Vol.1 No.1 2008
53/85

−50−研究論文:耳式赤外線体温計の表示温度の信頼性向上(石井)Synthesiology Vol.1 No.1(2008)①計量法の検定制度に基づいて試験・検査を行う。(強制法規により国の管理のもとで全数検査を行う計量管理体制)②工業規格によって製造事業者の実用黒体装置に対して温度の国家標準(産総研の高精度の接触式温度計)へのトレーサビリティを規定するとともに、黒体装置の仕様も同時に工業規格によって規定する。(民間製造事業者の自主的な活動に全面的に依存する計量管理体制)③国(産総研)が新たに輝度温度用語7の標準供給サービスを行う一方で、製造事業者の実用黒体装置に対しては工業規格によって産総研の輝度温度標準へのトレーサビリティを規定する(国と民間製造事業者とが分担する計量管理体制)上記のそれぞれの計量管理体制に対して以下の考察と選択を行った。4.1 計量法の検定制度による計量管理体制 計量法では、経済活動やサービス等において特に重要な計測器を特定計量器に指定し、計測器の構造と仕様に対して型式承認試験を実施するとともに、個々の計測器ごとに精度確認検査を実施することを定めている。体温計の場合、既存の水銀体温計や電子体温計はいずれも特定計量器の指定を受けて製造・販売が行われてきた。計量法による計量管理体制では、管理の主体は法を所管している国(経済産業省)であり、計量法で定められたルールに基づいて試験・検査が行われる。市場において販売される体温計はすべて、法に定められた一定水準の仕様と精度を持つことが国によって担保され、製品に関する技術的知見を持たない消費者やユーザでも、一定の品質の計測器を入手・利用することができると期待される。 計量法に基づく計量管理を実施する場合、校正・試験の方法や設備についても、計量法の下で詳細に規則・基準が定められることになる。このことは、校正・試験の公平性・公開性という点からは極めて重要であるが、反面において、計量管理における製造事業者の技術的主体性は相対的に低下するとともに、新たな技術開発による製品の性能(精度)向上や新製品開発などの阻害要因となるリスクも内在する。言い換えると、計量法に基づく管理は、校正・試験の方法や設備が広く共通化され、製品技術としての成熟度も高い場合に有効であるといえる。 新型体温計調査研究委員会やその後2000年に設置された標準化(JIS規格)委員会等において、耳式体温計を特定計量器に指定することの適否について検討を行った。その結果、新型の耳式体温計については、(1)製造事業者の間において校正・試験の方法や設備の共通化が十分に進んでいない、(2)製品技術が引き続き開発段階であり、早期の法規制の導入は製品技術を固定化する危険性が高い、等の理由により、計量法による規制の導入は将来の検討事項と結論された。4.2 工業規格による計量管理体制 計量法による強制的な計量管理とは対極にある方式として、技術基準(工業標準文書)による製造事業者の自主的な活動に基づいた計量管理体制が考えられる。実用黒体装置の構成と仕様をJIS規格等の工業規格によって規定し、その管理方法を含めて技術を共有することにより、良質な実用黒体装置の製作が可能となる。併せて、国家標図3 耳式体温計のトレーサビリティと計量管理体制国の管理による検定選択②選択③選択①任意規格による製造事業者の活動任意規格による製造事業者の活動国による標準供給国による標準供給不確かさのレベル±0.2 ℃±0.001 ℃±0.01 ℃±0.04 ℃±0.07 ℃耳式体温計(実用黒体装置)耳式体温計用の黒体放射源標準の黒体放射源(標準の黒体装置)高精度の接触式温度計(白金抵抗温度計など)温度の国家標準(温度定点など)

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です