Vol.1 No.2 2008
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研究論文:熱電発電を利用した小型コジェネシステムの開発(舟橋ほか)−98 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)6.2.1 試料作製と評価法Agの絶縁ペーストへの拡散による電気絶縁破壊の評価法を図6(a)に示す。アルミナ板上にPdペーストを0~10 wt.%複合したAgペーストを塗布し、固化させた。その上に絶縁ペースト、銀シートの順で積層し、ペーストを固化させた。積層試料を1023 Kで30時間熱処理した後、テスターにより導電性を評価した。それぞれ異なるPd複合量で5試料を評価し、絶縁率を計算した。6.2.2 電気絶縁率図6(b)に各条件での絶縁率を示す。Pdペースト複合量の増加により電気絶縁率が増加し、10 wt.%の場合、1023 Kで30時間熱処理しても全ての試料で電気絶縁性を保持していた。また、SEMによる微細組織観察の結果、Pd複合がAgの絶縁ペースト中への拡散を抑制していることが分かった。6.3 パイプ型モジュールの構造と作製本研究で作製するパイプ型熱電モジュールの構造を図7に示す。パイプ型モジュールは27対の素子で構成される2つの素子列でステンレス水管を挟み込んだ構造になっている。p型素子にはCa2.7Bi0.3Co4O9、n型素子にはCaMn0.98Mo0.02O3の焼結体を用いた。本研究では小型湯沸かし器への搭載を試みた。湯沸かし器の燃料室内は狭く、モジュールにはコンパクト化も要求され、熱電素子数が制限される。しかし、熱電発電で高い電圧を得るためには多くの素子数が必要となる。このジレンマを解決するため、ここではLa0.9Bi0.1NiO3よりもゼーベック係数の高いCaMn0.98Mo0.02O3を用いモジュールを作製した。水管と熱電素子間の電気絶縁のために水管表面に厚さ60~70 µmのZrO2皮膜を溶射により作製した。その上へさらに市販の絶縁性ペーストを塗布し、素子列と水管を接着した。絶縁ペーストの固化後の厚さは150−300 µmであった。熱電素子は酸化物焼結体を切削によりアーチ状に加工し、6 wt.%でCo−349粉末を複合したAgペーストを用い、アーチ部にかかる圧力が50 kg/cm2の下、1123 Kで接合し、素子列を得た。この素子列を表面を絶縁処理した水管に接着し、全長が30 cm(54素子対)のパイプ型モジュールを作製した[9]。7 小型ガス・熱電コジェネシステムの構築[10]上記のモジュールを2本束ね、元止め式湯沸かし器に搭載した(図8)。湯沸かし器のガス燃焼により、モジュール外部を加熱すると同時に、湯沸かし器からの温水(約313 K)を16 cm3/分の流量で水管に流すことで、熱電素子に温度差を付け発電した。 ガス燃焼中、熱電モジュール周辺の温度は約1473 Kに達した。湯沸かし器の火力を最大にした時、開放電圧 (Vo)と最高出力 (Pmax)はそれぞれ1.3~1.5 V、0.28 Wとなった。モジュールのVoが0.6 Vあるいは1.0 Vになる火力条件で1時間連続して発電させた後燃焼を止め、室温まで冷却する方法で発電特性を繰り返し測定した。その結果、1時間の加熱と冷却を繰り返しても、発電特性の劣化は見られなかった。また、モジュールの水管の終端からは約473 Kの過熱蒸気を得ることができた。このように、直接熱交換が可能なパイプ型熱電モジュールを取り付けることにより、普通の湯沸かし器が、多機能なコジェネレーションシステムとなった(図9)。さらに、熱電素子に覆われていない水管を湯沸かし器に装着した場合に比べ、パイプ型熱電モジュールを装着しガス燃焼を行った場合の方が、排気ガス温度は高く、CO分圧も低減していた。これは、水管を酸化物熱電素子で覆うことにより、表面温度の低い水管を熱電素子熱電素子モジュール断面銀ペースト銀電極絶縁ペーストジルコニア被膜ステンレス管ステンレス管30 cm4 mm図7 パイプ型モジュールの概略図パイプ全長は30 cmである。熱電素子とステンレス水管の間はAgペースト、Agシート、絶縁ペースト、ZrO2の多層構造となっている。熱伝達性を良くするため薄い構造が望ましいが、AgペーストからのAg拡散による電気絶縁の破壊を防ぐことが必要である。30 cmモジュール図8 パイプ型モジュールとモジュールを装着した元止め湯沸かし器ガス燃焼により、湯沸かし器から温水、モジュールから過熱蒸気と電気が同時に得られた。(17)−
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