Vol.1 No.2 2008
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研究論文:サービス工学序説(吉川)−115 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)の条件下で可能な実現方法を求めるのはサービス工学の課題である。2.5 サービスの時間的考察2.1で述べたようにサービスは時系列である。上述の議論ではそのことを明示的に述べることをしなかったが、それは時間を無視してよいことを意味していたわけではない。サービスの特徴のひとつはその時間的経過なのであって、それについての考察は最も重要な部分である。それをここまでの議論で保留していたのは、機能学における時間の取り扱いが定まっていないからであり、ここでサービスの時間的側面を議論するのは機能の時間的議論を含むことを意味し、極めて大きな問題を背後にもつことになる。したがってここでは、できるだけサービスに限定して時間的側面を原則的に考察することを試みる。(1)機能とサービスとの関係人の行動や物の使用が、潜在能力を顕在化するのであったが、ここでは能力が作動することを機能発現と考えるので、潜在能力は潜在機能と言い換えられる。すると、行動や使用によって、機能が“ゆっくり”顕れると考えることができる。その関係をここでつぎのように考える。潜在機能をLとし、顕在機能をF、顕在機能の出現速度をfとし、 Ld0 = Ld1(t)+ Fd1(t) fd = -kd・d(Ld1)/dtであるとする。dはドナー。L0は潜在機能の初期値で、これがゼロになった時サービスがもはやできなくなると考えることにすれば、ドナーのそのサービスに関する寿命を決めるものと考えてよい。顕在機能 f は機能の出現速度であるが、これはサービス提供の時間速度であり、一般に言うサービスはこれに相当しているといってよいであろう。kは便宜的なもので、別に定義しなければならない。(2)効果とサービスとの関係受容の場合も同様の定義が必要である。受容は、機能がある速度で流入する状態である。しかしfrで流入した機能がそのままレセプターの潜在機能になるわけではなく、それは、レセプターがすでに持っていた潜在機能Lrからfr’を自らに対して発現させ、効果を生み出す。これがサービス効果eである。すると fr = kr・d(Fr1)/dt Fr1 ≠Lr1Lro =Lr1(t)+Fr1’(t)fr’ = kr’・d(Fr1’)/ dtfr’ =-kr’・d(Lr1)/dtFr1(t)=(設計のよさ、熟練度、伝達効率)* Fd1(t)fr’ =(受容行動係数)* fre =(効果実現係数)* fr’ などとなる。rはレセプター。提供サービスFdはレセプターに届くときFrであり、それはfrとしてレセプターに流入する。それを受けたレセプターは、Lrを時間速度fr’で発現してFr’を増やしてゆく。これらの関係はもちろん両者が量的に表現された場合であり、量的表現は一般に容易なことではない。しかし、現実の場面では、知らず知らずのうちに量的考察をしている場合も多く、その厳密な考察は有用である。それはサービス工学の課題であるとしておき、ここでは1つの例題でその課題の輪郭を示す。例題)レストランでの食事ある人が食事をするためにレストランへ行く。席に着きメニュウを見て食前酒(A)、前菜(B)、主菜(C)、デザート(D)を選択する。そしてそれらを注文する。これがレセプターの注文である。注文を受けた料理人は 注文者の好みを考えつつ料理の内容を組み立て(サービス設計)、実際に料理し(サービス動作)、配膳する(サービス提供)。ここで直ちに明らかになるが、配膳の時間計画が重要である。まず食前酒、前菜、主菜、デザートの順序が厳格に守られなければならない。しかしそれだけではなく、各料理の間の時間間隔も極めて重要である。しかしながら、通常その間隔を注文客が指定することはない。すなわちそこでは、レセプターの期待をドナーが推定するという、設計行為が付け加えられる。この例では、ドナーの提供行動の動機は注文である。そこで簡単にするために、レセプターが注文時間を指定したことにして、注文通りに提供された時には完全に期待が満たされる、言い換えれば受容行動、効3分20分5分80分50分15分70分40分R注文 美味しい食事を楽しみたい。メニュウA、B、C、Dを選ぶ。それをa、b、c、d の時間経過で提供するよう期待し、それで注文する。D提供 Rの注文にできるだけ合うように準備すなわち料理し、時間を見計らって a’、b’、c’、d’のように提供。注文提供ABCDabcda’b’c’d’図3 レストランで食事(34)−

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