技術宝箱
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技術紹介41. 細くて大質量のイオンビーム発生装置1. 特長本イオンビーム発生技術は、“イオン液体”をエレクトロスプレーすることにより、大きな質量を有するイオン種(クラスターイオンや帯電液滴)からなるイオンビームを生成するものである。1. 質量電荷比が1000程度のクラスターイオンビームを生成できる。(直径:1 nm程度)2. 質量電荷比が10 5~10 6程度の帯電液滴(直径:数10 nm~数100 nm)のビームも生成できる。3. 正イオンのみならず、負イオンも容易に生成できる。4. 真空中でのエレクトロスプレーにより、イオンビームの高集束化が可能となる。5. 真空排気系が小さくでき、コンパクトな構造を有するため、設置が容易。イオン液体を真空中でエレクトロスプレーした場合のエレクトロスプレー特性を図1に示す。前述のように、エレクトロスプレー法では、金属細管に印加する電圧を負極性にするだけで、負イオンを容易に生成できる。図1に示すように、正負両モードにおいて、電流値の絶対値がほとんど同じエレクトロスプレー電流が生成できることがわかる。また、エレクトロスプレー電流の時間安定性も確認済であり、連続的に安定なビームを生成できる。図1 イオン液体を真空中でエレクトロスプレーした場合のエレクトロスプレー電流の印加電圧依存性イオン液体⦆:ある種の陽イオンと陰イオンを組み合わせると常温常圧で液体(溶融)状態で存在する。これをイオン液体と呼び、蒸気圧が極めて低く、難燃性で熱的に安定。また導電性を持つためリチウム2次電池などの電気化学デバイスの電解液にも用いられている。概要産総研では、(大きな質量を有する)クラスターイオンや帯電液滴からなるイオンビームの生成技術を研究開発してきた。“イオン液体”と呼ばれる導電性の液体をエレクトロスプレーする手法を用いることで、新方式のイオンビーム発生方法を開発中である。イオン液体は、真空中でも蒸発せず、またイオン性であるため、高真空中においてもエレクトロスプレー法により正イオンならびに負イオンのビームを生成でき、イオンビームの集束化やイオン源のコンパクト化が期待される。開発されたイオンビーム源は、二次イオン質量分析法(SIMS)などの表面分析にも応用でき、高精度かつ高感度な表面分析を実現できるものと期待できる。例えば、細胞内部の高分解能イメージング質量分析が可能となり、微量な異常たんぱく質の早期検出や新薬の開発等にも応用できる。また、有機材料などのソフトなサンプルに対するビーム加工技術としても応用が期待される。248中小企業のための技術宝箱
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