技術宝箱
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技術紹介29. 光接ぎ木(グラフト)法による表面のマイクロパターニング1. 開発の背景など従来技術:材料表面への分子導入は、古くは濡れ性の改善など表面処理の観点から行われ、近年では薄膜そのものの機能や下地材料とのハイブリッド性能も追求されている。パターン形成は、半導体製造におけるフォトレジストポリマーが代表例で、回路形成プロセスにおいて一時的に使用される。形成した分子パターンをそのまま利用するものに、DNAマイクロアレイがあるが、主にスタンパーで機械的に分子を乗せるため低解像度である。光脱保護剤を用いてパターンを得る方法が開発されており、オリゴヌクレオチド鎖形成に利用されているが、汎用性は高くない。この他インクジェットによる方法があるが、解像度があまり高くない。本技術による分子パターン形成法の特長: 光利用の点で従来法と比較すると、フォトリソ型は分子の固定に適さない。短寿命活性種の反応を用いる励起反応型は、効率や位置制御性に問題がある。光脱保護型は、脱保護過程で分解産物が生じる。一方、本技術によれば、①様々な分子を固定できる、②活性種が長寿命で、効率、位置制御性が高い、③不用な分解産物が生じない、④分子膜の最表面を利用するので、焦点深度から開放され、高い解像度が実現できる、⑤下地材料や利用光に応じ、感光色素設計に自由度がある、等々の特長があり、優れた系を提供できる可能性がある。2. 本技術の背景熱反応活性な光反応生成物があれば、分子修飾のためのグラフト開始点として用いることができると考え、このような光反応生成物を与えうる分子として、2, 2-ジフェニルクロメン(DPC)を選んだ。無色のDPCは紫外光により反応して開環し、赤紫色をした複数種のキノイド構造の混合物を与えるが、時間とともに熱的逆反応によって元の閉環体DPCに戻る。このような可逆のホトクロミック反応の他に、キノイド体は求核性の高いアミンにより付加反応を受けやすいことが、別な実験からわかっていた。この反応性を利用すれば、DPC分子が光反応した場所を狙って、アミン基を有する分子を後からゆっくりと導入することができる。概要固体表面に有機分子を導入する手法の開発は、省エネ省資源で高機能が求められる近未来材料の実現のため、極めて重要である。特に、表面を分子で塗り分ける、すなわち、所望の表面位置に、所望の分子を、高い位置精度で導入する技術は、分子固有の機能・化学反応性を、微小な場(例えばマイクロ流路やバイオチップ内)で、有機的に連携させて使用する際に、強力なツールとなると考えられる。産総研では、これまで培われた光反応性材料に関する研究をもとに、表面での結合形成に使用可能な反応系を導き出し、新規な光反応性高分子膜を介した位置選択的表面光グラフト法による分子パターニング技術として、研究開発してきた。開発した位置選択的表面光グラフト法による分子パターニング技術は、以下の特長がある。1. 塗布や含浸により表面に形成した感光性ポリマー膜の反応であり、多様な支持固体に適用可能2. 光照射と分子固定化反応を同時に行う必要が無く、処理が容易、固定化対象分子の光分解等の心配が不要、など高い利便性3. アミノ基を有する多くの機能性分子が結合可能DPCのホトクロミズムとアミンの熱的付加176中小企業のための技術宝箱
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