技術宝箱
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技術紹介30. 大面積を簡単に書いて消せる光情報記録物質2. 本技術の背景アントラセンモノマーの基底状態に紫外光を照射して光励起すると、青い蛍光を発して基底状態に戻るか、あるいはもう一分子のアントラセンとの間で共有結合を形成して光二量体となる二つの反応過程が知られている。一旦、光二量体を形成すると先ほどと同じ波長の紫外光を吸収しないので、青い蛍光を発しなくなる。このようなアントラセン1分子の性質の変化(蛍光のON-OFF)を光記録に用いる試みはこれまでにいくつか報告されてきた。例えば、アントラセン化合物からなる薄膜に強い強度の紫外光を位置選択的に照射すると、照射部分は光二量体を形成し、未照射部分はアントラセンモノマーのまま残る。次に、光二量化を誘起しない程度の強度の弱い紫外光を照射すると、アントラセンモノマーの部分は蛍光を発するが、光二量体は蛍光を発しないため、パターンとして認識することが出来る。しかし、この光情報記録法においては、情報の読み出しにアントラセンの励起光を用いているために、強度が弱いながらも光二量化反応が進行して徐々に情報が破壊されていくという本質的な欠点がある。このような方法とは対照的に、我々の開発した材料では、アントラセンのバルクとしての状態変化(結晶相-アモルファス相)を誘起させているために、情報(2つの状態の差)の読み取りにはアントラセンの励起光を用いる必要がない。その結果、非破壊の情報記録読み取りが可能となった。一方、光によりバルクの状態を可逆的に変化させることができる有機材料としてアゾベンゼン含有液晶材料が提案されてきた。アゾベンゼンのシス-トランス光異性化反応を利用して材料の液晶相-アモルファス相の変化を誘起している。しかし、アゾベンゼンのシス体は一般的に不安定であり、容易にトランス体に熱戻りしてしまう。そこで、紫外光照射によってアゾベンゼンをトランス体からシス体に光異性化させることにより誘起したアモルファス相を固定化するために、材料の高分子量化や急冷処理などを行う必要があった。このような実情のため、アゾベンゼン含有液晶材料による光パターン(光情報記録)は長期保存には適さないものである。これに対して、我々が開発したアントラセン誘導体から得られる光二量体は、熱的に非常に安定であり、約200℃という高温においてのみモノマーに戻る。従って、アントラセン光二量体が示すアモルファス相は、特に処理を施すことがなくても室温では非常に安定であり、光情報記録の長期保存に適した材料と言える。183ナノテクノロジー・材料・製造

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