Vol.1 No.1 2008
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Synthesiology Vol.1 No.1(2008)−45−研究論文:個別適合メガネフレームの設計・販売支援技術(持丸ほか)べたように、従来、人体形状の個人差に関する情報は専用の装置や技量を備えた公的機関が、拠点集中型で横断的にデータを収集し、それを外部に提供するかたちで整備されてきた。1992年から94年にかけて、(社)人間生活工学研究センターが実施した34,000人の人体計測や、2004年から06年にかけて、やはり(社)人間生活工学研究センターが実施した8,000人の人体寸法・形状計測事業などがその好例である。世界的に見ても、欧米人4,000人を計測したCAESARプロジェクトなど集中型・横断的なデータ収集が一般的である。これに対して、われわれが目標とするシステムは、ユーザの人体形状データを複数の店舗分散型で縦断的(同一ユーザの時系列変化を追跡する)に蓄積できる可能性を秘めている。人体形状データベースという社会の知的基盤整備を、税金に駆動された集中型・横断的計測から、ビジネスに駆動された分散型・縦断的計測に切り替えていく足掛かりになりうると期待している。蓄積された多数の人体形状データは、個人情報を持たない統計データとして、3.2節のサイズバリエーション設計に、3.3節の形状計測に、そして、ユーザの購買履歴と形状データの相関統計データが再び3.4節の感性モデルに再活用されることになる。今後は、企業とともに、オンラインのシステム統合、ユーザインタフェース開発、持続的・縦断的に蓄積されるデータベース管理システムの開発に関わり、実店舗でのシステム運用を目指したい。キーワード人間計測、感性工学、サービス工学参考文献[1]M.Kouchi, M.Mochimaru, H.Nogawa and S.Ujihashi: Morphological fit of running shoes, Perception and Physical Measurements, the 7th Symposium on Footwear Biomechanics, 38-39(2005).[2]持丸正明, 河内まき子: 人体を測る-寸法・形状・運動, 東京電機大学出版局, 東京 (2006)[3]持丸正明, 河内まき子, 大矢高司: 人体形状の高速・隠れなし計測装置の開発, 第19回センシングフォーラム, 47-52(2002).[4]M.Kouchi and M.Mochimaru: Analysis of 3D face forms for proper sizing and CAD of spectacle frames, Ergonomics, 47-14, 1499-1516(2004).[5]伊藤洋輔, 斎藤英雄, 持丸正明: 単眼カメラ画像列からの解剖学的顔形状データベースを用いた顔形状復元, MIRU2006 画像の認識・理解シンポジウム, 764-769(2006).[6]M.Mochimaru and M.Kouchi: A KANSEI model to estimate the impression ratings of spectacle frames on various faces, SAE Digital Human Modeling for Design and Engineering Symposium 2005, 2005-01-2693(2005).[7]田中久美子, 河内まき子, 持丸正明: メガネフレームのスタイル適合性の感性モデル, 第8回日本感性工学会大会, 東京(2006).[8]向田茂, 蒲池みゆき, 尾田政臣, 加藤隆, 吉川左紀子, 赤松茂, 千原國宏: 操作性を考慮した顔画像合成システム:FUTON - 顔認知研究のツールとしての評価 -, 電子情報通信学会論文誌, J85-A-10, 1126-1137(2002).(受付日2007.10.2,改訂受理日2007.11.30)執筆者略歴持丸 正明(もちまる まさあき)1993年、慶應義塾大学大学院博士課程修了。同年、博士(工学)。同年、工業技術院生命工学工業技術研究所入所。組織改編により、2001年、産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究ラボ、副ラボ長。2003年より、デジタルヒューマン研究センター副センター長(現職)。人体形状・運動計測とモデル化、その産業応用に関する研究に従事。市村学術賞、産総研理事長賞など受賞。著書に「人体を測る―寸法・形状・運動」。河内 まき子(こうち まきこ)1979年、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。同年、東京大学助手。1982年、理学博士。1987年、工業技術院製品科学研究所・主任研究官。改組により、1993年より、生命工学工業技術研究所。2001年より、産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究ラボ。2007年、上席研究員。人体形態計測とモデル化、その産業応用研究に従事。ISB Footwear Biomechanics Basic Research Awardなど受賞。査読者との議論議論1 研究の位置づけ質問(赤松 幹之)個別適合の方法としてPopulation Grouping 、Adjustable Productと Finding Well-fitting Product、Mass Customization とTraditional Customization を適合方法として並べてありますが、Finding Well-fitting ProductはPopulation Groupingの適合度を高めるための方法であって、Adjustable ProductとMass Customizationの間に位置する方法ではないのではないでしょうか。むしろ、Population Grouping 、 Adjustable Productのいずれもがユーザの主観的判断にゆだねられているために、真の適合に至らない欠点を補うための支援的な方法とみなすのが良いのではないでしょうか。また、この手法はMass Customizationの基盤ともなるといえるのではないでしょうか。回答(持丸 正明)有益なコメントをありがとうございました。まさしく、御指摘の通りであり、原文ではFinding Well-fitting Productが、Population Grouping 、Adjustable Productと並ぶ手段として書かれていましたが、実際には、Population Grouping 、Adjustable Productの欠点を補うための支援方法を含めた手段と言うべきです。そこで、原稿を修正し、Population Grouping 、Adjustable Productを紹介した後、筆者らの研究例を例に選択をユーザに委ねるだけでは十分な適合性能を発揮できないことを述べ、それを補うためにFinding Well-fitting Productというサービスを付加する手段があるという展開に変更いたしました。また、コメントの後段は、「Finding Well-fitting Productを続けることで、ユーザ特性と製品特性の適合に関するエビデンスデータが蓄積され、それ自体がMass Customizationの基盤ともなる」という意味かと思います。これも、まさしくその通りであり、御指摘の通り、投稿時原稿で十分に述べられていない部分でありました。本論文の「研究シナリオ」と「評価と展望」の箇所において述べることとしました。議論2 グループ設定と評価実験の妥当性質問(赤松 幹之)顔形状分布の第1軸と第2軸の空間の配置から、4つのグループを
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