Vol.1 No.2 2008
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研究論文:サービス工学序説(吉川)−117 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)うに計量できる場合ばかりとは言えず、質的な向上もあって、定量化は簡単でない。例えば前述のレストランで、料理の出来栄え(例えば味付け)に対する充足度を簡単に数量化したが、それは必ずしも正確なものではない。この点については、サービス領域のそれぞれにおいて、関連する領域の知識を利用したり新しい視点を導入したりして、実際に有効な計量法を定めなければならない。増幅のコストを考えるとき、視点は経済へと移ってゆく。そこにはサービス生産性を始め多くの課題がある。現在急速に関心が広まり検討が始められている課題は、この領域に属するものが多い。4 まとめ:関連領域と研究課題以上は、現実のサービスの向上に有効に使えることを条件として、サービスとは何かを考える基本的枠組みを述べたものである。それはいわばサービスの基本モデルであるが、このモデルの正当性を確認する作業はこれからである。このようなモデルが、科学的あるいは工学的モデルと呼ばれるためには、その正当性が客観的に検証できるような形式をもっていなければならない。本論文のモデルは、その形式を持っているものとして提起されているが、検証は実験室の実験で行えるようなものではない。この場合の検証は以下のような過程を必要とする。まず関連分野を明らかにする。以下に述べるように、多くの分野がある。抽出されたそれぞれの分野で、既知の知識で説明可能なものと、新知識を必要とするものとを明らかにする。新知識の創出を必要とすれば、それはサービスの科学ないし工学的研究である。次に領域間の関係を明らかにする。異なる領域を統合する方法はまだ研究の途上であるから[8]、現在のところサービスに固有の問題として解くほかはなく、サービスに関するシステム研究と呼べるであろう。以下に、前節までに述べた枠組みの創出において明らかとなった関連分野を、その抽出理由、知識の完全性、不完全性とともに、サービス研究として何をするべきかについて簡単に述べる。まず原始サービスを念頭に置いて述べ、その後に増幅について触れる。その上で、サービスに関するシステム研究の方向を示唆することにしよう。それはサービスの要素についての科学的研究に基づいて、いかにして現実的によいサービスを作り上げるかという構成的研究を展望することにもなっている。(1)機能1章で述べたように、サービスは顕在機能であると考えたのであるから、機能とは何かが明らかになることによってサービスも明らかになるという関係がある。しかし長い間、機能はいろいろな分野で言及されながらその実体を把握するのが難しく、機能学と呼べるほど体系化もしておらず、まだ量的取扱いをすることに成功もしていない[1][4][5]。したがって、一般的な表現を求めることはせずに、個別のサービスごとにその機能量を定義しつつ議論を進めることになる。例えば、2.5節で述べたように、客に配膳するサービスの潜在機能を料理人が料理することで高めると考え、料理時間で潜在機能が蓄積されると考えたのは、簡単な例である。このように量化することで、サービスは機能の時間微分という関係が現実的になる。しかし、一般的には機能はもっと複雑で、この例のように簡単に処理されるとは考えられない。それは、以下に述べるようなサービスの基本構造に依拠した議論の結果として改めて明らかになっていくものと考える。(2)サービス提供行動ここには、提供行動の動機としての自らの意図あるいは他の人からの注文に基づくサービス設計、それに従うサービス動作などがあり、それぞれに、設計の良さ、動作の習熟度があった。意図や注文というのは、分野としては精神的なもの、身体的なもの、物理的なものがあり、また別の視点で、目前の個人的なものから、広く社会的なものまであるから、その理解とは多様な視点を必要とする。目前の注文には実時間で対応するのだから、それは人の独特な感受能力を支える素養や習熟が必要である。知識については、分野固有の専門的知識が必要で、教育サービスならそれぞれ専門課題の知識、医療サービスなら医学、生理学、薬学などが必要であることは言うまでもない。一方、一般的なものとして、語学はもちろんのこと、心理学、記号学の分野が有用である。もちろん経験による学習も必要条件である。一方、社会的なものになれば、それは社会学、行動学、社会調査などを必要とし、社会科学的手法が有効である。そしてその理解に基づく設計は、それぞれの分野に固有の設計法を持つが、一般的には設計学を基礎とすることになる。またサービス設計向きの独自の方法も必要で、サービス関連のデータの集積、サービスCADの開発など[9]が有用であると思われる。運動を含む人間の形態の完全な表現をつくる計画は[10]、多様な分野に対応するサービス設計にとって極めて有効な情報源になりうると思われる。設計に基づくサービス動作も独自の分野である。言語やしぐさの表現についての習熟が必要であり、その基礎としての表現学、スポーツ医学などが関係する。(36)−

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