Vol.1 No.2 2008
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研究論文:熱電発電を利用した小型コジェネシステムの開発(舟橋ほか)−100 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)(受付日 2007.12.25,改訂受理日2008.2.19)執筆者略歴舟橋 良次(ふなはし りょうじ)1992年3月名古屋大学大学院理学研究科博士前期課程修了、同年4月工業技術院・大阪工業技術試験所入所(現 産業技術総合研究所関西センター)。1998年12月名古屋大学大学院工学研究科結晶材料専攻博士(工学)取得。これまで、超伝導、熱電など機能性酸化物の研究に携わっている。本論文では、主として材料開発と接合技術の開発を担当した。浦田 さおり(うらた さおり)1999年3月国立佐世保工業高等専門学校物質工学科卒業、2002年6月産業技術総合研究所関西センター派遣研究員、2006年4月科学技術振興機構CREST技術員。高専以来新たな熱電材料の探索や高性能発電モジュールの作製技術の開発に携わっている。本論文では、主として素子化技術の開発とモジュールの製造と評価を担当した。査読者との議論 議論1 本研究開発の最大の困難点質問(小林 直人)戦略的な見通しの下に小型ガスコジェネレーションシステムの開発を目指して、材料探索・開発等の基礎研究、それらをノウハウなどにより組み上げた中間統合技術、さらには湯沸かし器に搭載したパイプ型モジュールの発電など一連の意義ある研究開発を行ったと理解しました。この中で最も困難な点はどんなところだったでしょうか。またそれをどのように克服できたのでしょうか。回答(舟橋 良次)技術的に一番困難であるのは、材料開発です。新物質の発見は狙ってできるものではなく、運も味方につけなければなりません。p型材料についてはCo系層状酸化物を見つけることができましたが、n型材料の開発に苦労しております。モジュール製品化の研究は本論文でも記載した通り、様々な連携や情報収集により思ったよりすんなり進めることができたと感じています。熱電発電を実用化するために本当に困難であるのは、技術的なことより、熱電変換技術の価値作りでした。いきなり、小型ガスコジェネレーションシステムへの応用を思いついたのではありません。メリット、デメリットを見据え、多くの分野のユーザーの意見を集め、やっと出たアイデアがトッピングであり、Surf. Sci., 223, 44 (2004). R. Funahashi, S. Urata, K. Mizuno, T. Kouuchi and M. Mikami: Ca2.7Bi0.3Co4O9/La0.9Bi0.1NiO3 thermoelectric devices with high output power density, Appl. Phys. Lett. 85, 1036 (2004).S. Li, R. Funahashi, I. Matsubara, K. Ueno, S. Sodeoka and H. Yamada: Synthesis and thermoelectric properties of the new oxide materials Ca3-χBiχCo4O9+δ (0.0 < χ < 0.75), Chem. Mater., 12, 2424 (2000).R. Funahashi, M. Mikami, S. Urata, M. Kitawaki, T. Kouuchi and K. Mizuno: High-throughput screening of thermoelectric oxides and power generation modules consisting of oxide unicouples, Meas. Sci. and Tech., 16, 70 (2005).R. Funahashi, T. Mihara, S. Urata, Y. Hisazumi and A. Kegasa: Preparation and properties of thermoelectric pipe-type modules, Proc. of 2006 Int. Conf. Thermoelectrics, 58-61 (2006, Vienna).舟橋良次、浦田さおり:廃熱を有効利用する酸化物熱電発電モジュールの開発, 応用物理, 77, 45-48 (2007).[6][7][8][9][10]具体例としての小型ガスコジェネレーションシステムでした。議論2 今後の研究の課題質問(小林 直人)本文に書かれていたように、高温での効率的な熱電発電システムによる廃熱回収が出来れば、省エネルギーに向けた大きな貢献ができると思います。本研究開発はその一里塚になったと思いますが、今後克服すべき最大の課題は何でしょうか。回答(舟橋 良次)モジュールの量産化と信頼性向上です。もちろん変換効率が低いため、新材料の探索も必要ですが、まず現状の性能で実用化できる熱電変換の市場を構築することが急務と考えております。議論3 n型熱電材料開発の見通し質問(小林 直人)本研究開発では、高性能のp型酸化物熱電変換材料に比べて、n型酸化物熱電変換材料の性能はまだそれほど良くなく、今後の研究の大きな課題だと認識しました。今後のn型熱電材料の開発の戦略や見通しを聞かせてください。回答(舟橋 良次)材料開発には2つの戦略を持っております。1つは近い将来構築される熱電変換の市場で用いられる材料の開発です。これは全く未知の材料を開発するのではなく、ここで紹介したNi、Mn系酸化物の性能を元素添加、プロセス技術を駆使して向上させる予定です。さらに熱電変換の市場を大きくするためにはp、n型ともに今の材料の性能では不十分です。これに関してはナノテクによる結晶構造制御あるいはコンビナトリアル技術による高効率探索技術などを用い、全く新しい物質を創製していく必要があります。議論4 高温からの熱回収システムの効果質問(小林 直人)小型コジェネシステムの開発については、システムとしての実証を行ったという点で、大変大きな意義があったと考えられます。また、今回の小型実証システムは、高温における電気変換利用、中間温度における熱利用、さらに高温蒸気の利用など、総合的な熱エネルギー利用として効率的であると考えられます。実際の応用の場面ではこのようなトッピングによる高温からの熱回収は、湯沸かし器以外にどのような利用形態が考えられますか。回答(舟橋 良次)基本的に水などと熱交換を行うシステムであれば搭載は可能であると思います。例えば湯沸かし器よりも大きな、ボイラーのフィンなどに用いることもできそうです。ただ重要なことは元システムの主目的を大きく損ねないことです。さらには固体酸化物型燃料電池(SOFC)も候補かもしれません。SOFCの作動温度は技術進歩により年々低下しています。そのため高温側に温度マージンが出来ます。このマージンを熱電変換で有効利用できるかもしれません。議論5 本研究の成果の熱電発電市場への効果質問(小林 直人)本研究成果による熱電発電市場への効果ですが、現状の他の技術や製品の現状と比べて、その中にどの程度の革新性を持ち込むことになると考えられますか?回答(舟橋 良次)まだ熱電発電の市場はありません。そのためこの論文に書いたように、これまでとは違った評価軸で熱電発電の価値を評価し、熱電発電マーケットを構築することが必要であり、そのためのベンチャー創業を予定しております。(19)−
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