技術宝箱
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技術紹介54. 水に溶ける高輝度の蛍光ナノ粒子1. 特長・粒径により緑~赤色蛍光を示す水分散性のリン化インジウム(InP)ナノ粒子を作製・硫化亜鉛(ZnS)の厚い被覆により、高効率発光と化学的安定性の向上を実現・従来のカドミウム含有ナノ粒子に代わって、バイオ標識用蛍光ナノ粒子としての広い応用に期待水に分散して長期間安定で、かつ蛍光発光効率の高い(赤色で68%)リン化インジウム(InP)ナノ粒子の開発した。このナノ粒子はInPをコア(核)とし、外側が硫化亜鉛(ZnS)で被覆されたInP/ZnSコアシェル型構造をした。反応条件を制御してZnS被覆を厚くすることで、発光効率と化学的安定性の向上を実現した。同時にナノ粒子表面に硫黄を含む界面活性剤を結合させ、バイオ応用に必須となる水分散性を付与した。2. 本技術の背景これまで研究用に培養細胞などの生体内の微量物質の量や分布および動きを観察するための蛍光性ナノ粒子として、ZnS被覆のセレン化カドミウム(CdSe)や、硫化カドミウム(CdS)被覆のテルル化カドミウム(CdTe)などが用いられてきた。これらも水分散性にすることはできるが、カドミウムによる細胞死を引き起こすため応用の範囲が限られていた。今回開発のナノ粒子は、今までのカドミウム含有ナノ粒子に比べて、より広い範囲への応用が期待される。3. 研究の社会的背景生体関連物質に結合して、体内や体外でその量、分布および動きを調べる高輝度で安定な蛍光試薬への要望が高まっている。直径が2~6 nm程度の半導体ナノ粒子(CdSeおよびCdTe)は、表面状態をうまく制御すると高効率で発光する。吸収と発光の波長域が離れているので発光検出の精度を上げることができる。また、量子サイズ効果によって粒子の大きさにより発光波長が変わるので、さまざまな粒径の粒子を用いることによって、単一波長の励起光で種々の発光色が得られる。4. 研究の経緯半導体ナノ粒子の発光波長は、量子サイズ効果によりバルク体よりも短くなる。緑~赤色で発光するナノ粒子を得るには、バルク体の発光波長が赤色よりも長い半導体が必要である。そのようなII-VI族およびIII-V族半導体の種類とバルク体の発光波長を図1に示す。この図から、カドミウム(Cd)やヒ素(As)を含まずに長波長で発光するリン化インジウム(InP)がほとんど唯一の候補であることがわかる。InPナノ粒子の作製はドイツやアメリカを初め世界中で行われてきたが、いずれも厳しい反応条件が必要であり、また水中に移すと発光強度が低下した。そこで、安全で簡便な方法で作製でき、水中でも高い発光効率を得ることを目標とした。図1 長波長域で発光するIII-V族およびII-VI族半導体と発光波長(バルク体)概要高効率で蛍光を発するバイオ標識用ナノ粒子の作製に成功した。カドミウムを含まないので幅広い生態物質の動態観察が可能になった。326中小企業のための技術宝箱
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