Vol.1 No.1 2008
72/85
−69−座談会:新しい形式の論文を執筆してSynthesiology Vol.1 No.1(2008)石井 一つは、分野外あるいはより広い読者たちに、計量標準分野の仕事はこういうことなんですよ、ということを理解していただけるように書きたいと思っていました。もう一つは、「標準分野の研究と産総研の標榜する本格研究がしっくりしない」と感じる方もいるようなので、私の一つの事例を見ていただいて、計量標準の研究活動が産総研の本格研究にどうはまっていくのか参考になるように書きたいと思いました。外の人が読んで、「とてもおもしろい」「次、読んでみよう」と思っていただけるのか、かなり心配しているのですけど(笑)、その辺は第2号の方に頑張っていただきたいと思っています。解説と新ジャーナルの違いはオリジナリティ小野 この論文形式における「オリジナリティ」とは何かは、難しい問題だと思うのですが、今回の論文は、研究を自ら行った皆さん方自身でなければ書けなかった内容になっていると思いますか。あるいは、他の研究者が皆さんの今までの論文や解説を見て、レビューとして十分書ける内容でしょうか。倉片 既存の解説やレビュー記事と違うオリジナリティがあるとしたら、通常は文面に表れない,研究の過程で「選択しなかったこと」をどれだけ書き込めたか、ということがポイントだと思います。また、執筆の過程で、自分が行ってきた過去10年余りの研究を振り返って、それらの成果を有機的につなぎ合わせる作業が必要でした。すると、当時は漫然と考えていた個々の研究が実はうまくつながっていて、無意識のうちに一つひとつの問題点を解決する作業をしていたことに気づきました。ですので、この論文には、私自身でなければ書けなかった研究過程の内面が含まれていると思っています。津田 この論文では、どうしてそういうことをしようと思ったか、社会とのかかわりを持つに至るまでに、どのように組み合わせて製品という形にするかのシナリオが書ければいいと思いました。オリジナリティについて述べるという点とシナリオを示すという点において、この論文は第三者には書けないように思います。また、実用化を目的としたときにどんな問題が生じたのかも実際にやった者でないとわからない。多くのバイオ分野の基礎研究はミリグラム量でまっとうな研究生活を送っていますから、そういうコンセンサスができているところへ、「ミリグラムという量は、大変に少ないと思いませんか。」という異端の文章を書くこと、そのために私自身のモチベーションを高めることが必要でした。小野 ほんとうにそのとおりだと私も納得してお聞きしますね。いみじくも 「異端」とおっしゃったのですが、ある意味、現在のアカデミアのバイオ研究者と摩擦を引き起こすかもしれないと心配しておりました(笑)。第2種基礎研究に踏み出したものの、パイオニアとして、理解されないかもしれないという不安もあるし、理解してほしいという気持ちも大変強いということですね。大量合成や大量精製は、基礎的なアカデミアから見ると魅力あるテーマではないのですが、あえてそれを掲げ、若い研究者の時間とお金を注ぎ込むのは勇気が要ります。皆さん方も同じようなご経験をお持ちだと思いますね。西井 この論文は、ある目標に向かって走っている途中で、「なぜ走り始めたのか」、「今どこまで行ったのか」、「これからどこに行くのか」を論文とは違った書きぶりをする必要があって、研究が一段落した解説記事とは区別されると思います。研究に関して、オリジナリティがなければ国の予算をもらえないと思いますし、ニーズも明確だと思います。ジャーナルについても、内容的にオリジナリティがなければ書けませんし、私は第三者がとても書けるものではないと自負しています。小野 西井さんの場合も、モールド法とインプリント法が結合できるのかということは、最初はわからないわけですから、冒険ですね。西井 私は関西センターに勤務していますが、旧大阪工業技術試験所は日本のガラス研究のメッカだったし、それ西井 準治 氏
元のページ