Vol.1 No.2 2008
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研究論文:だれでも構築運営できるコラボレーションシステムの実現(江渡ほか)−104 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)4.1.3 qwikWebにおけるコミュニケーション・パターン前節で再設定したWikiの設計思想「コミュニケーション・パターン」を基にqwikWebの設計思想を検討すると、「ユーザが各種のコミュニケーション・パターンを独自に組みあわせることで当該グループに適したコラボレーションシステムを構築していくことが可能なシステム」となる。その上で、「今までの知識をもとに説明なしで使うことができる」というユーザの立場を加味すると、すでに慣れ親しんだメールによるコミュニケーション環境を出発点として、徐々に自分の理想とする情報環境を実現できるような発展性を備えたコミュニケーション・パターンを実践することができるようなWebシステムとなる。4.2 qwikWebのシステム設計4.2.1 基本設計今まで議論してきた「管理の容易さ」「習得の容易さ」「知識の蓄積・構造化」を考慮し、我々のターゲットユーザが利用している日常的なコミュニケーション手段を検討する。それは、主に電話、FAX、携帯電話、メール、Webブラウジングである。この中でテキスト情報などのインターネットで流通させる場合に整合性の良いデジタル情報によるコミュニケーション手段は、メール、Webブラウジングである。前節で設計思想の面で採用を決定したWikiはWebブラウジングの拡張であり、メールの使い方には何の変化ももたらさないため、ユーザは従来通りの手段でメールを使い続けると想定される。そこで、メールと知識の構造化、協働構築に利用されるWikiを連携することとする。つまり、Wikiの入口の画面を含めて、利用者が好みの利用規則を設定し、自由に編集することができるコミュニケーション・パターンを実践することができるWebシステムとして設計する。具体的には以下の点を重視して設計する。・「管理の容易さ」メールを送って、システムからのメールに返信するだけで開設できる。メンバの追加や削除など誰でも可能とし、従来のコラボレーションシステムでは困難であった組織外のメンバとの連携もすぐにできる。システムのメンバとWikiのメンバを一致させ、誰でも容易に管理できるようにする。・「習得の容易さ」メールによる手軽なコミュニケーションを入口として、徐々に自分が望む情報環境へと進めていくことができる。・「知識の蓄積・構造化」メールのやり取りがWikiに蓄積され、それを基に必要な知識構造化や協働作業を行うことができる。Wikiに対して誰がどんな操作をしたか通知される(メールで配信される)。このため、グループにメールを配信するMLとWikiを密接に連携する設計とする。MLとは、複数の人に同時に電子メールを配信する仕組みである。ML宛にメールを送信すると、そのメールは登録されている全てのメンバに転送される。MLは非同期型のコミュニケーションシステムに分類できる。ML用のサーバソフトウェアにはfmlやmajordomoなど数多くあるが、設置の手間などから、現在はYahooグループ[13]やfreeML[14]などのホスティングサービスが多く用いられている。MLを開設する際には、まずMLの管理者となるユーザがMLのメールアドレスを設定し、さらにメンバの登録を行う。一般にメンバの参加および脱退はMLの管理者によって管理されており、管理者へ依頼を出すことで参加/脱退が行われる。これには管理者が権限を持つことで、問題のある人物の排除が容易に行える一方、管理者に多くの負荷がかかるという問題がある。そこで、MLとしてQuickML[15]を採用する。このQuickMLは、平易な操作でMLの立ち上げや運用が行えるMLシステムである。4.2.2 QuickMLQuickMLは高林哲と増井俊之らによって開発された、容易に開設・運用が行えるML管理システムである。QuickMLではメンバ全員がメンバの参加/脱退操作の権限を持つため、管理者1人に負荷が集中するという問題が発生しない。メンバが投稿したメールは各メンバに転送されるため、メールは各メンバがクライアント側で管理することになる。5 qwikWebの実装5.1 実装手法qwikWebの実装では、要素技術としてQuickMLとWiki技術を用いているが、ユーザにとっては、MLとWikiの機能が巧みに連携したシステムと見え、QuickMLや従来のWikiを意識しないよう実装した。qwikWebでは、MLに送られたメールをすべてWikiページとして登録していくことで、知識の構造化を促進する。ユーザはqwikWebシステムにメールを送るだけでMLとWikiサイトを開設できる。まずMLの名前を決め、「MLの名前@qwik.jp」にメールを送信する。その名前が未使用であれば確認メールが送られてくる。このメールに返信することで、MLとWikiサイトが開設される(図2)。もしMLとWikiサイトが1ヶ月以上使われなかった場合、警告の後に自動的に削除される。このように開設と閉鎖に際してユーザにほとんど負荷をかけない仕組みであり、ユーザはメールを投げる感覚でMLおよびWikiサイトの立ち上(23)−
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