Vol.1 No.1 2008
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−72−座談会:新しい形式の論文を執筆してSynthesiology Vol.1 No.1(2008)石井 標準は、オープンにしている部分が多いので、手法のノウハウの出せないものはあまりないです。ただ、査読者とのやりとりの中で、どこのメーカの体温計の性能が良くないという評価データを持っているはずだから、それを入れなさいという要望がありました。データは持っていますが、当時、メーカとの信義のもとに提供してもらって評価したので、それを出すことは非常に難しい。それに、私たちはそういうものをテスティングする機関ではなく、トレーサビリティとか、計量法を実施している機関ですから、商品テスト的なデータを出すことによる影響も非常に懸念されるので、データは出さないということでご了解いただきました。今後の新ジャーナルへ期待すること小林 編集委員会として、特に外部の方、企業の方、大学の方、場合によっては外国からも投稿をいただきたいと思っています。この雑誌に今後期待すること、編集委員会への注文、あるいはこれからの執筆者に対するアドバイスを一言ずつお願いできますか。倉片 私の場合、2人の査読者の意見が食い違って困ったことはなかったのですが、査読者とのやりとりを通して、本格研究なり本ジャーナルなりの将来につながる建設的な討論ができたかとなると、かなり疑問に感じています。それは、査読意見に対して、「おっしゃるとおりです。」といった回答しかできなかった私の力不足が原因かと思いますが(笑)、「これについてはどう考えるのか」といったような議論を喚起するものがあったら、論文の最後に掲載すれば、読者にも楽しんで読んでもらえるのではないでしょうか。津田 例えば、食料として社会に供給することを目指してカニやマグロなど特定の動物種を大量に養殖するといった研究と今回の私達の研究の間には多くの共通点があると思っています。まず1匹の動物を世代交代するまで育てるというミニスケールの基礎的研究が必要で、それをスケールアップ、つまり「量の壁」超えを果たさないと、現実的な価値には繋がりませんよね。特に、生態が良く分かっていないけれど市場価値のある動植物の養殖技術の研究などは、非常に価値のある成果をもたらすにも関わらず、その技術要素自体は科学的な新知見かどうか微妙であり学術論文にはなりにくい、といったことがあるのではないかと思います。そういう人たちにもこのジャーナルを読んで頂いてはどうかと思いました。編集委員への注文としては、執筆者に査読コメントを送る前に、レフェリーの方々の間で意見を一度調整していただけるといいのかなと思います。西井 私は、このジャーナルは産総研にとってメリットがないと意味がないと思うので、外部の人が書いてくださるのはいいと思うのですが、我々にある種の指針を与えてくれる、あるいは我々が指針を出し得る場であってほしいと思います。産総研の考え方を明確にした上で、外部の人にそれに関連する様々な情報を提供して頂ける、そんなジャーナルになってほしいと思います。岸本 今思いついたのですが、レフェリー同士が事前に話し合うというよりも、レフェリー同士のやりとりを載せる、あるいは執筆者と3人というのもおもしろいかなと(笑)。持丸 自分が読んでみたいなと思ったのは、DARPA 主催のUrban Challenge (完全自動制御の無人ロボット車レース)がありまして、勝つと200万ドルもらえるんです。今回、CMUが勝ったらしいんですが、個々の技術はそれぞれ論文が出ていると思うんですが、装甲車で勝つために10万行のプログラムをどうやったのか、ビジョンの技術をどうしたのか、なぜそのトラックを選んだのかという統合がけっこうおもしろくて、プロジェクトリーダーがいるのですが、将来、ああいう人たちが書いてくれるとおもしろいと思います。石井 計量標準の場合産総研以外の方に書いていただくと言う機会はあまりないと思うんですけど、分野の中を見ても、ふだんなかなか外部に発表したり、アピールしたりする機会がないような活動をきちんと書いて、読んでいただいて、産総研全体や外の方にも知っていただけるという石井 順太郎 氏
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