技術宝箱
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技術紹介54. 水に溶ける高輝度の蛍光ナノ粒子5. 研究の内容InPナノ粒子(粒径2.3-4.0 nm)は、図2に示すようなソルボサーマル法で、爆発性のないリン化合物、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン(TDAP、[ (CH 3 ) 2 N ] 3 P)を用いて比較的低温(150-180℃)の有機溶媒中で合成した。図3に示すように硫黄を含む界面活性剤(チオグリコール酸)と亜鉛イオンを溶解したアルカリ性水相に接触させると、InPナノ粒子が水相に移動することを見出した。共有結合性の強いInPは反応性に乏しく、王水にのみ溶けるとされていた。しかし、ナノ粒子にすることで反応性が増大し、わずかに溶解し水相に移ることを見出した。これに紫外線を照射すると、ナノ粒子表面の光化学反応によってチオグリコール酸が分解されて、保護層となるZnSの被覆が形成された。このような3段階の反応によりInPをコア(核)とし、厚いZnSで被覆されたコアシェル型ナノ粒子が得られることがわかった。このナノ粒子は表面が界面活性剤で覆われているので水に良く分散し、水中で高い効率(緑~赤色領域で30%以上、最高68%(赤色))で発光した。過去にInPの場合も同じように有機溶液中でエピタキシャル法によりZnSの層を付けることが行われたが、十分に高い発光効率は得られなかった。今回、水相に移動させてから紫外線照射することによって表面化学反応を起こさせ、厚いZnS被覆(1.5 nm)を得ることに成功した。図4に示すとおり計算によっても、この材料で励起子の電子の染み出しを抑えるためには同程度の厚い被覆が必要なことが示された。このZnS被覆は、発光効率を上げるだけでなくナノ粒子の化学的安定性を向上させるので、バイオ分野で用いられる高濃度の塩等を含む環境中で用いる上でも有利である。室温・大気中では、数ヶ月間の保存でも発光効率が変化せず、発光・吸収スペクトルの変化も見られなかった。図4 InP/ZnSナノ粒子の、励起子の電子波動関数とZnSシェル厚との関係図3図2 ソルボサーマル法によるInPナノ粒子の作製ライフサイエンス327
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