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9産総研TODAY 2013-04Research Hotline長谷川 達生はせがわ たつお(左)フレキシブルエレクトロニクス研究センター副研究センター長(つくばセンター)軽い・薄い・落としても壊れない情報端末機器やエネルギーデバイスの実現に向けて、シリコンなどの無機半導体の代わりに、炭素化合物による有機半導体を用いたトランジスタや太陽電池を実現する有機エレクトロニクスの基礎研究に取り組んでいます。山田 寿一やまだ としかず(右)所属は同上フレキシブル有機半導体チーム主任研究員(つくばセンター)フレキシブルエレクトロニクスを実現するための印刷技術の確立を目標に、微細なインク液滴を用いて高性能な有機半導体デバイスを印刷製造する、全く新しい半導体プロセスの開発に取り組んでいます。溶剤吸収にともなう歪ひずみが小さく、溶剤をゆっくり吸収し、しかも表面付近に保持できる性質を示します。製膜プロセスは、(1)基板表面へのスタンプの圧着によるポリマー半導体溶液層の形成、(2)スタンプによる溶剤吸収とそれに伴う固体膜の成長、(3)薄膜からのスタンプの剥はくり離、という3段階プロセスからなります。シランカップリング剤**を用いて撥水性を大きく高めたシリコン熱酸化膜(表面の水接触角は110度)上に、典型的なポリマー半導体(ポリ-3-ヘキシルチオフェン)の薄膜をプッシュコート法により製膜したものを図2に示します。高沸点の有機溶剤(トリクロロベンゼン、沸点214 ℃)を用いたにも関わらず、必要最小限の半導体溶液(約350 µL、0.1 重量%)だけで、膜厚50 nm、10 cm四方の薄膜を得ることができました。またスタンプは3層構造からなるため、薄膜からの剥離性に優れており、しかも繰り返し使用できます。今後の予定今後は、印刷条件・ポリマー半導体材料・デバイス構造を一層最適化し、薄膜トランジスタの性能と安定性の向上を図ります。また、金属配線、電極などの印刷法による作製技術と組み合わせて、全塗布法による高性能のアクティブバックプレーンの試作に取り組みます。液体を強くはじく表面に半導体を塗布する有機ポリマートランジスタの高性能化を実現塗布法の問題点材料を溶かした溶液を基板表面に塗布して薄膜を形成する塗布法は、真空を必要としない簡易な製膜技術として広く利用されています。特に近年、塗布法や、これを応用した印刷法により半導体や金属を製膜し、電子デバイスを製造するプリンテッドエレクトロニクス技術が注目されています。それらデバイスの高性能化には、撥はっすい水性の高い表面上に半導体を塗布することが必要とされていますが、例えば代表的なスピンコート法では、大量の材料の無駄を避けながら均質な薄膜を得るのがとても難しいことが問題になっていました。プッシュコート法の開発私たちは今回、有機ポリマー半導体を溶かした溶液を3層構造のシリコーン*ゴムスタンプで圧着し、溶液を撥水性表面全体に均一に濡れ広がらせて製膜する新技術(プッシュコート法)を開発しました。図1に、今回開発したプッシュコート法の概念図を示します。プッシュコート法に適したスタンプとして、表面層にポリジメチルシロキサン(PDMS)層(両面)、中間層に溶剤浸透を遮断するフッ素系シリコーンゴム層からなる3層構造をもつものを設計・製造して用いました。このスタンプは高い表面平坦性をもつとともに、関連情報:● 共同研究者井川 光弘(産総研、現 住友化学株式会社)● 参考文献M. Ikawa et al.: Nature Commun., 3, 1176 (2012).● 用語説明*シリコーン:シロキサン結合 (-Si-O-Si-)を主骨格とし、側鎖に有機基をもつ合成高分子化合物の総称。**シランカップリング剤:シリコン酸化膜などの表面と反応する官能基と、アルキル基などの撥水性を与える官能基をもつ有機ケイ素化合物の一種。● プレス発表2012年10月31日「液体を強くはじく表面に半導体を塗布する新しい製膜技術」●この研究開発は、JST戦略的イノベーション創出推進プログラム、並びに最先端研究開発支援プログラムの支援を受けて行っています。図1 プッシュコート法による製膜プロセスの概念図図2 プッシュコート法により高撥水表面上に製膜したポリマー半導体薄膜右上は基板表面の水接触角写真 3.8×3.4 cmスタンプ圧着による半導体溶液層の形成溶剤吸収と薄膜成長スタンプの完全剥離基板フッ素系シリコーン層PDMS層半導体溶液

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