Vol.1 No.1 2008
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−68−座談会:新しい形式の論文を執筆してSynthesiology Vol.1 No.1(2008)究者、技術者も想定して書いていただきましたが、同じ専門分野の人が読んで、言い方は悪いのですが、馬鹿にされてはまずいという気だってありますね。倉片 論文を査読してくださったのは、私の研究分野外の方だったと思いますが、本質を突いた的確な意見をいくつも提示してこられました。そのことから考えますと、自分の研究分野以外の人々にも十分理解してもらえる論文が書けたのではないかと思います。一方、先ほども言いましたように、同じ研究分野の人たちに対しては、社会の現場で必要とされている技術をうまく使えるような形にして見せる、実際に役立つ研究の一つの例を見てもらいたかったということもあります。津田 私はバイオ分野の研究者に読んでもらうことを想定しました。ミリグラムでは試薬だけれども、グラム、キログラムになると材料になってバイオ研究の範疇から飛び出し、材料化学や食品、医学の研究者らと結びつくことができる、そこを伝えたいと思って書きました。また、産総研の中の様々な人にも、あまり知られていない研究現場の実情を伝えたいという思いがありました。また、私達の研究が現実的な価値をもつためには、バイオエタノールの例と同じように、安く大量につくることは必要なのだと言うことも伝えたかった。バイオ技術の長所である発熱を伴わない物質生産能力は現代の科学技術のリクエストにかなうものということも大事。それから“バイオと言えばゲノム創薬”といったような特定の先入観をもつ人にも、バイオ研究の裾野の広さをアピールできれば良いと思いました。西井 私は光学素子に着目して、歴史的にどのように変遷してきたかを解説して、そこから専門的な記述に入りました。そういう意味ではうちの家内が理解できるくらいの文章で最初は書き始めました。小野 奥さんが査読者ですね(笑)。西井 いえいえ、査読ではないですが。ただ、内容を詰めていくと、どうしても専門用語が多くなりましたので、途中で抑えました。やさしい解説からやや専門的なところを記述していますので、トップランナー的な専門家にとっては、百も承知のことも書かれていると思います。実は、秋の応用物理学会で、論文に書いた内容を30分間講演したのですが、聴衆の顔色を窺っていると、皆さん、それなりに聞いてくれているなという印象がありましたね。岸本 内容に関しては、正直、内輪向けというか、リスク評価をやっている人に言いたいことを書いたのですが、途中から、自分の専門分野以外の人にアピールする点として、学際的な研究のあり方に重点を置こうと考えました。それぞれの専門分野が定着すると、学際的研究をするときに、お互いに遠慮したり、また専門分野の論理が必ずしも社会ニーズに適切でないときがあります。ですから、一番下流にいるユーザーからそれぞれの専門分野に「こういう研究開発が欲しい」と積極的に言ったり、極端にいうと、自分から乗り込んでいくべきだということを最近強く感じています。これは必ずしもリスク評価ということだけではないのですが、他分野の読者の方にも何らか示唆できることがあれば、と思って書きました。持丸 私の場合は特殊かもしれません、なんといってもわかりやすいですから。細かいことはともかく、何をやろうとしていて、どんないいことがあるのかというのは、だれが読んでもわかるだろうし、専門家が読んでも「この辺が新しい」ということがわかります。私が共著者とディスカッションしたのは、どの分野の人が読むかではなく、どの「層」の人たちがこのジャーナルを読むだろうか、ということです。私が委員会で会うような大学教授たちは、新しい産学連携をつくっていかなければいけないと思っているので興味があるだろうし、企業の人たちは、産総研や大学の人たちがどうやって自分たちのシナリオをつくっていくのかということに興味があるだろう。そこで、大学教授と企業の人たちをターゲットにして、その人たちに、我々がどうやって技術を選んで、組み立てていこうと考えたのか、ということを伝えたいと思いました。 倉片 憲治 氏

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