Vol.1 No.2 2008
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研究論文:シームレスな20万分の1日本地質図の作成とウェブ配信(脇田ほか)−88 Synthesiology Vol.1 No.2(2008)しながら地質境界を調整した(図6)。また、最新の地質モデルに基づき、地質区分と地質境界について再検討することも必要とした。隣接した区画の地質図から連続した地質図を作成する手法は、地質図編集として一般的に行われている。地質図編集では、20万分の1地質図を作成する場合に5万分の1縮尺の地質図を使うなど、より大縮尺の地質図に基づいて広域の地質図を作成する場合が通常であり、本研究のように20万分の1縮尺の地質図を用いて、同じ縮尺の連続的な地質図を作成することはこれまで行われたことがない。大縮尺地質図から小縮尺地質図を編集する場合は、コピー機で縮小したり、目測で地質境界を定めたりして描いていく。これは位置精度が低くなることが前提となっているから可能な手法である。20万分の1縮尺の複数のオリジナルな地質図を元に、同縮尺の連続した地質図を作成する場合、位置精度は同等に維持されなければならない。そのために、数値化されたディジタル地質図に地理情報システムを積極的に援用した。統一凡例に属性を置き換えられたディジタル地質図は、隣接する区画において同一の地質区分は同一の属性を有している。しかし、隣接する区画では位置精度が作成年度によって異なるため、単一の地質体の位置がずれて表現されている、あるいは地質区分の解釈が異なる場合がある。このような場合以下の手法で、地質分布の連続化を行った。地質図は調査した範囲で得られた情報に基づいて個別に作成される。ある地質図が作成され、それに隣接した地質図が後年作成された場合、地質情報が飛躍的に増えているため、最初の地質図よりも後から作成された地質図の方が地層や岩石の分布に関してより正確である場合が多い。従って、隣接した区画で地層や岩石の分布の境界線が連続せず、その位置がずれている場合、より新しい地質図の境界線に一致させるように連続化を行った。さらに、5万分の1縮尺の地質図や学術論文などに示されている地質年代や地質区分、そして地質分布などの新しい情報を考慮して、地質境界線のより適切な連続化を行った。また古い地質図はしばしば古い地形基図の上に描かれているため、地理情報システムを用いて新しい地形図の上に重ね合わせると、段丘や扇状地の位置が地形と微妙にずれる場合がある。このような場合には、新しい地形基図に基づいて修正を行った。海岸線にはもっと深刻な場合がある。古い海岸線に沿って描かれた地質図は新しい海岸線に合わせて次のように描き直した。島の海岸線の場合は、基準点を多数設けてアフィン変換用語8によって位置調整を行った。その他は、最新の海岸線に合わせて地質境界の延長や縮小などの位置調整を地理情報システムを用いて実施した。地層や岩石の分布境界ばかりではなく、隣接した地質区画における断層が実在か伏在かなど断層の性質の最新の情報に基づいた変更や再解釈を行った。地層や岩石の境界について断層であるか否かについての判断も、それぞれの地域を担当する専門家の意見や最新の文献などを考慮して行った。4 紙からデジタルへ、CD-ROMからインターネットへ4.1 デジタル地質図の意義地質図は一般に紙面に描かれ、印刷図として出版されてきた。1990年代から地理情報システムの普及により、数値化されたディジタル地質図への要望が社会で高まり、1993年から「電子媒体による出版の手続き」について組織的な検討を行い、1995年にはディジタル地質図がCD−ROMでも出版されるようになった。しかし、シームレス地質図は今のところ紙での印刷もCD−ROMによる出版も行っておらず、シームレス地質図の配信は主にインターネット上で行ってきた。その主な理由は、①データアクセスが容易で、多く利用が望める、②データの更新を頻繁に行うことができる、③印刷物やCD−ROM出版と異なり出版経費をかけず無料ないし安価に情報提供ができるなどである。実際、2002年に公開を開始した日本シームレス地質図はインターネットでのアクセスが2006年度において年間約60万件に達している。一方紙で印刷されている20万分の図6 凡例統一の適用と地質境界の調整オリジナルの地質図隣接地質図を表示新しい地質図古い地質図統一凡例に属性変更地質境界線の調整・連続化境界を新しい地質図に合わせる新しい分布を加えるシームレス地質図古い区分を最新の区分に合わせる図5 異なる統一凡例を用いた場合の地質図の違い。基本版(左)と詳細版(右)。四国地方の例。(7)−

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