Vol.1 No.1 2008
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研究論文:個別適合メガネフレームの設計・販売支援技術(持丸ほか)Synthesiology Vol.1 No.1(2008)−42−部の解剖学的特徴点の触察など専門的な技量が必要であり、実際の店頭での運用には問題があった。また、頭顔部寸法データのみではユーザ個人の3次元形状復元が難しく、図2のようなコンピュータグラフィクス表示などにも利用できない。また、3.1節で使用した頭顔部形状計測装置は大型かつ高額で店頭での利用には適さなかった。そこで、本研究では従来の形状計測技術とは発想を異にする、新しい人体形状計測技術の開発を試みた。3.1節で述べたとおり、人体形状を相同モデル表現して主成分分析することで、人体形状の個人差を低次元空間で表現できるようになる。これは、個人の頭顔部形状特性を記述するのに、数十万点から数百万点の座標値情報は必ずしも必要ではなく、数十個の主成分得点があればよいことを意味する。そこで、相同モデルから得られた頭顔部平均形状を初期値とし、個人差を記述するための主成分得点を未知数として、主成分得点によって合成された3次元頭顔部形状と多視点から撮影した画像の画像特徴とのずれを評価し、両者の誤差が小さくなるように主成分得点を最適化する技術を開発した。あらかじめ光学校正された多視点のカメラで顔画像を撮影すれば、その顔画像と整合する3次元頭顔部相同モデルが生成できることになる。具体的には、3.1節の式1のA(n)を未知数として頭顔部3次元形状を合成し、これを多視点カメラの画像平面に投影し、多視点カメラ画像から得られる形状特徴(輪郭エッジ、顔パーツエッジ)と投影した頭顔部3次元形状の形状特徴の一致度を評価した。この形状特徴の差を最小化するような主成分得点A(n)を最適化計算することで、多視点カメラ画像にもっともフィットする頭顔部3次元形状を得た(図7)。3.1節で述べた頭顔部形状計測装置を用いて計測した頭部ダミーを、多視点カメラによる計測結果と比較した結果、誤差は平均で2 mm程度であった。この技術は、正しくは形状計測技術ではなく、相同モデルデータベースに基づく多視点カメラ画像からの人体形状復元技術である。結果的には多視点カメラ画像から2[mm]の精度で頭顔部形状相同モデルを取得していることになり、形状計測技術と同様の機能を持つ。カメラと光源との三角測量を行っているわけではないため計測対象にパターン光を投光する必要がなく、複数台のカメラを設置し、同時にシャッターを切ることで瞬時に計測を完了できる。得られるデータはすでに相同モデルであり、すぐにそこからサイズ適合のための情報を得ることができる。また、計測対象の一部がカメラの死角になったとしても形状データが欠落することはない。3.4 感性モデルによる印象推定[6、7]3.2節で構成したメガネフレームを、3.3節で開発した計測技術を用いて取得したユーザ個人の頭顔部形状に応じて提供することでサイズ適合を実現できる。ここではさらに、顔のかたちとメガネフレームのかたちの組合せが与える印象を評価するための感性モデルの要素技術開発について述べる。メガネをかけた顔が与える印象の表現には、言葉を用いることとした。事前アンケートで抽出した42個の感性用語に関する予備実験の結果を因子分析し、印象を表現する対語4組「優しい−こわい」「涼しい−暑苦しい」「明るい−暗い」「若い−老けた」を抽出した。これに、共同研究企業が独自に実施したマーケット分析結果から得た「おしゃれな−ダサい」「自然な−不自然な」「おおらかな−神経質な」の3つの対語組を加えた計7組を用いた。これらの感性用語の印象得点が、顔形状とメガネ形状の関数としてモデル化できるという仮説にしたがい、異なる顔に異なるメガネをかけた画像に対する印象得点を実験から取得し、そのデータに基づいて上記関数を同定した。被評価者となる青年男性の顔画像には、頭顔部相同モデルデータベースから日本人の顔の個人差をカバーするように合成した仮想顔画像を用いた。3.2節で用いた多次元尺度法の4次元各軸上で±3標準偏差の布置、および、その中間布置に位置する頭顔部相同モデル形状を合成し、これを前額面に投影して18個の2次元顔モデルを得た。3.1節で述べた頭顔部相同モデルには、印象に大きな影響を与える眉や口唇が含まれていなかったため、頂点色情報を有する特定個人の頭顔部3次元形状オリジナルデータを頭顔部相同モデルに一致するように変形させ、前額面に投影して2次元正面画像を構成した。この正面画像の色情報を参考として、頭顔部相同モデルを前額面に投影した2次元モデルに、眉や口唇を加えた2次元正面顔モデル(図8)を構成し、これに別途入手した青年男性の平均テクスチャ[8]をマッピングして、18個の仮想正面顔画像を用意した。メガネは素材・形状で分類した12個を用いた。また評価者図7 多視点カメラ画像からの頭顔部形状復元
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