技術宝箱
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技術紹介標準・計測41. 細くて大質量のイオンビーム発生装置2. 本技術の背景高度医療、製薬およびヘルスケア産業は、高齢化社会を迎える我が国のみならず、国際的にも発展の余地が大きく、極めて有望な成長分野と期待されている。特に、(がんなどの)早期診断・治療を可能とする技術や(新薬の開発に不可欠な)がんの増殖や転移メカニズムの解明に役立つ高精度な測定機器に対するニーズは今後益々大きくなるものと予想される。(※なお、医療機器の市場規模は、国内で2.5兆円、世界では約25兆円程度である。)イメージング質量分析は、試料表面上の物質分布を質量分析に基づいて観察する技術であり、「マトリクス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)」や「二次イオン質量分析法(SIMS)」が代表的な手法である。MALDI法は、分子量が10万Daを超える巨大なタンパク質もイオン化でき、質量範囲が広いことが長所であるが、イメージングの面分解能は10 μm程度が限界値となっている。細胞の大きさが10 μm程度であることから、MALDI法を用いて細胞内部をイメージング質量分析することは難しく、大きな課題になっている。一方、SIMS法は、一次イオンビームを試料表面に照射することで生じた二次イオンを質量分析する手法である。近年、ガスクラスターなどの大きな質量を有するクラスターイオンをビーム化して用いることで、1万Daを超える大きな分子も検出できるようになり、バイオ分野においてもSIMS分析の応用範囲が広がっている(=“クラスターSIMS”と呼ぶ)。しかし、大きな質量を有するクラスターイオンビームを集束させてビーム径を1 μm未満にする技術は未だ確立されていない。このため、新方式のイオンビーム生成技術の開発が急務となっている。また、SIMSは、半導体などのナノテクノロジー分野において、欠くことのできない重要な基盤技術の一つである。今後も、重要であるものの、“ミキシング”や“選択スパッタリング”等の課題を解決することが必要とされている。大きな質量を有するクラスターイオンのビーム照射は、ミキシングや選択スパッタリングを抑制できるため、シリコン系半導体はもとより、今後の発展が期待されているハフニウム(Hf)系や有機系半導体材料のSIMS分析においても非常に有用な一次イオンビーム源となりうるものと期待されている。SIMSは、従来からの応用分野である鉄鋼や半導体業界のみならず、医薬、化学、食品、生物、環境分析等の多岐にわたり、重要な基盤的技術の一つとして発展するものと期待される。しかし、そのためには大きな質量を有するクラスターイオンを集束性良くビーム化する技術を確立し、高感度かつ高空間分解能なSIMS分析を実現することが大きな課題となっている。図2 “イメージングの面分解能”と“検出分子量”の関係。大きな質量を有するクラスターイオン照射を用いるSIMSにおいて、最重課題は面分解能の向上(=集束性の向上によるビーム径の縮小)である。249

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