Vol.1 No.2 2008
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研究論文:サービス工学序説(吉川)−112 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)学を超える問題であって、いずれ個別のサービス問題を論じるときに触れることを避けられないが、ここではそれに立ち入らない。ただし、価値という言葉を社会的に合意したものとして用いるときは、「社会的価値」としてここでも用いることがある。現在、生態系サービス(eco-system service)[6]や自然の価値[7]などが指摘され、自然の人間に対して行うサービスという観点が注目を集めている。これは極めて重要な視点であるが、本論文の立場でそれは機能の問題としてのちに議論することとなる。ここでの基本的立場は、サービスは「人が人にする」ものである。サービスの厳密な定義はここではせずに、ただ顕在した機能と考えておくが、あえて言えば、本論文全体がサービスの定義となっている。ただし、本文で注釈なしにサービスというときは、一般用語としてのサービスと考えておく。2 基本的枠組2.1 サービス一般ある人が、ある動機に基づく意図を持って他の人に何らかの影響を与えようとして取る行動を、サービス行動という。一般にそれは時間的経過である。これは人が一人で生きているときにはない。人が社会を作ることで生じるもので、社会を作る根拠でもある。のちに、自分にするサービス、自然の恩恵としてのサービスなどを考えることになるが、それは特殊な、あるいは縮退したサービスとして取り扱う。ある人が他の人にサービスする。これをサービスの提供行動という。すると他の人は受けたサービスにこたえて固有の行動をする。それを受容行動という。ある人がサービス提供者(ドナー)で、他の人がサービス受容者(レセプター)である。各行動は一般には時間的に特徴づけられた時系列である。全行動が終了したとき、サービスの結果として、提供者と受容者との変化に加え、外界にも変化が起きる。この変化の総和をサービス効果という。この一連の過程を、サービス現象と呼ぶこともある。ある人も他の人も一人のとき、そのサービスを原始サービスという。図1に若干の例を示す。原始サービスは、直接あるいは媒体(ビークルと呼ぶ)を通して行われる(直接する方法がなく、どんな場合でも媒体を通してしか行えないような原始サービスの場合は、のちに述べるように媒体はサービスを強化する場合があるので、原始サービス用の標準媒体を定めておく必要がある)。原始サービスは連鎖を作ることがある。原始サービスでない場合に次の呼称を与える。提供者が一人で受容者が二人以上の時を分配されたサービス、提供者が二人以上で受容者が一人のときを結合されたサービス、提供者も受容者も二人以上のときを社会化されたサービスと呼ぶ。この組み合わせを含む連鎖により、サービスはネットワークを作ることができるようになる。 各行動が終了したとき、提供者の提供を目的としたそれまでの行動の時間的な和をサービス提供量という。受容者に起きる変化は、提供者が動機に基づいて提供行動したことの成果であるが、それをサービス主効果と呼ぶ。サービス主効果は、受容者の受容行動の結果として起こる変化の時間的な和であるが、それは多様であり、物理的なもの、身体的なもの、精神的なものに分けられる。提供行動の結果として起きる受容者以外の変化、それは提供者自身に起きる変化(例えば疲労)、用いた道具等の媒体に生じる変化(例えば摩耗)であり、副次効果と呼ぶ。外界に影響を及ぼした結果起こる外界の変化(例えば環境汚染)は波及効果と呼ぶ。それぞれの変化はそれぞれの行動(ものの場合は反応)の結果であるが、それは多図2 原始サービスの基本系医療介護補助移動飲食美容宿泊教育情報相談音楽物語娯楽保管輸送保全診断判断依頼指定料理決断準備評価制作分析演出制作演出評価梱包診断治療介護補助移送提供化粧提供説教配信提案演奏発話演技維持配達修理受入依存協力服従飲食化粧睡眠聞入受信解決聴取拝聴鑑賞委任委託受取健康量行動量達成量距離充足感容姿休息習得量情報量問題解決感動楽しみ解放量×時間量×距離回復性能母親若者力自慢運転手夫人主人親人長老演奏者話し好き人預かり人運搬車直せる人子供年寄り力なし同乗者妻自分客子供知人悩める人聞き手聞き手家族預け人受領者直せない人生産設計製造使用利便器用人使用者意味(コンテンツ)Dの準備(設計・計画)Dの提供行動Rの受容行動Rの効果(機能量)Dの例Rの例D:ドナーR:レセプター効果:①身体、②精神、③物質①②③図1 原始サービス例外界人(レセプター)主効果人(ドナー)副次効果波及効果サービス行動(人が人に直接サービス)動機(注文・意図)設計縮退した原始サービスサービス行動(物(ビークル)を媒介として人が人にサービス)物(ビークル)副次効果(31)−

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