Vol.1 No.1 2008
32/85

−29−研究論文:高機能光学素子の低コスト製造(西井)Synthesiology Vol.1 No.1(2008)タイムリーに問題解決に取り組まなければならない状況が出てきた。ここで特に重要なのは第2種基礎研究をミッションの1つとする産総研の役割である。ニーズに直結した研究課題を設定し、企業および大学に潜在する技術を融合させることによって、研究成果を的確に提示できるポテンシャルを持ち続けなければならない。さらに、本研究事例のように、様々な材料や先端的インフラを集中的に管理・運営し続けなければならない。謝辞本研究のガラスモールドに関する研究は、革新的部材産業創出プログラム「次世代光波制御材料・素子化技術」の一環として新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託を受けて、松下電器産業株式会社、コニカミノルタオプト株式会社、日本山村硝子株式会社、五鈴精工硝子株式会社、大阪府立大学、京都工芸繊維大学、愛媛大学と共同で行われたものである。キーワード光学素子、周期構造、インプリント、ガラス、微細加工参考文献(受付日2007.9.19,改訂受理日2007.11.20)執筆者略歴西井 準治(にしい じゅんじ)昭和57年、東京都立大学大学院工学研究科修士課程を修了後、同年、日本板硝子株式会社に入社。在職中に基盤技術研究促進センターが実施するプロジェクトに出向し、その間の仕事をまとめて、平成2年に工学博士号取得。平成5年、工業技術院大阪工業技術試験所に入所し、平成11年からガラス構造研究室長。平成14年から、神戸大学連携大学院自然科学研究科教授を併任。平成18年からNEDO次世代光波制御材料・素子化技術プロジェクトリーダー。また、平成19年から大阪府立大学大学院工学研究科客員教授を併任。査読者との議論議論1 技術の統合の展開方法コメント・質問(小林 直人)本研究論文は、「モールド技術」と「ナノインプリント技術」を統合して、従来にない高い性能の光学素子を実用に供するためのブレークスルーを行ったと言う意味で、極めて価値の高い内容であると考えられます。この統合の実現こそ第2種基礎研究の本質を表しているといえます。本研究例のように、従来統合が困難と考えられていた技術を組み合わせて、今までにない技術を創造したと言う経験を活かし、そのような新たな価値を実現するために、今後他の研究分野も含めて研究や技術の展開をどのように考えていけばよいか意見をお聞かせください。回答(西井 準治)学術分野で盛んに取り組まれた「共鳴・サブ波長素子」が、大きな産業にならない理由は、「製造規模」と「コスト」に問題があることは明らかであり、そこをどのように解決するするのか、そのシナリオが重要と考え、本研究への取り組みを開始しました。そこでは、「本格研究」というミッションを掲げている産総研の役割をどのように考えるかが重要だったと思います。研究成果は、国民の生活に直接的に反映されるか、あるいは民間企業を介した製品として間接的に反映されると思いますが、ここで重要なのは、本格研究の課題設定とその後のシナリオであり、国が提示する施策と整合しているか、あるいは、逆に国が進むべき方向を提示するものであるべきだと考えています。つまり、本格研究の課題設定は、ひらめきや思いつき、あるいは思いこみによることなく、政策やニーズとの整合性を考慮に入れて決められることが望ましいと思います。他の技術と同様に、今後の光技術においても省エネに向けた研究開発が必須だと思います。ここで紹介しました研究事例は、多くの光学機器における「光の有効利用」に関わる基盤になると考えています。議論2 共鳴・サブ波長光学の研究の発端質問(小林 直人)今回の新技術の中心的課題である「共鳴・サブ波長」と呼ばれる分野は、1990年前後に研究が開始されたとのことですが、なぜその頃開始されたのか(逆に言うと、なぜそれまで余り注目されなかったのか)、を教えて頂けませんか。回答 (西井 準治)光の干渉や偏光、回折に関連する研究者であれば「共鳴・サブ波長」の領域の光学素子の重要性に気づいていたに違いありません。しかしながら、それを設計する手段、作る手段が存在しなかったため、1900年代後半まで、研究の対象として取り上げることができなかったのだと[1] [2][3][4][5][6][7][8][9][10]菊田久雄, 岩田耕一:波長より細かな格子構造による光制御, 光学、27, 12-17 (1998).S.Y.Chou, P.R.Krauss and P.J.Renstrom: Imprint of sub-25 nm vias and trenches in polymers, Appl. Phys. Lett., 67, 3114-3116 (1995).S.Y.Chou, P.R.Krauss, W.L.Guo and L.Zhuang: Sub-10 nm imprint lithography and applications, J. Vac. Sci. Technol., B 15, 2897-2904 (1997).T.Yoshikawa, T.Konichi, M.Nakajima, H.Kikuta, H.Kawata and Y.Hirai: Fabrication of 1/4 wave plate by nanocasting lithography, J. Vac. Sci. Technol. B 23, 2939-2943 (2005).宮越博史,森川雅弘,増田修,今榮真紀子,山田基弘,吉田和三: ナノインプリントを利用したサブ波長構造広帯域波長板の作製, Optics Japan 2005 予稿集、24pD5、東京 (2005).T.Mori, K.Hasegawa, T.Hatano, H.Kasa, K.Kintaka and J.Nishii: Fabrication of sub-wavelength periodic structures upon high-refractive-index glasses by precision glass molding, Proc. of 13th Micro Optics Conference, B2, Takamatsu, Japan (2007).S.J.Wilson and M.C.Hutley: The optical properties of ‘moth eye’ antireflection surfaces, Optica Acta, 29, 993-1009 (1982).H.Toyota, K.Takahara, M.Okano, T.Yotsuya and H.Kikuta: Fabrication of microcone array for antireflection structured surface using metal dotted pattern, Jpn. J. Appl. Phys. 40, L747-749 (2001).J.Nishii, K.Kintaka, Y.Kawamoto, A.Mizutani and H.Kikuta: Two dimensional antireflection microstructure on silica glass, J. Ceram. Soc. Japan, 111, 24-27 (2003).梅谷誠,山田和宏,田村隆正,田中康弘,西井準治: ガラス表面に反射防止構造を形成する成型プロセスの開発, 精密工学会2007年度秋季大会学術講演会予稿集、L33, 旭川 (2007).

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です