Vol.1 No.1 2008
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座談会:新しい形式の論文を執筆して−67−Synthesiology Vol.1 No.1(2008)グラム、キログラム以上に量を増やさなければいけません。量を増やすことでバイオ研究はどれだけの広がりを持つのか、たくさんつくることがどのように社会の役に立つのか、ということを説明したいと思いました。でもそれを書くのは難しかった。例えば、不凍蛋白質がアイスクリームに使えるというような実例を詳細に書くことで、「この研究はアイスクリームの研究なのか?」と思いこまれても困るし、冷熱技術への応用を詳細に書くことで「エネルギーの研究である」と決めつけられても困る。かなり応用範囲の広い研究ですので、具体例を示すよりもなるべく技術の動作原理を書くように心がけました。「量の壁」に関する説明も難しかったですが、現在進んでいる技術の検証に関する箇所なども執筆が難しかったです。西井 解説記事と論文の狭間に置かれているような気がしました。また、(専門が近い)研究者以外の第三者が査読されるので、分野以外の人にわかるような言葉にするということにも苦労しました。吉川理事長と懇談する機会がありましたが、そのとき、「大学でできない、企業でもできない、産総研独自でできることは何か。産総研だけではできないが、企業の力を借りればできることは一体何か。」と言われました。私は、現在取り組んでいるNEDOプロの話をしたのですが、産総研だけでNEDOプロを実施することは困難で、企業を集める必要がありました。つまり、集めることによって、何ができるのかということを書いたつもりです。岸本 最初は、専門外の人が読んでもおもしろく書こうと思っていたのですが、書いているうちに、専門分野内の人、もっと言うと同じ研究ユニット内の人に読んでほしいという気にどんどんなってきて、欲張って二兎を追いすぎた感じになったかなと反省しています。化学物質のリスク評価の結果を“製品”ととらえると、製品をつくるプロセスはアメリカを中心に開発され、ほぼ完成しています。そのプロセスをガイドラインに従って行えばリスク評価ができるので、社会のニーズが変わってきてもあまり深く考えずに、単に手順を組み合わせて「リスク評価をした」となりがちです。定着してしまったものを、もう一回崩して、目的に向かって再度組み立てるというプロセスを、初心に返った形でアピールすることを目的にしました。持丸 共著者に、この論文は「あなたが書いている解説ほどおもしろくない」と言われて、喧嘩に近い議論をしながら細かく字句を修正しましたが、残念ながら、おもしろく書き切れなかったところはあるかもしれません。学術的なアーカイブのようになってしまって、ちょっと堅苦しい感じになってしまったような気がします。 優等生的な答えになるかもしれませんが、研究のメタな方法論を、しっかり、おもしろく書きたい、アーカイブしたいというのが一番にあったんですね。そのために、中にある一つのシナリオをどうして選んだのか、それに対してどういうアプリケーションをさらに選んで、技術を組み合わせていったのか、という「考え」「プロセス」を書きました。幅広い異分野に、この研究全体のプロセスの組み上げ方のおもしろさを訴える、というところは難しかったですが、第一弾のアーカイブとしての価値はあると思っています。石井 第1稿を書いて、査読のコメントをいただいて、こういうことを書けばよかったのかとわかった気がしました。また、「読者」のイメージをどこに置くのかなかなか難しくて、「分野を超えて、広くわかっていただけるように」という趣旨は理解したつもりだったのですが、そうはいっても、標準分野とか、その周りにいる人向けになったかなという感じがしています。「計量標準の分野では」ということになりますが、精密度や高精度な技術という出口はふだんからアピールしているのですが、社会や産業に使ってもらえる技術である、というあたりを知っていただく機会があまり今までなかったように思います。計量標準が社会に広まっていくための考え方や取り組みについて、ある程度書けたかなという感じはしています。想定する読者へどのようにアピールするか小野 読者としては、自分の研究分野以外の一般の研津田 栄 氏
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