Vol.1 No.1 2008
25/85
研究論文:高齢者に配慮したアクセシブルデザイン技術(倉片ほか)−22−Synthesiology Vol.1 No.1(2008)執筆者履歴倉片 憲治(くらかた けんじ)1996年、工業技術院生命工学工業技術研究所入所。現在、人間福祉医工学研究部門アクセシブルデザイン研究グループ、グループ長。高齢者の聴覚特性の研究を行うとともに、聴覚・音響分野のJIS原案作成及び国際標準化活動に従事。ISO/TC 159(人間工学)/SC 5/WG 5コンビナー(議長)、ISO/TC 43(音響)/WG 1エキスパート(専門委員)等を務める。高齢者・障害者に使いやすい製品、生活しやすい環境を作ることが、すべての人に住みよい社会を創ることにつながると考え、アクセシブルデザイン技術の普及を目指している。佐川 賢(さがわ けん)1975年、工業技術院製品科学研究所入所。現在、人間福祉医工学研究部門、上席研究員。視覚の心理物理学的計測をとおして、測光や視環境評価の研究に従事。これまでに薄明視測光システムの開発、色彩環境の快適性の定量化、高齢者・障害者の視覚特性計測等を行い、それらの研究成果をJISやISOなどの標準化をとおして普及に努めている。現在、国際照明委員会(CIE)幹事、ISO/TC 159(人間工学)/WG 2コンビナー(議長)等、国際標準化活動に従事。査読者との議論議論1 研究プロセスと論文構成質問(赤松 幹之)アクセシブルデザインにとって「なぜ、標準化がベストチョイスか」という研究者としての考えが分かるような全体構成にすることが望まれます。アクセシブルデザインにおける標準化の有効性、そのための標準/規格の要件、それに基づくデータ収集、のように、ニーズを具体化して、それにシーズを提供していくというプロセスが明確に書かれていると、標準という方法をとることが得策なのか、標準という方法をとる場合には、どのような標準がよく、そのために何をするべきなのか、といったことが書かれていると、読者に大いなる参考になると思います。質問(一條 久夫)研究の流れは詳述されていますが、要素技術と、その選択・統合プロセスが若干分かりにくいように思います。回答(倉片 憲治)下記の修正を施したことにより、ご指摘のような全体構成になり、標準化研究の意義と利点が明確になったのではないかと考えます。・標準化の意義と重要性に関する2章の追加・報知音の設計上の問題を整理した3章の記述の整理・規格の実際の活用に関する5章の記述の修正議論2 研究の課題について質問(赤松 幹之)大枠の課題設定だけでなく、細かい課題についても触れられると良いと思います。例えば、現実の生活環境では、機器とユーザとの距離も様々ですし、機器とユーザとの間に家具などがある場合もあるでしょう。生活環境についても、反響の強い部屋もあればデッドな部屋もあり、それによる違いもあるかもしれません。どこまで課題として検討して、そのうちから研究対象とした範囲に選んだ理由などが明確になっていると良いと思います。回答(倉片 憲治)ご指摘の生活環境音に関する細かな課題について、「4.2 生活環境音による妨害への対応」に記述を加えました。高齢者の聴覚特性に関しても、「4.1 加齢に伴う聴力低下への対応」にて技術的課題を詳述いたしました。これらの追加により、筆者らがたどった思考過程をより明確にお読みいただけるようになったものと考えます。議論3 研究成果の評価について質問(赤松 幹之)当初設定した研究目標にどの程度達したのかを示し、自己評価してもらいたいと思います。著者から見て結果としてのJISが十分に満足に足るものであるのか、まだ不十分と考えていることがないのか、などの記載を期待します。回答(倉片 憲治)JISとして制定した技術によって、当初設定した研究目標はほぼ達成されたと考えております。しかし、その後の技術的進展によって、当該JISでは対応できない報知音の使用等、新たな課題が発生してきました。その点を、「7.1 新たな報知音や音声ガイドへの対応」に今後の展開として記述することで、現状の自己評価といたしました。併せて、JISの普及策について、同節及び「7.2 国際標準化への展開」でより詳しく記述しました。議論4 モデルの単純化に対する考え方について質問(一條 久夫)平均的エネルギー量が聴覚現象に大きく影響すること、この単純化がモデルの本質をついたものであると考えるに至ったプロセスについて記述されると良いと思います。回答(倉片 憲治)このプロセスは、以前私自身が携わった研究の延長で考えに至ったものですので、その文献[9、10]を引用いたしました。また、「4.1 加齢に伴う聴力低下への対応」での記述を詳しくすることによって、筆者らがたどった思考過程がより明確になるようにいたしました。議論5 本研究と第1種基礎研究との相互関係質問(小野 晃)図7で従来型の研究と今回の研究とを対比しており、②と④を第2難波精一郎,桑野園子: 種々の変動音の評価法としてのLeqの妥当性並びにその適用範囲の検討,日本音響学会誌, 32,774-785(1982).K.Kurakata, A.Shibasaki-K. and Y.Kuchinomachi: Loudness functions of elderly adults for pure tones and low-pass filtered noises, Proc. 7th Western Pacific Regional Acoustics Conference, 191-194 (2000).日本工業規格:TR S 0001 消費生活製品の報知音等の設計指針-生活環境音データベース,日本規格協会(2002).倉片憲治,久場康良,木塚朝博,口ノ町康夫: 高齢者の聴力レベルとテレビの聴取音量の関係,人間工学,35,169-176 (1999).K.Kurakata, K.Matsushita and Y.Kuchinomachi: Database of domestic sounds for evaluation of auditory-signal audibility: JIS/TR S 0001, Acoust. Sci. & Technol. 24, 23-26 (2003).倉片憲治,水浪田鶴,松下一馬: 生活環境音中に呈示された純音信号の聞き取りやすさ評価-若年者と高齢者の比較-,日本音響学会秋季研究発表会講演論文集,459-460 (2002).K.Kurakata and K.Matsushita: Japanese Industrial Standards on designing auditory signals of consumer products for the elderly and for use in noisy conditions, Proc. XVth Triennial Congress of International Ergonomics Association, No.713 (2003).アクセシブルデザイン製品の普及にむけて-聴覚・視覚に関わる標準化研究の成果をISO規格化提案, 産総研Today, 7(7), 19 (2007).(受付日2007.9.18,改訂受理日2007.11.26)[10][11][12][13][14][15][16][17]
元のページ