技術宝箱
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技術紹介14. 変換効率の高い低コスト色素増感太陽光発電システム(3) ルテニウム錯体を増感色素と用いた電池の性能錯体電流/mA cm -2電圧/Vフィルファクター変換効率/%16.90.560.723.6211.90.590.715.0312.00.570.725.0錯体の構造が電池性能に大きく影響を及ぼすことが判明した。2. 本技術の背景持続可能な社会の実現を目指してクリーンエネルギーの開発が強く求められている21世紀において、太陽光発電技術は、最も期待される技術の一つである。しかし、現在の太陽電池はコストが高く、太陽電池の幅広い普及には低コストで高性能な太陽電池の開発が必須となっている。スイス・ローザンヌ工科大学のグレッツェル等によって考案された新しい色素増感太陽電池、いわゆるグレッツェル・セルは、従来の太陽電池と比較して低い製造コストで高い性能を実現できる可能性があることから次世代型太陽電池として近年世界的に注目を集めている。本タイプの太陽電池に於いては、増感色素としてルテニウム錯体が用いられることが多く、特にエネルギー変換効率が高いものとして、2,2'-ビピリジン誘導体あるいはターピリジン誘導体を配位子として有するルテニウム-チオシアネート錯体がよく知られている。色素増感太陽電池の実用化のためには、エネルギー変換効率等電池性能のさらなる向上とともに、電池の耐久性(電池寿命)の向上も極めて重要な研究課題になってくる。そのためにはルテニウム錯体などの増感色素として使用される化合物についても、高温や光照射といった厳しい条件下においても長期にわたって安定であることが要求される。その観点から、前述の現在最もよく使用されている上記2種のルテニウム錯体について見ると、同錯体においては熱や光の刺激による一部配位子の解離やシス体とトランス体の間の異性化反応の可能性が指摘されており、このような反応を起こさない、より安定な錯体増感色素の開発が必要と言える。環状または擬環状構造の多座配位子化合物は中心金属への配位点の増加により、より安定な金属錯体を形成するという利点があり、上記のような問題を解決できることが期待される。このようなタイプのルテニウム錯体として、既にいくつかの例が報告されている。しかし、電池性能に関しては満足すべきものは少なく、その改善が強く求められており、本発明のルテニウム錯体が考案された。87環境・エネルギー
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