Vol.1 No.1 2008
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−24−Synthesiology Vol.1 No.1(2008)研究論文高機能光学素子の低コスト製造へのチャレンジ− ガラスインプリント法によるサブ波長周期構造の実現 −西井 準治 光の波長以下の周期構造からなる「サブ波長光学素子」において、製造コスト等の実用化を阻害してきた要因を、日本が得意とするガラスモールド法と、新たな成型プロセスとして知られるインプリント法との融合によって解決することを試みた。材料メーカー、家電メーカー、大学、産総研が役割分担を明確にして垂直的に連携することにより、波長板機能、反射防止機能などをガラス表面に形成することに成功した。産業技術総合研究所 光技術研究部門 〒563-8577 池田市緑丘1丁目8-31 産総研関西センター E-mail:junji.nishii@aist.go.jp1 はじめに高度情報化社会の構築に貢献したのは、半導体技術と光技術である。数百年の長い歴史をもつ光技術には、今なお、多くの期待が寄せられている。その理由は2つある。1つは情報媒体としての容量が極めて大きく、伝達速度が速いこと。もう1つは、人間が80 %以上の情報を視覚から取り入れていることである。光通信ネットワークの普及によって飛躍的に向上した情報の送受信環境をプラットホームとして、それを追うようにディスプレイ、ストレージ、撮像機器など、様々なハードウエアに関わる技術革新が連鎖的に起こり、今後のさらなる発展のために、光技術への期待は日増しに大きくなっている。それに応えるためには、「科学」として積み上げられた光学に関わる多くの成果を、いかにして揺るぎない「技術」に仕上げていくか、その手法論が問われる時代である。本稿では、次世代の情報入出力技術に大きな影響を及ぼすと思われる、光学素子に着目する。向こう10~20年の間に、情報家電分野や情報通信分野で必要とされる光学素子に関わる技術を予測し、既に科学的に明らかになりつつある、あるいは明らかになっている要素を組み合わせることによって、屈折・回折光学素子の次の世代を担う、新たな素子化技術の産業化を目指した取り組みについて述べる。このような次世代の情報入出力に関わる光学素子化技術が構築できれば、ユーザー側にとっては、高画質画像などの大容量データの高速かつ効率的な撮像、保存・読み出しが可能となる。一方、製造側にとっては、これまで膨大なエネルギーを要していた光学素子の製造プロセスが大幅に簡素化されるばかりか、部品数の削減にも繋がり、近隣諸国をリードする高度な情報家電機器の製品化が実現する。2 産業化に向けた新展開と研究目標1600年以降に登場した光学素子および産業分野で貢献している製造方法を、図1に模式的に整理した。この分野のものづくりは「光学材料」と「微細加工」に集約される。屈折率や分散など、設計で決められた物性の材料を開発し、それを精密に加工、評価するという作業の繰り返しである。1600~1800年代は、レンズ、プリズム、回折格子という3つの光学素子を基盤として、幾何光学と波動光学の分野で様々な理論が構築された時期である。先行する理論あるいは光学設計がものづくりに指針を与え、ものづくりがニーズに確実に応え、かつ理論と設計の高度化を促すという状況が現在でも続いている。図1 1600年以降に登場した光学素子および産業に貢献している製造方法

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