Vol.1 No.1 2008
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−15−Synthesiology Vol.1 No.1(2008)研究論文高齢者に配慮したアクセシブルデザイン技術の開発と標準化倉片 憲治*、佐川 賢 近年の少子高齢化に伴い、消費生活製品等の設計において、高齢者を含むより多くの人々のためのデザイン(アクセシブルデザイン)が求められるようになってきた。筆者らは、高齢者の聴覚および視覚機能に関わる日本工業規格(JIS)の作成をとおして、アクセシブルデザイン技術の開発とその普及に努めてきた。本論文では、報知音の音量設定方法に関するJIS S 0014を例にとり、アクセシブルデザイン技術の標準化に至るまでの研究過程を本格研究の観点から論じる。1 はじめに 近年の少子高齢化、すなわち若齢者人口の減少と高齢者人口の増加に伴い、家電製品をはじめとする消費生活製品や情報通信機器、事務機器等の主要なユーザが、若齢者から高齢者に移りつつある。従来、それらの製品の設計にあたっては、暗黙のうちにユーザ層として若齢者を想定することが一般的であった。しかし、少子高齢社会では「アクセシブルデザイン」、すなわち高齢者を含む、より多くの人々のためのデザインが求められるようになっていく。 これはデザインに対する世代間の好みの違いといった表面的な問題にとどまらない。高齢ユーザが増えるにしたがい、正しい使用に必要な情報の見落としや聞き逃しによる製品の誤使用の増加が懸念される。そのため、製品の使用方法に関する情報を適切に表示し、より高い安全性を確保することが、これまで以上に求められる。また、高齢者自身にも、安全に製品を使用できない不安から、新しい製品の使用そのものを避けようとする傾向がある。そのため、買い換え需要が落ち込み、製品の市場規模全体が徐々に縮小していきかねない。一方、見方を変えれば、人口構造が大きく変化することは、新しい市場を開拓する好機でもある。これまで対象としなかった高齢者という新たなユーザ層を狙って、新しい製品を開発したり設計仕様を変更したりする動きが盛んになってきている。1990年頃より、消費生活製品や事務機器等のさまざまな製品分野で、高齢者特性を考慮したデザイン手法に対する関心が急速に高まっている。 このような社会情勢を受けて、筆者らは日本工業規格(JIS)「高齢者・障害者配慮設計指針」のうち、聴覚及び視覚機能に関わる規格の原案作成及び制定に携わってきた[1、2]。本稿ではまず、アクセシブルデザイン技術の標準化の意義と必要性について説明する。次に、筆者らが制定に携わった規格の中から消費生活製品の報知音に関わるJIS S 0014[3]を例にとり、アクセシブルデザイン技術の標準化に至るまでの研究過程を本格研究の観点から論じてみたい。2 標準化の意義と必要性 筆者らは、アクセシブルデザイン技術の開発当初から、JIS等の制定を通した標準化を目指してきた。その理由の一つには、高齢者配慮の製品が市場に出回るにしたがって、製造者又は製品の種類によって設計仕様が異なることによる混乱や、高齢者対応を謳いながら実際には適切な設計がなされていない製品が徐々に増えてきたという背景がある。一連のJIS「高齢者・障害者配慮設計指針」の制定は、現状の改善を望む行政及び産業界の強い要請を受けてのことであった。 しかし、そのような背景は別にしても、アクセシブルデザイン技術のような人間工学関連の技術開発には、開始当初から標準化を意識して行うことの利点が少なくない。まず、人間の特性は多面的であるため、一つの技術を開発するにあたって検討すべき要因が非常に多い。報知音の場合、聴覚の加齢特性が研究の対象となるが、聞き取りやすく分かりやすい音を設計するためには、周波数・音圧レベル・時間パターンの少なくとも3つの要因の影響を順次検討し産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門 〒305-8566 茨城県つくば市東1-1-1 中央第6 産総研つくばセンター*E-mail:kurakata-k@aist.go.jp− 聴覚特性と生活環境音の計測に基づく製品設計手法の提供 −

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