しかし、それはこの段階では陽には触れないことにしてあり、将来の検討の可能性は fr’= (受容行動係数) * frの、“*”に込めてしまっているのです。著者としては、このような問題が見えてくるのが枠組みとしての理論の目的の1つであると考えており、今後の研究に期待したいと考えます。議論4 サービスの時間的考察におけるfrとFr 、およびfr’とFr’に関して質問(赤松 幹之)fを顕在機能Fの微分として定義していることからfを出現速度としており、「fはサービス提供の速度であり、一般に言うサービスに相当する」と述べられ、これからfdとFdについては何を指しているかが理解できます。しかしながら、 frとFrとfr’とFr’については、式でしか記述されていないために、「’」の意味が理解しにくいものになっていると思いますので、少し言葉で説明があると良いと思います。回答(吉川 弘之)食事の例で説明すると以下になります。料理がドナーによって配膳され(提供サービス:Fd)、それをレセプターが認識して(Fr)、食べる(fr)。その時、レセプターの空腹感(Lr)が、レセプターにおいしさを感じつつ食べる(fr’)というサービスを受容する行動を起こさせる。それによって空腹感(Lr)は減り、満腹感(Fr’)が増える。そこで次のような説明を加えました。【提供サービスFdはレセプターに届くときFrであり、それはfrとしてレセプターに流入する。それを受けたレセプターは、Lrを時間速度 fr’で発現してFr’を増やしてゆく。】議論5 体系化をする時の困難性や課題について質問(持丸 正明)本論文では、サービス工学を基本フレームワーク(提供者、受容者、時間概念)とサービス増幅に体系化し、工学体系を具体的に構築するための困難性と技術課題、さらには、解決のための糸口を示唆しています。すなわち、このような体系化がサービス工学を具現化し、目標を達成するためのシナリオであり、そのために課題として列挙された技術要素を選択し、あるいはあらたに研究して統合することの必要性を論じたものと理解しました。そこで、論文中に導かれている「困難性と技術課題」を「4.まとめ」において体系的に整理して記述いただくことで、本研究の目標である「要素技術を選択、統合して、サービス工学という本格研究を進めるための体系的方法論の提示」が明瞭に訴えられるのではないかと思います。回答(吉川 弘之)「4.まとめ」の最後に、「(7)工学理論としての問題」として、(A)サービスの定義、(B)サービスの不確定性、(C)サービスに影響する因子、(D)定量性、などの課題を整理して述べました。議論6 2. 3節「レセプターの期待→….→レセプターに起きた効果」について質問(持丸 正明)遷移の“良さ”がサービスの生産性に影響を与えることに関し、(1)から(5)までの5つの因子を定義していますが、「レセプターの期待→….→レセプターに起きた効果」は循環しながらスパイラルアップしていくものと理解しています。この場合、最終的にレセプターに起きた効果に駆動されて、レセプターに新たな(より高次な)期待が生じ、レセプターはそれを表現(注文)するか、あるいはドナーがそれを表現(意図理解)することで、次のスパイラルが回り出すと考えます。このように考えると、(1)の「設計の良さ」の中に、レセプターとのコミュニケーションによりドナーがレセプターの期待を知り、それを起きてほしい効果として表現する工程が含まれると思われます。このようなコミュニケーションが重要であることは2. 2節においても示唆されています。もし、そうであれば、その部分を(1)に明示的に追記いただく方が分かりやすいと思います。(40)−

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