Vol.1 No.1 2008
49/85

研究論文:個別適合メガネフレームの設計・販売支援技術(持丸ほか)Synthesiology Vol.1 No.1(2008)−46−設定していますが、グループ分けの考え方を具体的に説明するとどのようになるのでしょうか。また、38名の被験者が2次元分布上にどこに配置される被験者なのか、また平均形状と被験者の差異がどの程度なのか、などの評価実験の妥当性の検証は行っていますか。回答(持丸 正明)(1) 「効率よくカバーする」についてそもそもガウス分布状になっている個人差をいくつかの類型で対応しようと言うところに無理があります。理論的には類型が多ければ多いほど、個別のフィット性は向上するわけで最適値は存在しません。そこで、本研究では「製造・流通の採算性から想定される最大限のサイズバリエーション」を企業側に検討いただき、「4サイズ」という結論が導かれました。次は4サイズという制約の中で、いかに個人差の分布をカバーするかという課題です。ここでは、バリエーションがもっとも大きな第1軸を3つに、さらに、その中間について第2軸方向に2つに分けることで、2次元分布図をカバーするようにグルーピングしました。図5を見ていただくと、AとDの範囲が大きく、BとCが小さくなっています。これはサイズごとの出荷量に極端なばらつきが出ないようにするためで、それぞれのグループを構成する人数がほぼ同数になるようにグルーピングしています。この考え方については、引用文献[4]に記載されていますが、本文中にも一部記載しました。(2) 評価実験について38名の被験者は2次元分布図のサイズグループにできるだけ均等に配置するように選定しました。38名については3次元形状を計測していないため、サイズグループを代表する平均形状との形状差は分かりませんが、寸法レベルでは±3[mm]程度の差異に収まっています。これらについては参考文献中に記載されていますが、本文中にも追記しました。議論3 頭部形状の計測項目について質問(赤松 幹之)3.3節の1行目に、「頭顔部寸法15箇所計測することで」という記述がありますが、どのようなプロセスを経て、これを決定したのでしょうか。回答(持丸 正明)詳細は原著論文に記載されていますが、頭部の寸法項目50項目程度を被験者すべてについて実測し、ステップワイズの重回帰分析によって項目を減らしました。ただし、機械的に15に減らしたわけではなく、実際には計測しやすい項目を選ぶことを繰り返し、最終的に15項目に絞り込んでいます。スペースの都合から本論文では詳細な説明を省きました。ちなみに、当初はこの15項目を店頭で計測することで、3次元顔形状を計測しなくともメガネが選べるというシナリオでした(引用原著論文にその旨記載)。しかし、店舗の反対にあい、断念しました。やはり、顔の寸法をノギスで接触計測するというのは無理がありました。そこで、低価格の3次元計測技術開発を行うことにしました。議論4 今後の展開コメント(赤松 幹之)「評価と展望」の中の評価の部分に、良い面ばかりでなく、やり残した部分、研究者自身として不満足な部分、また技術的にまだブレークスルーできていないところなどを書いていただきたく思います。回答(持丸 正明)ご指摘の通り、研究として不十分なところ、シナリオとして未完成なところがあります。研究としては、感性評価の顔モデルにおける髪型の問題が大きいです。髪型によって印象がかなり変わることは予備実験で分かっていたのですが、自然に髪型を変更するすぐれたCG技術がなかったことなどもあり、今回は見送っています。また、サイズバリエーション設計技術においても、全体的な大きさと形状の話だけでなく、鼻パッドや耳当て(モダン)の曲率設計、それらが顔と当たったときの圧力分布や触感覚を推定する有限要素モデルなどもやり残した仕事です。シナリオ全体として未完成であるところは、この推奨システムを運用しながら蓄積される商品選択履歴データと商品満足度データの効果的な活用技術です。これがなければ、単なる販売支援システムに過ぎず、形状や感性データを持続的に蓄積しながら、サイズ設計や感性推奨技術をアップデートしていくサイクルが形成できません。これらについては、本研究で述べたようなシステムが実社会で実用化された後に、フィールドデータを使って研究していくつもりです。議論5 研究成果の応用範囲について質問(赤松 幹之)同様な適合化システムは、メガネ以外にも、靴や衣服などにも適用可能と思われますが、本質的に共通の手法で良いのか、それともメガネに特徴的な面があるのでしょうか。回答(持丸 正明)人体形状を計測し、あらかじめサイズバリエーション設計された製品群の中から適切なサイズを選ぶという手段は汎用性が高いと考えています。すでにスポーツシューズに適用され、実用化されています。ただし、衣服となると、3次元形状計測するために店舗で脱衣しなければならないという技術的障壁が大きく、あまり普及が進んでいません。衣服に普及させるためには、着衣のまま体形を計測する技術開発か、あるいは、店舗ではない場所で体形を測るビジネス連携が必要になると考えています。一方で感性の側面は、メガネやスポーツシューズではスタイルデザインとフィッティングの独立性が高い(テクスチャや飾りのようなスタイルデザインが多い)ですが、ファッションシューズや衣服では両者の関係が密接であり(カッティングやドレープなどフィッティングに影響するスタイルデザインが多い)、本研究のように体形の適合性と、感性の適合性を独立にモデル化して推奨する技術では対応しきれないと思われます。後者のような事例で、ファッション性(感性)とサイズ適合性を両立させるのは、将来的な課題です。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です