Vol.1 No.2 2008
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研究論文−94 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)1 研究の背景エネルギーの中核である石油の産出は近年中にピークを迎えると予測され、エネルギーの安定供給と地球環境問題の早期解決に人類は迫られている。そのため新エネルギー、省エネルギー技術の研究開発が多くの機関で盛んに行われている。この困難な問題の解決策の1つとして、未利用のまま大気中に捨てられている廃熱の有効利用が挙げられる。日本では年間に原油換算で数億kℓもの一次エネルギーを輸入し、消費している。しかし、その約70 %は最終的に熱エネルギーとして大気中に棄てられている(図1)[1]。この未利用廃熱を利用し、エネルギー効率を向上することは石油代替エネルギーの開発と共に非常に重要な課題である。廃熱は総量こそ莫大ではあるものの、1つの熱機関から廃棄されているエネルギー量は多くない。つまり、廃熱エネルギーは広く、薄く分散している。このようなエネルギーを電気エネルギーに変換できる最有力技術として熱電発電は注目されている。なぜならば熱電変換にはスケール効果がないため、どれだけ小さな熱エネルギーでも、それに熱電変換効率をかけただけの電気エネルギーが得られるからである。例えば我が国において、自動車や工場、ゴミ焼却場等から排出される廃熱量の20 %を電気に変換できたとするならば、1年間で3.5万GWhの電力が得られるとの試算もある[2]。この値は中規模クラスの原子力発電所1基分の電力量に相当する。また、熱電発電システムはCO2や放射性物質を排出せず、タービン等の可動部も必要ないクリーンでメンテナンスフリーで長寿命なエネルギー変換システムである。熱電発電の研究は長年されており、新たな材料が見つかる度に大きな期待とその後の失望があった。そのため、ユーザーからは「また熱電か・・・」等という冷たい目で見られているのも事実であった。これは良い特性を持った材料であっても、民生利用において重要な安全性、耐久性、コスト、製造技術などに重大な問題があったためである。また、10年前のアメリカでは「ガソリンは安いから、熱電発電は重要でない」と言う風潮も、熱電発電の民生利用を遅らせていた。しかし、昨今のエネルギー、地球環境問題への意識の変化により、再び熱電発電への期待が高まりつつある。それは熱電材料の研究者サイドからではなく、ユーザーサイドからのニーズによって起きている。そのムーブメントを引き起こした1つのきっかけは筆者らも含めた日本の研究者による優れた酸化物熱電材料の発見である。2 熱電発電実用化に向けた戦略エネルギー問題が深刻になるに従い、廃熱の有効利用への期待が大きくなっている。一口に廃熱と言っても約80 研究論文エネルギー、環境問題は日々深刻になり、生活スタイルの改善と共に、産業分野でのエネルギー利用率向上の必要性が増している。廃熱から発電できる熱電変換技術の実用化のために高温耐久性と高い安全性を有する酸化物熱電材料を新たに開発し、773~1173 Kで機能する小型コジェネシステムのプロトタイプを民間企業との連携により開発した。熱電発電を利用した小型コジェネシステムの開発ー 新たな酸化物材料が拓く高温廃熱回収システム ー舟橋 良次*、浦田 さおり***産業技術総合研究所 ナノテクノロジー研究部門 〒563-8577 池田市緑丘1-8-31 産総研関西センター **科学技術振興機構 〒332-0012 川口市本町4-1-8 川口センタービル *E-mail:funahashi-r@aist.go.jp全一次供給エネルギー全一次供給エネルギー図1 莫大な廃熱量日本では全一次供給エネルギーの約70 %が廃熱として未利用のまま大気中に捨てられている。(13)−
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