Vol.1 No.2 2008
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研究論文:シームレスな20万分の1日本地質図の作成とウェブ配信(脇田ほか)−89 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)1地質図幅の販売は、年間に約900枚程度に留まっている。繰り返し利用する印刷図の販売と直接の比較はできないが、3桁の違いは非常に大きいと考えられる。実際、利用層も研究者以外にコンサルタント会社から不動産業界まで幅広い利用が認められる(図7)。4.2 ウェブ配信シームレス地質図は、2003年に産業技術総合研究所の研究情報公開データベースとして、http://riodb02.ibase.aist.go.jp/db084/index.htmlにおいて公開を開始した。オリジナルのデータは地理情報システムを利用してベクタ形式のデータとして構築されたが、初期のウェブ配信は画像形式に変換したデータによって実施した(図8)。その第一の理由は、従来の地質図は紙の印刷物として作成されており、一般社会での利用は見る・調べるための画像による閲覧が主体であったことにある。またベクタ形式のデータを軽快に閲覧するための十分なインフラが整備されていなかったことも理由の1つである。現在ウェブ配信している日本シームレス地質図の画像データは日本全国を20万分の1縮尺でカバーしている。この画像を本来の縮尺で印刷すると、高さ3 m幅7 m程度の大きさとなる。コンピューターの画面上では必要な部分の高精度の画像を拡大表示させる必要があるが、拡大しても閲覧に耐える精度(400 dpi)で画像データを作成すると、ファイルのサイズが4 GBくらいの大きさになってしまう。これを一度にユーザーのコンピューターに配信するのでは重すぎるので、必要な場所に必要なデータのみを瞬時に配信する仕組みが必要である。この仕組みを実現する複数のソフトウエアが既に市販されてはいたが、コスト削減や表示機能の最適化を図るため独自のプログラムJ−GeoViewを開発した。ユーザーは地質図を自由に拡大縮小でき、さらにカーソルを置くと地質の説明が表示される。専門的な説明とともに、専門用語を用いない一般用の説明も併記してあり、誰でも表示された地質図が理解できるように工夫した。5 シームレス地質図の発展と将来の課題5.1 地質情報の高精度化と情報の集積技術への発展シームレス地質図の作成は、地質調査を実施せずに行ってきた。しかし、より精度の高い地質図を全国的に整備するためには、実際に現地調査を行い、新しい地質図を整備しながら、日本全域のシームレス地質図の岩石や断層などの分布の精度や確度を高めていく必要がある。そのためには、20万分の1や5万分の1地質図を作成している研究グループとの協力・連携が欠かせない。産総研の第2期 (2005−2009年度)では、20万分の1地質図の全国整備後に出版済みの地質図を古いものから順次改訂していき、第3期以降に(2010年度から)新しい地質図を作成することにしている。これらの地質図作成計画と連動して、シームレス地質図のコンテンツは、より精度の高いものへと更新されていくことになる。シームレス地質図のベクタ形式のデータは、2006年度に整備されたウェブ配信サービスGeoMapDBによって配信されている。(http://iggis1.muse.aist.go.jp/ja/top.htm)。ベクタ形式の特徴は、オブジェクト指向の概念のもとに地表面を構成する個々の要素を切り分けて、対応するデータを個別に管理する点にある。これにより、拡大・縮小や色・境界線の太さなどの見かけの変更や修正を自由に機械的に行えるようになる。また個々の地質体・断層などに地質年代・層厚・岩相など様々な属性のデータを付与することが可能になる。我々の開発した地質図シームレス化の手法は、まさにこの特徴を生かしたものである。今後シームレス地質図のデータを厳密に規格化し、データ間の構造をも規格化するデータモデルを構築することによって、空間リレーショナルデータベースとしての運用も可能となり、柔軟な検索や分析・描画・シミュレーション・自動制御など、多様な展開を導いていく[12]。図7 日本シームレス地質図の主な利用者の区分(左: 2007年11月分*)とアクセス件数の推移(右: 2002年9月〜2007年11月) * 所属不明は除く430,000420,00070,00060,00050,00040,00030,00010,0002003年2002年2004年2005年2006年2007年(西暦,年)020,000大学・研究機関38%産総研16%土木・環境14%官公庁10%建設6.1%製造3.6%自治体3.2%電気・通信2.9%IT 2.5%資源0.71%マスコミ0.64%住宅・不動産0.16%その他2.2%図8 20万分の1日本シームレス地質図データベースの初期画面(8)−
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