Vol.1 No.1 2008
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論説:科学と社会あるいは研究機関と学術雑誌(赤松ほか)Synthesiology Vol.1 No.1(2008)−61−はなく、実際には会員の共同出資によって運営されていた、という意味では「民営」制であった。他方、パリの王立科学アカデミーはルイ14世からの助成を得ることに成功して、王室から給料をもらって研究をする施設、すなわち世界最初の国立研究所となった。自然科学における原理を見いだすためには科学的知見や発明の蓄積をする必要があると認識されていたこと、そして、科学的知見や発明の蓄積には、権威主義の場である大学はふさわしくなく、科学的発見は対等であるという平等な立場での知識の蓄積がなされる研究機関という場が、(実際には権威争いがあったにしても)ふさわしいということを強調しておきたい。4 学術ジャーナルの発刊 これらの学会や科学アカデミーは会員のための会報を発行した。それが自然科学研究の成果報告を掲載する学術ジャーナルとなった。現在まで続く最も古いジャーナルは『ロンドン王立協会紀要』(Philosophical Transactions of Royal Society of London, 1665-)である(図2)。これは1662年に設立された王立協会の事務局長のオルデンバームの自主的活動として始まった。 オルデンバームは創刊号のまえがきに、なぜこの科学ジャーナルを発行することに至ったかを記している。序本誌刊行にあたって、科学的な問題に関する研究や研鑽に関わることや、発見されたり他の人間によって実用に供されたりしたことを、広く人々に伝えることほど、科学知識の改善を推し進めるのに必要なことはない。それゆえ、印刷して出版することは、科学にたずさわる人びとを喜ばせる最も相応しい方法となるだろう。研究への取り組みや学問の進歩や有益な発見に関わることに喜びを享受する者は、本誌によって、イギリス王国および世界各国がときおり提供してくれる知識に接する権利をもつことになる。また同種のことがらに関する愛好家や学識者の研究、苦労、試みの進歩についても、あるいは熟練した発見や実演に関しても知ることになるだろう。こうした成果が明確に正しく伝えられたならば、確実で有用な知識への願望はいつまでも絶えることはないだろう。賢明に構想された試みや精巧な行ないはつねに求められ、こうしたことがらに病みつきになったり、精通した者は、(本誌によって新たな情報を得ることによって)刺激を受け、勇気づけられて、さらに新しいことを探求し、実験し、発見することを望むようになり、そうして得た新たな知識を他者に分け与えたいと望むだろう。そして自然に関する知識を改善するという大いなる計画(グランドデザイン)にあたうる限り貢献し、すべての学芸や諸科学を完全なものとすることに役立つことになる。そのすべての企図が神の栄誉を讃え、神の王国の名誉と繁栄、人類の普遍的善につながるだろう雑誌というメディアによって、世界中の科学者や天才達によって得られた科学的知識(発見やアイデア)を集積することで、自然科学の理解を完全にすることができると考えていること、またこれらの科学的知識は国家に貢献し、国家の繁栄に寄与することを述べている。まさに、ベーコンの経験論である多くの事実の集積による共通的本質の理解を図2 ロンドン王立協会紀要創刊号の表紙図1.パリ王立科学アカデミーでの会員活動上の図は会員が王立図書館で研究をしているところで、下の図は実験室で実験をしているところ。図はマクミラン『世界科学史百科図鑑』(原書房)より[14]。

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