Vol.1 No.2 2008
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研究論文:シームレスな20万分の1日本地質図の作成とウェブ配信(脇田ほか)−91 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)らのデータモデルに従ったデータの整備が必要で、20万分の1日本シームレス地質図にもGeoSciMLを適用し、空間リレーショナルデータベースとしての再構築を目指している(図10)。シームレス地質図を初めとした地質情報の利用に関して、セキュリティが確保された利用の枠組みも今後必要となってくる。それを実現するのが産業技術総合研究所の融合課題であるGEO Grid用語12である(図9)。GEO Gridでは、現在日本国内ばかりではなく、アジア各国と協力して、国際間のデータ共有の検討を開始した。シームレス地質図はその重要なコンテンツの1つとなり、アジア各国の同様な地質図や関連情報は相互利用が可能になる(図9)。資源や環境の問題は国境に依存しないので、日本周辺各国の地質情報は日本の安定した経済活動や安心安全な生活確保にとって重要である。アジア各国で頻発する地震や火山などの災害対応など、地質情報のGEO Grid上での運用は社会の安心安全に貢献する重要な技術の1つとして期待されている。6 まとめ基礎研究としての成果である地質図から最新の地質モデルに基づいた全国均一地質情報コンテンツとしての「シームレス地質図」への情報革新と、その情報をウェブコンテンツとして相互運用するための技術について述べた。シームレス地質図は第1種基礎研究の成果を一般社会への利用を進めた第2種基礎研究の成果とみなすことができる。日本全国を統一したシームレス地質図を20万分の1縮尺で整備し、インターネット上に配信した結果、年間約60万件のアクセス(2006年度実績)があり、社会で広範に利用された。しかし、一般社会への本格的な普及のためには、20万分の1より大縮尺のより精度の高い地質情報整備が必要となってくる。そのため、土木・建設の分野で必要とされる5万分の1シームレス地質図や、個人住宅や工場の立地の判断に必要な2.5万分の1シームレス地質図の作成を開始した。これらの精度の高いコンテンツを、携帯電話・カーナビといった一般ユーザーに利用しやすいツールに対応したきめ細やかな情報サービスへの対応も視野に入れて検討している。地質情報の本格研究の一環として、シームレス地質図の作成とその相互運用技術の研究を通じて、更に国民の安心安全のための情報と技術の整備を推進するつもりである。謝辞本研究を推進するに当たり、地質情報研究部門陸域地質図研究担当者の各位、地質調査情報センターの宮崎純一氏及びJoel C.Bandibas氏には、多くのご協力をいただいた。記して、関係各位に謝意を表したい。用語説明用語1:地向斜モデル: 仮想的な巨大堆積盆地が造山運動によって山地を形成する元になったと考えた地質モデル。1800年代後半から1960年代まで地質学の分野で支配的だった。用語2:付加体モデル:付加体とは海洋プレートの沈み込みに伴って、陸からもたらされる堆積物と海洋底の岩石や堆積物が混合し、陸側に付け加わり形成される地質体のこと。日本の基盤を構成する岩石の基本はこれで成り立っているとする地質モデル。用語3:海底地すべり説:1980年代では、様々な種類の岩石が混在する地質体を形成する過程として海底での地すべりが有力視されていた。用語4:泥ダイアピル説:中米バルバドス島周辺の海底などを説明するための仮説で、付加体中の泥が高間隙水圧によって上昇し、周囲の様々な岩石を混在させたとする。用語5:構造変形説:海洋プレートが島弧や大陸縁辺で沈み込み付加体を形成する際に、陸側と海洋プレートの間で剪断変形が起こり、海洋底の岩石や地層、陸からもたらされた堆積物などが構造的に変形しながら混合するという説。用語6:地理情報システム:Geographical Information System(GIS)。本来は、地図に代表される空間情報を処理するためのコンピュータシステムであるが、空間情報処理のためのソフトウェアを指すことが多い。用語7:ベクタ形式:空間情報をコンピューター内で表現するオブジェクト指向のデータ形式。ポリゴン・ライン・ポイントなどから構成され、それぞれが位置や属性の情報を有する。用語8:アフィン変換:ユークリッド幾何学的な線型変換と平行移動の組み合わせによる図形や形状の移動を行う変換形式。変換によって任意の直線間の平衡性が失われない性質がある。用語9:地球化学図:日本全土において10 kmメッシュで採取した約3000試料に基づいて、試料採取地点に関する流域解析を行ない、53元素の分布を示した図。用語10:GML:XMLでベクタ形式空間情報を記述する国際標準規格(Geography Markup Language)。Open Geospatial Consortium(OGC)が提案している。用語11:WFS及びWMS:ともにOGCが提案したハードウエアやソフトウエアに依存しない空間情報運用仕様で、ベクタ形式にはWeb Feature Service(WFS)を、ラスタ形式にはWeb Map Service(WMS)を用いる。用語12:GEO Grid:地球観測グリッド(Global Earth Observation Grid)の意味で、グリッド技術を用いて、地球観測データや各種の観測・空間情報を融合し、ユーザーの利便性を高めることを目指したシステム。(10)−

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