技術宝箱
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4中小企業のための技術宝箱皆様にご理解しやすいように、1案件6頁の構成としています(下図をご参照ください)。概 要1. 今までの技術酵素・タンパク質を利用した物質製造プロセスでは、通常ひとつの酵素が使われている。一方、2種類以上の酵素・タンパク質を用いた複雑な反応経路の構築が、バイオ技術分野における触媒反応等の化学反応プロセスへの応用が期待されている。しかし、複数の酵素を同時に利用するには、タンパク質間の凝集体形成やタンパク質分解酵素等の外的環境要因によりタンパク質が失活し、反応が阻害されることが多かった。2. 本技術メソポーラスシリカの規則性細孔の内部に異種のタンパク質を内包することで、タンパク質の立体構造を安定に保持した状態で単分散集積する。本手法では、10 nm以内に近接した状態で集積可能で、異種タンパク質間の反応効率(例えば、エネルギー移動効率(図1、2))を向上でき、さらに外的要因によるタンパク質の分解などを抑制しながら安定に酵素活性を発現できる。本技術は、生体機能を模倣した異種酵素・タンパク質による新しい反応場・化学反応システムの構築に寄与できる。023 製品化に必要な課題 ①目標とする市場技術分野・食品関連機能性化学品および医薬中間体等の高効率合成(バイオリアクター)・環境および健康の迅速診断(バイオセンサー) ②事業化に必要な技術・メソポーラスシリカの細孔径・形状制御および量産化技術・細孔内壁の化学修飾等による表面改質技術 ③事業化に必要な検証・メソポーラスシリカ―酵素・タンパク質複合体の耐熱性および耐久性の検証・従来の微生物発酵技術等と比較したコスト検証4 研究成果の特長 ①ポイント・タンパク質のサイズに合致した細孔径(直径2~20 nm)を有するメソポーラスシリカの細孔内部に個々のタンパク質を導入することで、タンパク質間の凝集体形成による変性を抑制しながら、単分散かつタンパク機能を保持した状態での固定化が可能になる。・シリカ細孔内へ固定化した複数の酵素・タンパク質は高密度(互いの距離10 nm以内)に集積化されているため、異種タンパク質間の物質移動距離が短くなり、多段階酵素反応の反応効率(例えば、エネルギー移動効率等)を飛躍的に向上できる。・シリカ細孔内への固定化により酵素の耐環境性(外的要因によるタンパク質分解の抑制等)を向上できる。 ②目的及び効果・シリカ細孔内に複数の異種酵素・タンパク質を配列化し、生体機能を模倣した低環境負荷型の新しい反応場・化学反応システムを構築する。・シリカ細孔内に固定化した酵素・タンパク質は耐熱性・耐久性が向上するとともに、多段階酵素反応を円滑に進行できるようになるため、バイオリアクターやセンサーの高性能化を実現できる。5 特許関連情報 ①権利化済特許なし ②出願中特許1.特開2008-143892 シリカ系メソ多孔体材料―ヘテロ蛋白質複合体及びその製造方法 ③試作品・試料提供:無 許諾実績:無 実施許諾:可6 研究者情報所 属:コンパクト化学システム研究センター(東北センター)氏 名:松浦 俊一 / MATSUURA Shun-ichi連絡先:E-mail: matsuura-shunichi@aist.go.jp2 技術説明1 紹介する技術とポイント シリカ細孔内へ複数タンパク質(酵素) を配列することにより新機能の発現①直径2~20 nmの細孔内部に機能の異なる2種類のタンパク質を固定化② 細孔内への高密度集積により異種タンパク質間のエネルギー移動効率および安定性の向上を実現02. シリカ細孔を利用したタンパク質工場シリカ細孔を利用したタンパク質工場メソポーラスシリカ:シリカを材質として作製された均一で規則的な細孔をもつ物質。直径2-20 nm程度の細孔と大きな比表面積を持ち、タンパク質やDNAなどの巨大分子を取り込める図2 緩衝溶液中でのメソポーラスシリカ―タンパク質複合体(未励起時)a)シリカ粉体のみb)sGFPを内包したシリカc) DsRedを内包したシリカd) sGFP及びDsRed(異種タンパク質)を内包したシリカ図1 メソポーラスシリカの細孔内部に吸着した(1)蛍光性異種タンパク質(sGFP及びDsRed)の間で生じる蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)および(2)発光性酵素(Rluc)と蛍光性タンパク質(sGFP)の間で生じる生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)21中小企業のための技術宝箱技術紹介技術紹介02. シリカ細孔を利用したタンパク質工場02. シリカ細孔を利用したタンパク質工場1. 特長1.本技術は、高濃度タンパク質の凝集による失活を抑制し、シリカ細孔内において個々のタンパク質を分散させた状態で安定に固定化できる。例として、蛍光性タンパク質の場合、細孔内に固定化していないタンパク質は高濃度領域において蛍光活性の低下と変性にともなう蛍光波長のレッドシフトを示すが、細孔内に内包したタンパク質は、高濃度領域においても適切な蛍光活性と波長を維持できる(図A)。このように、タンパク質を高密度集積させて比活性を高くしたメソポーラスシリカ―異種タンパク質複合体を構築できるため、複数のタンパク質及び酵素を用いた多段階化学反応場を提供できると考えられる。2.シリカ細孔内へ固定化した異種の酵素・タンパク質は10 nm以内に近接した状態で高密度に集積化できるため、異種タンパク質間の物質移動距離が短くなり、その結果、多段階酵素反応の反応効率を飛躍的に向上できる。蛍光性異種タンパク質を例に挙げると、タンパク質間の相互作用は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を検出することにより解析できる。異種タンパク質の濃度が増大しシリカ細孔内での異種タンパク質の距離が縮まることで、エネルギー移動効率が増大する。さらに、細孔径の違いにより細孔内におけるタンパク質の配向を変化でき、これにより、至適のエネルギー移動効率に制御することが可能である(図B)。3.シリカ細孔内への固定化により異種酵素の耐環境性(外的要因によるタンパク質分解の抑制等)が向上し、さらに異種の酵素活性を安定に発現可能な複合体を提供できる(図C)。2. 本技術の背景従来技術では、例えば、SBA、MCM、FSMタイプ等のメソポーラスシリカ材料の細孔内部に、一種類のタンパク質、すなわち、ホモタンパク質を吸着させ、活性を安定に保持させること等の特徴を有する人工的なシリカ―タンパク質複合体の開発が進められている。しかしながら、既往の研究では、メソポーラスシリカ―ホモタンパク質複合体に関する報告は多数なされているが、メソポーラスシリカの細孔内部に2種類以上の性質の異なる異種のタンパク質や酵素を集積するという、メソポーラスシリカ―異種タンパク質複合体に関する研究成果については報告がなかった。そのため、当技術分野においては、メソポーラスシリカの細孔内部において、異種タンパク質を集積させると同時に、それが達成されたことの実験的証明と証明手法の提案・開発が強く要請されていた。このような状況の中で、本技術により、異種酵素・タンパク質間で生じるエネルギー移動を指標とした分子間相互作用の観測によってシリカ細孔内での高密度集積化を証明し、更に、外的要因によるタンパク質の分解等を抑制しながら異種の酵素活性を安定に発現できる担持手法と成り得ることを示した(図D)。図A メソポーラスシリカによる凝集体形成の抑制効果:(a)蛍光性タンパク質sGFPのみ,(b)メソポーラスシリカ―sGFP複合体(Matsuura, S. et al. (2008) Bioconjug. Chem. 19, 10-14)図B エネルギー移動効率に与えるシリカ細孔径の影響 (Matsuura, S. et al. (2010) Micropor. Mesopor. Mat.131, 245-251)図C シリカ細孔内への固定化による異種酵素の安定性向上(Matsuura, S. et al. (2010) Micropor. Mesopor. Mater. 127, 61-66)図D シリカ細孔内への固定化による異種酵素の安定性向上概要本技術は、メソポーラスシリカ材料の規則性細孔内部に触媒機能または蛍光・発光性等の機能を有する異種タンパク質を、安定に活性を保持して、且つ大きな吸着量で吸着担持させたメソポーラスシリカ―異種タンパク質複合体の製造方法を提供し、異種機能の集積化により反応効率等を向上させるものである。43中小企業のための技術宝箱特 許特 許02. シリカ細孔を利用したタンパク質工場02. シリカ細孔を利用したタンパク質工場請求項1 シリカ系メソ多孔体の細孔内部に性質の異なる少なくとも二種類のヘテロ蛋白質を備える蛋白質内包複合体であって、蛋白質が前記シリカ系メソ多孔体の細孔内に吸着され、分散した状態で細孔内に安定に固定されており、上記二種類のヘテロ蛋白質がヘテロ蛋白質間で相互作用を示すように近接した状態にある、ことを特徴とするシリカ系メソ多孔体-ヘテロ蛋白質複合体。請求項2前記シリカ系メソ多孔体(FSM)が、(1)ケイ素原子と酸素原子を必須成分として含む化合物の多孔体であり、(2)細孔のサイズが直径で2~50 nmであり、(3)全細孔容積が0.1~1.5 mL/gであり、(4)比表面積が200~1500 m 2である、請求項1に記載のシリカ系メソ多孔体-ヘテロ蛋白質複合体。 請求項3前記シリカ系メソ多孔体が、アルコールで熱処理されたアルコール処理FSMで、アルコキシ基を有している、請求項1又は2に記載のシリカ系メソ多孔体-ヘテロ蛋白質複合体。 ・以下、請求項4から請求項10まで省略。請求項11アルコール処理又は未処理のシリカ系メソ多孔体の細孔内部に性質の異なる少なくとも二種類のへテロ蛋白質を吸着させ、分散した状態で細孔内に安定に固定させることにより上記二種類のヘテロ蛋白質がヘテロ蛋白質間で相互作用を示すように近接した状態にあるヘテロ蛋白質内包複合体を作製することを特徴とするシリカ系メソ多孔体-ヘテロ蛋白質複合体の製造方法。請求項12シリカ系メソ多孔体の中心細孔直径を変えることにより、ヘテロ蛋白質の向きを制御する、請求項11記載の製造方法。請求項13請求項1から9のいずれかに記載のシリカ系メソ多孔体-ヘテロ蛋白質複合体からなり、機能性を有するヘテロ蛋白質をシリカ系メソ多孔体の細孔内に安定に、且つ分散した状態で吸着、保持させたことを特徴とするヘテロ蛋白質内包機能性部材。1. 特開2008-143892平成20年6月26日(出願平成19年11月15日)・出願人 独立行政法人産業技術総合研究所・発明の名称 シリカ系メソ多孔体材料-ヘテロ蛋白質複合体及びその製造方法・要約 シリカ系メソ多孔体(FSM)の細孔内部に性質の異なる少なくとも二種類のヘテロ蛋白質を備える蛋白質内包複合体であって、蛋白質がFSMの細孔内に吸着され、分散した状態で安定に固定されており、上記二種類のヘテロ蛋白質がヘテロ蛋白質間で相互作用を示すように近接した状態にあり、高密度に集積した蛋白質として、FSMの細孔内に吸着されていることからなるヘテロ蛋白質複合体、その製造方法、及び複合体からなり、機能性を有するヘテロ蛋白質をFSMの細孔内に安定に、且つ分散した状態で吸着させ、その活性を安定に保持させた機能性部材。 ◆背景 サブユニット蛋白質を代表とするヘテロ蛋白質は、生体内での様々な化学反応における反応経路を提供しており、この精細緻密な反応を人工的な蛋白質複合体を用いて再現する手法の開発が、例えば、バイオ技術分野における触媒反応等の化学反応プロセスへの応用に向けて期待されている。ここで、既往の研究では、シリカ系メソ多孔体材料-ホモ蛋白質複合体に関する報告が多数なされているが、シリカ系メソ多孔体材料の細孔内部に二種類以上の性質の異なるヘテロ蛋白質を集積するという、シリカ系メソ多孔体材料-ヘテロ蛋白質複合体に関する研究成果については未だ報告がない。 ◆発明が解決しようとする課題 未処理又はアルコール処理したシリカ系メソ多孔体の細孔内部に蛍光性又は発光性等の機能性を有するヘテロ蛋白質を、安定に、活性を保持して、且つ大きな吸着量で吸着担持させた新規シリカ系メソ多孔体-ヘテロ蛋白質複合体、その製造方法、及び、その用途を提供する。 ◆課題を解決するための手段 未処理あるは特定のアルコールによって表面を処理したシリカ系メソ多孔体の細孔内部に、少なくとも二種類のへテロ蛋白質を吸着させ、細孔内部にヘテロ蛋白質を内包させたシリカ系メソ多孔体-ヘテロ蛋白質複合体を形成させる。65中小企業のための技術宝箱特許情報概 要技術を分かりやすく簡潔に説明しています技術紹介技術をより詳細に紹介しています特 許技術の権利範囲を確認できます本資料の構成1ページ目には、技術概要を分かりやすく説明しています。2ページ目には、事業化までに検討すべきポイントについて箇条書きで記載しています。3, 4ページ目には、技術をより詳細に紹介しています。5, 6ページ目には、本技術に関係した特許について請求項等の情報を記載しています。すなわち、1, 2ページで、技術に興味を持っていただき、3, 4ページで、技術内容を理解いただき、5, 6ページで、当該技術の権利範囲を確認できるようにして、事業化の参考になるようにしています。事業化へのポイントを箇条書きにしています
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