Vol.1 No.2 2008
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研究論文:熱電発電を利用した小型コジェネシステムの開発(舟橋ほか)−96 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)を設置する。そして、パイプ型モジュール製造において必要な技術は、熱電素子の製造、pおよびn型素子を低抵抗・高強度で接合する技術、高い熱伝達率、強い強度、電気絶縁性を有する素子とパイプとの接着技術、モジュールにガス燃焼熱を取り込む集熱技術、低コスト製造技術等である。これらの技術を構成する「川上側」の技術として、高い熱電性能を有するだけでなく、化学的にも機械的にも高温、天然ガス燃焼中で高い耐久性を有する材料、同じく高温で安定な電極及び素子と電極を接合するための材料が必要となる。さらにそれらには安全性とコスト面から毒性、稀少元素が含まれないことが要求される。これらの物質を設計するため物理、ナノテク技術など作製するための化学といった基礎研究も不可欠である。本論文では熱電発電を用いた小型ガスコジェネレーションシステムの開発を目指し筆者らが取り組んできた基礎研究、それらをノウハウなどにより組み上げた中間統合技術、さらには湯沸かし器に搭載したパイプ型モジュールの発電性能について述べる。5 基礎研究 ~新たな材料の誕生~筆者らは1998年より高温、空気中でも安定で、安全、安価な酸化物熱電材料の探索を始めた。物質の設計概念は当時注目を浴びていた低次元物質、つまり層状構造である[3]。筆者らのうち舟橋は元々層状構造を有する酸化物超伝導体の研究を行っており、そこから派生したCo系層状酸化物を合成していた。しかし顕著な特徴も無いため開発対象の材料から除外したが、熱電特性を評価したところ、高温、空気中で良いp型特性を示すことを運良く発見した。この酸化物の組成はCa3Co4O9(Co−349)であり、結晶構造の模式図を図4(a)に示す[4]。この酸化物はCoの周りに6つのOが配位した八面体により形成されるCoO2層と岩塩(NaCl)構造を持つCa2CoO3層が交互に積層した構造を有している。この酸化物の単結晶の973 Kにおける無次元熱電性能指数ZT [式1]は約1.1となった。 ZT = S2T/ρκ [式1]ここでZは熱電性能指数と呼ばれ、絶対温度Tを乗じたZTを無次元熱電性能指数と呼ぶ。また、S、ρ、κ はそれぞれ材料のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導度で、ΖΤが大きいほど良い熱電材料である。Co−349のZTは従来のバルクの化合物半導体の最高値と同レベルであるが、それらの数値は真空中での測定結果であり、高温、空気中ではCo−349のみが高い熱電性能を示す(図4 (b))。効率の良い熱電発電システムの構築にはn型熱電材料の開発も不可欠である。しかし、上記のように優れた材料を見つけることは非常に困難であるため、筆者らは発見の確率を高めることを目的に、ゾル・ゲル合成法を用いた熱電材料の高効率探索技術を開発した。この技術を用い、これまでにZTが973 Kにおいても0.01程度と、性能は不十分ではあるものの、高温、空気中で安定なn型材料であるLaNiO3(Ni−113)を独自に開発した[5]。さらにこれらの酸化物の性能を十分に引き出すよう熱電発電モジュールの製造にも成功しているが、その変換効率は1.5~2 %程度に留まっている。しかし、酸化物材料の大きな強みである高温耐久性を活かすことで、これまで実現してこなかった熱回収システムを構築できるものと考え、高温エネルギーの有効利用に向けた熱電発電システムの構築に取り組んでいる。6 中間統合技術6.1 接合技術良い熱電モジュールを得るためには熱電材料と電極(一般に金属)材料間で、耐熱性に優れ、高い機械強度と低1.5(b)(a)Bi0.5Sb1.5Te3Zn4Sb3CeFe3.5Co0.5Sb12PbTe1.20.90.60.30400600800温 度 (K)10001200無次元性能指数 ZTSiGe~~~~~~~~Co-349CoCaObca図4 Ca3Co4O9(Co−349)の結晶構造(a)と無次元性能指数ZTの温度依存性(b)Co−349は導電性のCoO2層と絶縁性のCa2CoO3層が交互積層した構造を有している。またこの酸化物の単結晶のZTは973 Kにおいて1.1となった。これは10 %を超える変換効率に相当する。高いZTを示す金属系材料の性能についてもグラフに示す。Co−349を除き全ての材料のZTは真空中で測定したものである。p型熱電材料接合材料電極材料n型熱電材料接合材料の条件・高接合強度・低接触電気抵抗・高熱伝達熱膨張率 ・・・剥離ショットキー障壁 ・・・高接触電気抵抗図5 接合技術における課題接合技術は高い耐久性と発電性能を有するモジュールの作製には必要不可欠である。特に、強い接合強度と低い接触電気抵抗を実現するための接合材料と接合方法の開発が実用化において重要である。(15)−
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