Vol.1 No.2 2008
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研究論文:だれでも構築運営できるコラボレーションシステムの実現(江渡ほか)−108 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)7 関連研究Wikiの基本コンセプトは誰もが容易に内容を編集できることであり、このコンセプトを踏襲したWikiクローンと呼ばれる同様のシステムが多数存在する。Wikiをより便利に使うために、メールとの連携機能を備えたWikiエンジンもある。JotSpot[19]では、それぞれのWiki ページに対応するメールアドレスにメールを送ることによって、Wikiページを更新できる。PukiWiki[20]は、受け取ったメールをページへの書き込みとして扱う機能を追加できる。Hiki[21] は、更新をメールで通知する機能を備えている。いずれもメールをWikiの補完的な機能として用いているが、qwikWebはMLと密に統合されているという点で大きく異なる。目的を特化したWikiも多く存在する。おそらく最も著名なものはMediaWikiであろう。これはオンライン百科事典のWikipediaに用いられているWikiエンジンである。他にもSemantic Webデータを容易に作成するツールとしてSemanticWikiと呼ばれるWikiエンジンもいくつか提案されている[22][23]。教育用途を目的としたWikiエンジンもある。Guzdialらは、ジョージア工科大学において、CoWebというWikiエンジンを開発し、教育環境において使用している[24]。2年間の運用において、学内には120を超えるWikiが立ち上げられ、10台のサーバで運営されている。Wangらは、Wikiにページ所有者、書き込み権限、不可視モードの設定などの学習環境に特有な拡張を施した[25]。Breretonらは、Wikiをベースとした学習支援環境を構築している[26]。しかし、qwikWebのようにMLとのシームレスな融合システムは提案されていない。8 まとめ誰でも構築運営できるコラボレーションシステムの実現に向けて、情報伝達と知識の集約や構造化技術をスムースに融合したqwikWebを提案した。また、このようなコラボレーションシステムの本格研究を実現するプロセスを明らかにした。本システムをデザイン、実装、運用した結果、約18,000人のユーザが約3,000のMLを利用した。運用データの分析を行うことで本システムの妥当性と有効性を示した。今後の課題としては、企業による本格運用、ターゲットユーザの絞込みによる改良、携帯電話など、多様な情報環境に向けての改良などが挙げられる。筆者(江渡)が手掛けている他のプロジェクトとして、仮想生物構築環境Modulobeがある。Modulobeでは、ユーザが作った仮想生物をネット上で共有し、他のユーザはそのモデルを改造して新しいモデルを作り上げることができる。モデルのパーツレベルでつけられたIDによって、モデ参考文献総務省: 平成17年「通信利用動向調査」の結果, http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060519_1.html(2006).江渡浩一郎, 高林 哲, 増井俊之: qwikWeb: メーリングリストとWikiを統合したコミュニケーション・システム, インタラクション2005, 13-20(2005).Lotus Notes: http://www-06.ibm.com/jp/software/lotus/サイボウズ: http://cybozu.co.jp/岡田謙一: 協調作業におけるコミュニケーション支援, 電子情報通信学会誌, 89(3), 213-217(2006).北山 聡: コミュニティを計量する, 人工知能学会誌, 18(6), 668-674(2003).B.Leuf and W.Cunningham: The Wiki Way: Quick Collaboration on the Web, Addison-Wesley, Reading, MA (2001).江渡浩一郎: なぜそんなにもWikiは重要なのか, Mobile Society Review 未来心理, 7, 50-57(2006).C.Alexander, S.Ishikawa and M.Silverstein: A Pattern Language: Towns, Buildings, Construction, Oxford University Press, New York (1977).K.Beck and W.Cunningham: Using pattern languages for object-oriented programs, Technical Report No. CR-87-43, http://c2.com/doc/oopsla87.html (1987).E.Gamma, R.Helm, R.Johnson and J.Vlissides: Design patterns: Abstraction and reuse of object-oriented [1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11]ル間の再利用の関係が可視化される。ユーザ間のコミュニケーションを支援するシステムを運営し、そこから知見を引き出そうとしている点で共通点がある。qwikWebとModulobeには、また「引き算によるデザイン」という共通点がある。ユーザにとって本質的に重要な機能は何かを考え、それ以外の機能は徹底的に削る。それによってターゲットとなるユーザがシステムを把握しやすくする。qwikWebでは、管理者を設定する機能がない、ページ毎に編集権限を変える機能がないなど、通常存在する機能を削ることでわかりやすさを実現した。これにより利用できない状況も出てくるが、新しいユーザがすぐに理解して使いこなせるようなシステムが実現できた。今後はよりユーザ間のコミュニケーションを支援し、ネットワーク上の共有知の実現に寄与するような研究を続けていきたい。謝辞本研究の一部は、科学技術振興事業団「JST」の戦略的基礎研究推進事業「CREST」における研究領域「デジタルメディア作品の制作を支援する基盤技術」の研究課題「情報デザインによる市民芸術創出プラットフォームの構築」の支援により行いました。キーワードコラボレーションシステム、グループウェア、パターン・ランゲージ、Wiki、メーリングリスト(27)−

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