Vol.1 No.1 2008
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研究論文:高齢者に配慮したアクセシブルデザイン技術(倉片ほか)−21−Synthesiology Vol.1 No.1(2008)る。しかし、報知音が普及するに伴って、新たな標準化の要望が産業界から寄せられている。 一つめは、より複雑な音響的構造をもつ報知音に関するものである。現在のJISでは、音の高さと音量が一定の比較的単純な音を規定の対象としている。しかしその後、携帯電話の着信メロディに代表される新しい技術の進歩と普及によって、より音楽的で複雑な音を報知音に使用する動きが出てきた。二つめは、音声の使用に関するものである。製品の操作説明など、より多くの情報をユーザに伝えるために、単純な報知音だけでなく音声ガイドを使用した製品が今後増えていくことが見込まれている。 JIS S 0014では、聴覚や音響の専門家でない現場のデザイナーでも使用できるよう、設計手法をできるだけ単純化してある。しかしそれでも、「難しい」という声が筆者らに寄せられることがある。手続きの煩雑さを増すことなく、音響的により複雑な報知音や音声ガイドに対応した手法へと現行のJISを発展させることが、今後の大きな課題である。7.2 国際標準化への展開 JIS「高齢者・障害者配慮設計指針」は、幸いにもアクセシブルデザインを志向する多くの製品の設計において使用されるに至っている。JIS S 0014を含め、そのうちのいくつかについては、国内での標準化の段階として、ISO規格化の作業が現在進行中である[17]。本稿で取り上げた報知音の音量設定方法のように、人間の基本的な感覚特性に基づく設計手法は、原理的にどの国の製品にも適用可能なはずである。少子高齢化が進む日本以外の国々においても、このアクセシブルデザイン技術は有効に使われるものと期待している。 また、国際標準化作業にあわせて、筆者らはそれら規格を他の製品規格において引用するよう規格作成者らに働 第1種基礎研究・精緻なモデルと 複雑な手法による 設計精度の向上現行製品・多数の被験者 データに基づく 分布記述型研究・加齢変化を含む 個人差を重視 第1種基礎研究・少数の被験者 データに基づく メカニズム解明型 研究・平均的な人間像・手法の簡略化・環境条件の単純化アクセシブルデザイン製品①②③④??第2種基礎研究へ第2種基礎研究へ図7 従来型の人間特性研究との比較で表したアクセシブルデザイン技術開発の段階きかけ、アクセシブルデザイン技術を広く普及させる取り組みも始めている。アクセシブルデザイン技術は、製品の種類や生産国を問わず共通化されることが望ましい。たとえ高齢者にとって使いやすい良いデザインであっても、互いに相容れないデザインが混在していては、ユーザにとってはかえって不便だからである。 使用者の特性やニーズに合わせたきめ細かなもの作りは、もともと日本企業が得意とするところである。アクセシブルデザイン製品の分野においても、日本の産業が世界市場をリードしていくことができれば、本研究開発も成功であったと言えよう。謝辞 筆者らが原案を作成したJIS「高齢者・障害者配慮設計指針」の多くは、独立行政法人製品評価技術基盤機構と共同で実施した標準基盤研究の成果に基づいている。特に、高齢者の感覚特性に関する大規模計測の実施には、同機構の協力が不可欠であった。記して、関係各位に謝意を表す。キーワード高齢者、聴覚、視覚、報知音、標準化、日本工業規格参考文献[1][2][3][4][5][6][7][8][9]人間福祉医工学研究部門,成果普及部門工業標準部: 妨害音及び高齢者の聴力低下を考慮した報知音に関する標準化研究, 産総研Today, 4(3), 33 (2004).人間福祉医工学研究部門,成果普及部門工業標準部: 年代別相対輝度及び光の評価方法に関する標準化研究.産総研Today, 4(5), 23 (2004).日本工業規格:JIS S 0014 高齢者・障害者配慮設計指針-消費生活製品の報知音-妨害音及び聴覚の加齢変化を考慮した音圧レベル,日本規格協会(2003).倉片憲治,松下一馬,久場康良,口ノ町康夫: 家電製品の報知音の計測-高齢者の聴覚特性に基づく検討・第2報-,人間工学, 35, 277-285 (1999).倉片憲治,松下一馬,久場康良,口ノ町康夫: 家電製品の報知音の計測・第3報-発音パターンの分析-,人間工学, 36, 147-153 (2000).日本工業規格:JIS S 0013 高齢者・障害者配慮設計指針-消費生活製品の報知音,日本規格協会 (2002).K.Kurakata, K.Matsushita, A.Shibasaki-K and Y.Kuchinomachi: Detection threshold for pure tones presented against a broadband noise - A comparison of young and elderly listeners -, Proc. 17th International Congress on Acoustics, 4, 3A.15.02 (2001).S.Namba, S.Kuwano, K.Kinoshita and K.Kurakata: Loudness and timbre of broad-band noise mixed with frequency-modulated sounds, J. Acoust. Soc. Jpn (E), 13, 49-58 (1992).S.Kuwano, S.Namba, K.Kurakata and Y.Kikuchi: Evaluation of broad-band noise mixed with amplitude-modulated sounds, J. Acoust. Soc. Jpn (E), 15, 131-142 (1994).

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