Vol.1 No.1 2008
44/85

Synthesiology Vol.1 No.1(2008)−41−研究論文:個別適合メガネフレームの設計・販売支援技術(持丸ほか)3.2サイズバリエーション設計[4]メガネフレームにもサイズバリエーションが存在する。ただし、従来のサイズバリエーションはメガネの玉(レンズ)の幅とつる(テンプル)の長さが比例的に変化するという単純なもので、実際のユーザ層の顔サイズバリエーションに適合していなかった。そこで、図4の頭顔部相同モデルのうち、メガネフレームが適合する中顔部211頂点からなる中顔部相同モデル(図4)を用いて、個人差を効率的にカバーするサイズバリエーション設計を行った。個人差を効率的にカバーするためには、3.1節で述べたように主成分分析を用いて個人差を固有ベクトル空間に圧縮する方法がある。ただし、主成分分析法は線形空間への圧縮であるため、圧縮効率は必ずしも高くない。そこで、ここでは非線形な圧縮を可能とする多次元尺度法を利用した。個人間の形状の違いを表すために、i番目の個人の相同モデルとj番目の個人の相同モデルとの対応する頂点間の距離の総和として形態間距離Dijを式2のように定義した。Dij = |Ti - Tj| (式2)ここで、(Ti,Tj)はそれぞれi番目の個人の頂点ベクトル、j番目の個人の頂点ベクトルを意味する。m人のデータがある場合、mC2個の形態間距離Dijが計算され、m×mの頂点ベクトル間距離行列が得られる。この距離行列を多次元尺度法で分析すれば、距離関係を再現する多次元空間における布置Qmが得られる。中顔部相同モデルの場合、多次元尺度法であれば5次元解で95 %を越える説明率が得られる。主成分分析で同等の説明率を得るには15成分以図4 中顔部相同モデル図5 日本人男性の中顔部形状分布図図6 試作した適合メガネフレーム上が必要であることと対比すると、多次元尺度法の圧縮率が高いことが分かる。多次元尺度法で計算した5次元解のうち、第1、第2次元の散布図を図5に示す。第1軸を頭部寸法の重回帰式で定式化した結果、第1軸は顔の前後方向の長さと顔面の彫りの深さの特徴を示していることがわかった。同様に、第2軸は顔の左右幅と顔面のうつむき方向の傾斜特徴を示している。この2軸で日本人の顔形状特徴の83 %を説明できる。なお、第3軸は鼻形状、第4軸は瞳孔間距離と顔の幅の関係を示しており、メガネフレームの適合性とは強く関係しない。生産・流通の採算性から男性のみで4つのサイズバリエーションを用意することと決め、日本人の顔形状分布を効率よくカバーするように、個人差の最も大きい第1軸を3分割、そのうち人数の多い中央のグループを第2軸に分割することで図5中に示した4つのサイズグループを設定した。それぞれのグループを代表する平均形状を計算し、そのデジタル顔形状データに基づいて適合フレームを設計、試作した(図6)。試作フレームの有効性を検証するために、顔形状データベースの被験者とは異なる男性被験者38名(平均年齢24.5歳)の被験者について、15箇所の頭顔部寸法に基づく重回帰式から分布図上の布置を推定してサイズグループを決定し、そのサイズグループに適合するフレームと既存フレームをかけさせる評価実験を行った[4]。38名の被験者は4つのグループにほぼ均等に散らばるように選定した。該当するグループの平均形状と個人の主要寸法の差は±3 mm以下であった。実験では、左右からの圧迫力計測、顔を振ったときのメガネと顔の相対ずれ量計測、主観評価を実施した。この結果、試作した適合フレームは既存フレームに比べて高いフィット感を与えることが分かった(p<0.01)。また、適合フレームは既存フレームより左右の圧迫力が小さく(p<0.01)、圧迫力が低くても相対ずれ量には差がみられないことが確かめられた。このことから、ユーザ個人が4つのサイズグループのどこに近いかを判別することで「左右からの締めつけ力が小さくとも相対ずれが起きず、フィット感が良好な」フレームを提供できることが分かった。3.3 多視点カメラ画像からの頭顔部3次元形状復元[5]ユーザ個人の頭顔部寸法15箇所計測することで、上記の重回帰式によりユーザ個人が形状分布図のどこに位置するかを知り、適切なサイズのフレームを提供できることが分かった。しかしながら、この頭顔部寸法の計測には頭顔

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です