Vol.1 No.1 2008
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研究論文:個別適合メガネフレームの設計・販売支援技術(持丸ほか)Synthesiology Vol.1 No.1(2008)−40−門の技量を持つオペレータが被験者の体表面を触察してマーキングした点である。人体形状計測装置では、このマーキングした点の座標値を別途取得できるようになっているものが多い。このようにして得られた人体形状データのうち、個人間で座標点の対応がついているのは解剖学的特徴点のみであり、体表面データ点座標は個人ごとにデータ点数が異なっている。それゆえ、形状データの個人間比較は容易ではなく、平均化などの統計処理も難しい。そこで、すべての個人の人体形状を解剖学的に対応付けられた同一点数、同一位相幾何構造の多面体(ポリゴン)で表現する方法を提案した。これを人体相同モデルと呼ぶ。人体相同モデルではk個の座標列で形状を表現できるため、k×3の要素を持つ頂点ベクトルTで1つの個人形状が記述される。m人分の人体相同モデルデータがあれば、平均頂点ベクトルTは容易に計算できる。また、頂点ベクトル(T1〜Tm)で構成される行列M=[T1,T2,...,Tm]Tを主成分分析すれば、固有ベクトルPが取得できる。m人のデータは固有ベクトル空間上の主成分得点A1〜Amとして表現できる。主成分得点Aの上位n成分で、十分な説明率が得られたとすると、これは、m人の人体形状の個人差が、n次元の固有ベクトル空間に圧縮して表現されたことになる。このような個人差の圧縮は、製品のサイズ適合を考える場合にはサイズバリエーションの効率化として有効な手段となるだけでなく、固有ベクトルと主成分得点を用いて任意の人体相同モデルを復元することも可能となる。P(n)、 A(n)をそれぞれ固有ベクトルP、主成分得点Aの上位n成分とすると、人体相同モデルは で計算できることになる。頭顔部の形状計測については、レーザ光やパターン光投影を用いる市販製品がある。しかしながら、市販製品には、耳の後ろの形状が計測できない、解剖学的特徴点が取得できない、相同モデルが自動的に構成されないなどの技術的課題があった。筆者らはこれを解決するために、可視光を投影し、12台のカメラによって死角を低減して耳裏形状まで計測できる頭顔部形状計測装置を独自開発した[3]。この頭顔部形状計測装置を用い、52名の日本人男性(20歳代)の頭顔部形状を計測した。得られたデータは約百万点のデータ点座標値と、データ点のカラー情報、および、約80点の解剖学的特徴点座標値で構成される(図3(a))。ここでは、これらのデータに基づき、458頂点、838ポリゴンからなる多面体で外耳形状を含まない頭顔部全体形状を表現した(図3(b))。これを頭顔部相同モデルと呼ぶ。る技術(サイズ適合)が必要となる。図2ではさらに、自分のメガネをかけたまま、違うメガネをかけた自分を見る仮想着装とユーザ自身の顔形状とメガネフレームの組合せが第三者に与える印象を提示することで、ユーザの感性に適合するフレーム選択を支援する技術も付加している。このようなスタイル推奨(感性適合)は、Traditional Customizationにおいてノウハウとして付加されていたものである。ここでは、これを形式知化して実現する。本研究では、簡易計測、サイズ適合、感性適合の3つの要素技術を頭顔部形状データベースを基盤として開発するとともに、図2の右側のシステム運用サイクルを通じて基盤データベースが持続的に拡充していくシナリオを考えた。本論文では、基盤となる頭顔部形状データベースと、サイズ適合、簡易計測、感性適合の3つの要素技術開発について述べ、それらの要素技術の連携、産業的有効性について検討し、今後を展望する。3 技術要素3.1 頭顔部相同モデルとデータベース本研究で用いられる技術要素は、頭顔部相同モデルとそのデータベースを共通技術基盤とする。ここでは、まず、人体形状の計測と相同モデルに関する一般的な考え方を述べ、その後、頭顔部形状計測技術と頭顔部相同モデルについて述べる。人体形状計測技術としては、体表面にレーザ光や可視光によるパターンを投影し、その反射光を投射方向と異なる方向のカメラで撮影して三角測量の原理で反射点の3次元位置を計算する方法が一般的である[2]。このような計測技術によって得られるデータは、人体表面上の大量の(通常は数十万点から数百万点の)座標値と、数十点の解剖学的特徴点座標値である。解剖学的特徴点は、個人間を対応付ける生物学的な特徴点であり、形状計測に先立って専図3 頭顔部形状データと相同モデル―T = T + P(n)×A(n) (式1)―
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