Vol.1 No.2 2008
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研究論文:熱電発電を利用した小型コジェネシステムの開発(舟橋ほか)−97 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)い接触電気抵抗を有する接合を形成する必要がある。しかし、金属(本研究ではAg)と酸化物材料間の接合においては、それらのフェルミエネルギー及び熱膨張率の違いによる高い接触電気抵抗と剥離の問題が生じる(図5)。そのため、接合材料にはこれらの問題を解決する特性が要求される。6.1.1 素子作製1対のCo−349及びNi−113の焼結体をAgで表面をメタライズしたアルミナ基板に接合することで素子を作製し、接触電気抵抗と耐熱性を評価した[6]。接合材料として、0~10 wt.%でCo−349あるいはNi−113粉末を含むAgペーストを用いた。本来ならばp型、n型それぞれの素子に対して同じ粉末を用いる方がより良いと思われるが、スクリーン印刷によりAgペーストの塗布には「二色刷り」の技術が必要となるため、本研究ではp型あるいはn型の粉末を複合したAgペーストの一方を用い素子を作製した。酸化物複合Agペーストを酸化物焼結体の表面に塗布し、アルミナ基板のメタライズ面に載せ、接合面に垂直方向に65 kg/cm2の一軸加圧をしながら1123 Kで熱処理することでAgペーストを固化し、1対のp及びn型焼結体から構成される熱電素子を作製した。用いた酸化物焼結体の組成はCo−349及びNi−113のCaとLaの一部をBiで置換したCa2.7Bi0.3Co4O9とLa0.9Bi0.1NiO3で、これらの粉末をホットプレスすることで焼結体を作製した。それぞれの材料のCa及びLaをBiで置換した理由はp型についてはS、ρ、κ[式1]の全てが改善されること[7]、n型についてはSを一定に保ったままρのみを低減できる[8]ためである。6.1.2 特性評価AgペーストへのCo−349粉末の複合は素子内部抵抗RIの減少に有効であることが分かった[6]。Co−349粉末の複合量が6 wt.%で最も低いRIが得られた。この低減はAgペーストと酸化物焼結体間の接触電気抵抗が低下したことに起因する。この原因については未だ解明できていないが、Agペーストと酸化物焼結体表面との濡れ性の改善による密着性の向上やショットキー障壁の影響の低減等が考えられる。酸化物材料とAg電極を強固かつ密に接続するためには焼結体の接着面の平滑さも重要となる。そこでAgペーストを塗る前に焼結体表面をバフ研磨し、上記と同条件で6 wt.%のCo−349粉末を複合したAgペーストを用いアルミナ基板に接合した。その結果、焼結体表面の平滑化が良好な接合の形成に有効であることが明らかになった。次に、熱電素子の加熱-冷却サイクルに対する耐久性について述べる。熱電素子を電気炉に入れ、空気中で1073 Kまで3時間かけ昇温し、そこで1時間保持した後、高温から直接炉外に取り出して室温まで急冷する操作を5回行った。加熱-冷却サイクル前後でのRIを測定し、その変化量を計算した。Agペーストのみで接続した素子では特に600 K以下でサイクル後のRIの増加が顕著であった。一方、酸化物複合ペーストを用いた素子では加熱-急冷サイクルによるRIの増加が非常に小さくなった[6]。このことからAgペーストへの酸化物粉末の複合は加熱-冷却サイクルに対する耐久性の向上にも有効であることが分かった。走査型電子顕微鏡(SEM)観察の結果、Agペーストのみで作製した素子ではAgペースト部分に大きな空洞が見られた。一方、Co−349粉末を6 wt.%複合したAgペーストを用いた熱電素子では微細な空孔が見られるものの、アルミナ基板と酸化物焼結体が密に接合していた。この微細組織の改善が加熱-急冷サイクルによるRIの増加を抑制できた原因である。空洞生成の原因として、Agの焼結による収縮、Agと酸化物材料間の熱膨張率の差や悪い濡れ性による剥離などが考えられる。6.2 電気絶縁技術ガスコジェネレーションシステムに搭載する熱電モジュールは発電と共に、冷却に用いる水を過熱蒸気にしなければならない。そのためには、水管(ステンレス管)と熱電素子間での高い熱伝達に加え、電気絶縁も維持しなければならない。水管と熱電素子は水管表面に溶射により形成したZrO2皮膜と電気絶縁性ペーストにより電気絶縁を維持している。ここで問題となるのが、素子と電極を接合するAgペーストからAgが拡散し、ZrO2層を貫通し、水管まで達することで電気絶縁の破壊が生じることである。そこでこの拡散をAgペーストへの他元素添加により防ぐことを試みた。特にPd粒子の添加によりAgの拡散を防ぐ技術は工業的に用いられているため、本研究ではCo−349粉末を複合したAgペーストへさらにPdペーストを複合する効果について調べた。20003510406080100(b)(a)絶縁率(%)Pdペースト複合量(wt.%)銀シートテスターで抵抗測定絶縁ペースト銀ペーストアルミナ基板図6 多層構造の電気絶縁評価方法(a)と1023 Kで30時間熱処理した後の多層試料の絶縁率のPdペースト複合量依存性(b)異なるPdペースト複合量で各々5試料を作製し、熱処理後の絶縁ペーストを介したAgペーストとAgシート間での絶縁性を評価した。(16)−
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