Vol.1 No.2 2008
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研究論文:サービス工学序説(吉川)−120 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)参考文献吉川弘之:一般設計学序説, 精密機械, 45(8), 20-26 (1979).吉川弘之:先端技術と人間, 世界, 19-34, 岩波書店 (1988)(テクノグローブ再掲, 工業調査会, 20-49(1993)).吉川弘之:テクノロジーの行方, 63-173, 岩波書店 (1996).R. K. Merton: Social Theory and Social Structure, Simon and Shuster(1947)(森東吾他訳:社会理論と社会構造, 16-77, みすず書房(1961)).吉川弘之:人工物観, 横幹, 1(2), 59-65(2007).R. Costanza et al.: The value of the world’s eco-system services and natural capital, Nature, 387/15, 263(May 1997).G. C. Daily, K. Ellison: The New Economy of Nature, Island Press (2002)吉川弘之:一般設計学序説(その2)(2008)(予定)下村芳樹 他:サービス工学の提案, 日本機械学会論文集(C編), 71(702), 669-676(2005).金出武雄, 持丸正明:医療のためのデイジタルヒューマン技術, 情報処理学会誌, 46(12)(2005).倉片憲治, 佐川賢:高齢者に配慮したアクセシブルデザイン技術の開発と標準化, Synthesiology, 1(1), 15-23(2008).J. Spohrer, P. P. Maglio, D. Gruhl: Steps toward a science of service systems, IEEE Computer , 40(1), 71-77(2007).[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12]注)メカトロニックス(mechatronics):森徹郎(安川電機)が1969年に命名した和製英語キーワードサービス科学、理論的枠組み、機能、増幅、サービス産業(受付日 2008.1.11,改訂受理日2008.3.16)執筆者略歴吉川 弘之(よしかわ ひろゆき)東京大学工学部にて、設計学、製造学、保全学を研究。設計学では設計過程を位相幾何学で記述する「一般設計学」を開拓し、知的CADの基礎を築く。製造学では製造業の共通基礎学問の存在を指摘して「国際知的製造プログラム(IMS)」を提唱し、10年にわたり主導。保全学では保全の一般構造を定義し、「保全ロボット(MOOTY)」を試作。2001年より産業技術総合研究所。理事長として研究経営10カ条に基づき、持続性産業への重心移動のための本格研究を実施する研究所の輪郭を産総研に確立した。1956年東京大学工学部卒、東京大学教授、東京大学総長、放送大学学長、日本学術会議会長、日本学術振興会会長、国際製造科学アカデミー(CIRP)会長、国際科学会議(ICSU)会長、現在、産業技術総合研究所理事長。査読者との議論 議論1 本論文のシンセシオロジーとの適合性について質問(赤松 幹之)構成学の論文として本論文を投稿されましたが、論文中に構成学としての本論文の位置づけが書かれていると良いと思います。おそらく、サービス工学研究は、2つの面で構成学であると思います。1つはサービス自身が構成的であることで、もう1つは、サービス工学が関連領域を統合しながら学問体系を作っていく必要がある、という面で構成的であると考えられます。論文の最初の部分で、本論文が構成学的であることを明確に記述してあると、論文の位置づけが明確になると思います。回答(吉川 弘之)第二種基礎研究は、手に入れることのできる知識を統合して意味のある人工物を構成する行為の背後にある一般的な、推論方法、知識、手法を抽出するための研究であり、それをできるだけ一般的に表現するのがSynthesiologyの論文と考えます。そこで、 “(人工物である)理論を作る(構成する)人”からの論文の学術誌としての位置づけを考える必要があります。巨大な科学的知識体系は、部分体系から成り立っており、それは領域と呼ばれます。科学には、物理学、化学、生物学などがあり、これら領域は自身で閉じた無矛盾体系を作っており、同時に相互に矛盾のないものになっています。もちろん、各領域は他領域で説明できないことを含むだけでなく、自領域でも説明できない問題を抱えており、その解決が研究動機になっているのです。このような動機で行われている第一種基礎研究とは、トーマス・クーンの言うノーマルサイエンス(Normal Science)です。そうではない理論研究、それは何か。クーンはノーマルサイエンスでない研究を「パラダイムシフトを起こす研究」と呼び、科学史上最も重要な研究と位置付けたのです。しかし、そのような科学史的スケールでないがノーマルサイエンスのように領域内研究でないもので、しかもパラダイムシフト研究よりもっと頻繁に、また広範に、また日常的に存在し、しかも現実に対する直接的な効果を持つ結論を創出する理論を作り出す研究があります。現実に効果する理論は意味のある人工物であると考えることができるから、その理論を作る研究は構成的研究です。しかもそれは、パラダイムシフトを起こす研究と論理的構造に共通性があります。もちろん、科学史では、パラダイムシフトを起こす研究とは、その時代の共通的矛盾が公知となりつつあるときに、それを解決する理論ということです。一方、日常的課題に対する理論研究は、その課題が時代の関心でありながら、考える共通基盤がなく、それを作り出す理論に対する期待が動機です。違うけれども同型とも言えます。理論を作る研究がパラダイムシフト研究として明示され考察もされているのだとすれば、たとえ日常的だといっても同型の理論を作る構成的研究を、あらためて新しいジャーナルであるSynthesiologyで受け付ける必要があるのか、という疑問がわいてきます。しかしここで次のことを想起しなければなりません。それは、科学史に重大な影響を与えたニュートンのプリンキピアの例でいえば、それは大変な独創であり、領域を創出したものであったのに、そのもっとも中心である3法則(絶対座標、加速、作用反作用)の“構成”について何も説明がないのです。プリンキピアでは、法則を述べた後、「以上、数学者によって承認され、かつ豊富な実験によって確かめられる原理を述べた(Sir Isaac Newton、Philosophiae Naturalis Principia Mahtematica, 中野猿人訳、プリンシピア、講談社、1977、p.38)」としか述べていない。あとは法則から導出される定理が600ページという本(日本語訳)がプリンキピアです。のちにこのことは、C. S. パースのアブダクション研究の重要なテーマとなったのですが、結局ニュートンがなぜあのようにすばらしい、そして有効な法則を“構成”できたのかわかったとはいえなかった。このように、理論を作るという知的な“構成”の重要さが明示的に指摘されながら、しかしその仕組みは論理研究者も科学史家も説明できないでいるのです。となると、理論構成の秘密を明らかにするのは第二種基礎研究を抽出しつつある私たち産総研の研究者の仕事であり、その場としてSynthesiologyがあると考えられます。もちろん、その上に考えなければならないことが多くある。理論であるかどうかに関係なく満たすべき条件があり、それは以下のように満たされている。(1)目標が必要でかつ妥当か:サービスの理論が必要であることは 理解されるようになった。(2)領域性は:積極的に取り除く。(3)知識の統合の説明は十分か:努力した。(4)記述(理論)の整合性:本論文の主目的である。そして理論としては、基本的に概念の定義と、その関係を作ること(39)−
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